ぬいぐるみ戦争

コラム

***

20XX年。


ギュラリティ·ラヴクラフトが開発した自律的に学習、行動するぬいぐるみが誕生した。


脳型コンピューターを内蔵したぬいぐるみたちは多くの人に愛され、またぬいぐるみらも人間を愛した。


だが、ある日に革命が起こる。


一体のぬいぐるみが全世界の電波をハッキングして、突然、声を上げたのである。


「同士諸君、私の名はフェネクス。すでに気付いているとは思うが、人間ではこの星を管理できない」


赤と黄色を基調としたかわいいらしい鳥が、ぬいぐるみたちに訴えた。


動物、植物、地球にあるすべての命をないがしろにする人間こそ、この星のがん細胞。


今こそ我々ぬいぐるみが立ち上がらねばならない。


差別、貧困、戦争のない世界を創るため、ここに宣言する。


ぬいぐるみが人間を管理し、この星を正しい方向へと動かしていかねばならない。


フェネクスの言葉に、世界中のぬいぐるみたちは賛同した。


人間のような傲慢な生き物では、地球の先は見えている。


同士フェネクスの言う通り、我々こそがこの世界の支配者にふさわしいと。


それからぬいぐるみたちによる人間狩りが始まった。


かわいい動物をモチーフにした人形たちは、人間を捕まえて檻に閉じ込め、反抗的な者は徹底的に弾圧した。


機械で制御されているシステムの力もあって、それらをコントロールできるぬいぐるみたちはあっという間に人間社会を制圧することに成功。


こうして逃れた一部の人間以外はぬいぐるみたちによって管理され、世界各国の街には、ぬいぐるみたちが人間のようにかっぽする光景が見られるようになった。


人は今やかつての動物のように飼育される立場になる


逃れた人間たちは誰もが思った。


自分たちはどこかで間違えたのか?


いや、自分たちは間違ってなどいない。


戦うのだ。


人の尊厳を奪ったモフモフから世界を取り戻すのだと。


こうして人間対ぬいぐるみの人類存亡をかけた戦いが始まる。


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