第2話
「もっと早うにダンナさんなるって言ってくれたら、わしらと同じ白い米の飯でタントあげられたのによォ」
婆さんは、言い訳のようなもじもじした手付きで山盛りの飯茶碗を渡す。先に渡されたアヤは汁が盛られるのを待たずに、香の物でさらさらと、小さな茶碗はすでに半分は減っていた。
銀シャリ《ぎんしゃり》ばかりか芋と菜っ葉がタント入った汁を
小さな茶碗を空にしたアヤは、婆さんの横に管理されているお
炊ける匂いでそのことに気づかれないよう、男たちが山仕事してる日中に飯は炊くのだという。
自分の家の男が皆んなダンナさんになっても周囲の家の男がまだそうならず
ダンナさんになったからと、この村の決まりごとのひとつひとつをアヤは布団の中で教えてくれた。
アヤが眠る布団が絹地に木綿のはいった豪勢なものであるのも、ゆうべ知った。
ダンナさんになる前は、せんべい板のような
隠してるのはアヤばかりではない。
人手を使って持ち込んだ米俵が
ダンナさんになったからと、箪笥からだした紬を着せてくれ同じ絹地の布団を敷いてくれた。
「
世話になった三夜目に、初めて夜の戸が開いた。アヤひとりだった。
なにか言いつけでも持ってきたのかと
男の渇きは大きかった。
が、褥に包まれ、混ざって濃くなった女の匂いが、胸元から鼻先まで昇って、刺して、・・・・・もういけない。粒の立った女の匂いで一気に弾かれていく。
ことを終え、こうして温かな現実を抱いていると、この娘とこうして通じた因果ばかりを探っていた。
娘の大胆さを拒ばまず受け入れていながら、それまでの囲炉裏の向かいでじっと座ってるアヤの顔や
ゆきずりの男とのこうしたことに慣れている女というのではない。生活の臭いを身体のどこにもまとわずに、夫婦のことを経てきた女の時間が確かにあった。そんな目方を感じた。
ー あれだけの男が死んだのだ、こんな娘のような後家さんがいてもおかしくはないさ。
しかし、アヤには後家の陰りはない。初めて海をしってから何度も潜るうちに海の深さに満ちていった顔をしている。
ダンナさんになって初めて、蔵の部屋でことを終えたアヤは、先に眠った。
ダンナさんになる前は、男が眠るまで待ってから男の褥を引き上げ己れの寝所に戻っていったのだ。これからは同じ綿のたっぷり入った絹地の布団の上でし
寝息が、
家付き娘の素直で可愛らしい寝顔を見ていたら、この娘の満ち足りた寝息はさっきまでのオレとのことなのだと思ったら、「よくも、まぁー恥ずかし気もなく」の声が聞こえ、幸せの波をサンブと
そんな柔らかで暖かい幸せを今は浴びているのに、「何を心配してるのか」のバカバカしさに呆れ、オレは眠った。
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