拾うべからず
尾手メシ
第1話
道に落ちているぬいぐるみを拾ってはならない。
それがどんなにつぶらな瞳であなたを見上げてきても、やわらかそうな小さい手を伸ばしてきても、けっして拾い上げてはならない。それは道に落ちたのである。真っ逆さまに落とされたのである。
道に落ちているぬいぐるみを撫でてはならない。
それがどんなに手触りが良さそうに見えても、けっして撫で上げてはならない。それは汚れている。
道に落ちているぬいぐるみを暴いてはならない。
それがどんなに甘い匂いで誘っても、けっして中を見てはならない。そこに白い綿はない。そこにやわらかい綿はない。中に残っているものは希望ではない。絶望ですらない。もっと醜悪で、陰惨な
道に落ちているぬいぐるみを覗き込んではならない。
それがどんなに可愛らしくとも、けっして顔を見てはならない。それは全てを
お前は見覚えがあるはずだ。誰の顔をしている?
拾うべからず 尾手メシ @otame
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