第12.5話:関西圏の魔王
ここは関西圏を自身の手に納めた「魔王」と呼ばれるモンスターの根城。彼は大阪城を独自に魔王の魔法によって改築・増築して、そこを自身の城として居着いていた。唯一、元の形を保っている天守閣。そこに堂々と腰かけた魔王に側近のモンスターが声を掛けた。
「魔王様、実は先ほどから都立病院地下の管理者ディグと連絡が取れません」
魔王は自分が彼、ディグに渡した飴玉の効能を知っていたので、当然その後、彼がどうなったかを知っている。しかし、それを顔に出さず、側近のモンスターへ返答する。
「なに? それは一大事だな。して、どうなったのだ?」
「はい。私が確認した情報によりますと、都立病院の地下は地上人に制圧されております」
魔王はその言葉を聞いて、ニヤッと口角を上げた。あの「モンスター狂化飴、通称:グールパウダー」を使用したモンスターを倒せるほどの
口角を上げた魔王の顔は恐ろしい形相で、近くにいた側近モンスターは顔を青ざめさせて報告を終えると早々に天守閣を退出していく。
魔王は一人になった天守閣で考えを巡らせる。どうすれば強者と戦えるのか、魔王は戦いに飢えていた。地上の一部とはいえ制圧しても魔王は何も満足していなかったのだ。
関西圏を制圧してから幾度も東へのモンスターでの進出を行なった。しかし、その結果はあまり芳しくない。というのも、地上人の戦闘部隊、確か自衛隊とか言ったか。あの部隊が中々手強い。だが、魔王自らが出向けば一瞬で事は終わる。しかし、そうすれば地上人は我々と戦う事を諦めて降伏してくるかもしれない。そうなれば、魔王にとっては何も面白味のない殲滅戦となるので、それはしない。
そうだ、と魔王は自身の思いついたことに笑みを浮かべる。
我が魔王城の地下に捕えている地上人の捕虜を使って地上人の猛者をここに集めればいいのではないか。これは名案だ。すぐに側近のモンスターへ連絡を取り、ここ天守閣へ呼びつける。
「はい。どの様なご用件でしょうか? 魔王様」
「うむ、地下の牢に入れていた地上人がいただろう? それを人質に
側近モンスターは魔王の言葉を聞いて、血の気が引いた。もし逆の立場なら、たまったものではない。絶対に勝てないとわかっている勝負に挑む者がどこにいようか。悪逆非道、そんな言葉が側近モンスターの脳裏をよぎる。しかし、ここで否定的な言葉を口にすれば自身の身が危ない。
「はっ! ただちに準備にかかります。して、どのように地上人に伝えましょうか?」
「うむ、準備が終わり次第、我に一声かけよ。我の魔法で日本全域に映像と音声を届けよう」
「かしこまりました。仰せのままに」
「下がってよいぞ」
「はっ!」
側近モンスターが退出して、再びひとりになった魔王はほくそ笑む。なんて冴えたやり方を思いついてしまったのか。
「いつか、この地上すべてを我が魔王の名の元に地底人のものとする」
魔王は誰も居ない天守閣でそう宣言して更に深くほくそ笑んだ。
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