嘘つき姉ちゃん
「だから! 本当なんだって!」
じゃがいもを掲げながら興奮した様子のノアがリュカ、エレナ、カインと話している。
「おねえちゃんもうそつくんだねー」
「そうだ! だってあさ、ぼくめのまえでみてたけどひとつもかわらなかったもん」
そのときは本当にすみません。
「そうなんだけど、その、ハヤトがいきなりぶあぁあ! って光ったと思ったら手がキュイーーーンって輝いて、持ってた石ころがババーーンって変わったんだよ」
はい。ノアさんの語彙力が行方不明です。さっきの起きた出来事を体全体を使って表現している。なんかこんなノアは初めてみるな。かわいい。
「力使えたんだね」
微笑みながらアスカが俺に話しかける
「ああ、ノアが俺のことを信じるといってくれた途端に全身に力がみなぎっていくのを感じたんだ。力を使えるときの状態を体で理解したよ」
エネルギーが体全体に充満している感じ。しかし今は全くエネルギーを感じない。
「ところで、今は力使えるのか。何も感じないんだが」
アスカが俺の方をじっと見てから言う。
「つかえないでしょうね。当然だけどエネルギーには限りがあるわ。ノアがいうにはハヤトすごく光ってたんでしょ」
「おう。神様感がでてたなありゃ」
「輝くのにもエネルギーが消費されるのよね。輝きを抑えたり、消したりして省エネしなきゃ」
「なんだよそれ。俺は電気か? ってことはエネルギータンクの蛇口がずっと全開だったからすぐになくなった感じか」
「そういうことね。ハヤト賢いわね」
せっかくの力を神様の演出で全て消費してしまったらしい。ナンテコッタイ。
「なぁハヤト! さっきのバババって光るやつリュカたちの前でもやってくれ! このままじゃ嘘つき姉ちゃんになってしまう」
ノアが俺の肩を揺さぶりながら頼んできた。ちょっと近いです。
「できるもんならやってみろー」
リュカたちは俺のことを全く信じていないな
全く力が沸かない。
「なぁ、ハヤト、ダメかなぁ」
少し潤んだ瞳のノアが上目遣いでお願いしてくる。
うっ。これは反則だぞ。
どうしよう……今力は使えないし
「ふ、ふっ。奇跡はそう簡単に起きるもんじゃないんだぜ」
「ほらやっぱりあすかおねえちゃんはうそつきだ~」
「そんなぁ~」
********************************
「では、第1回作戦会議を行います」
みんなが寝静まった夜、俺とアスカは外で今後について話すことにした。この力についても詳しく知りたいし。
「聞きたいことがたくさんあるが、まずは2つだけ。力の制御方法と力のたまる方法だ。どうやったら力を制御できることが出来る?俺は何だったら爆発しそうだったぞ」
翼も生えちゃいそうだったし。
「それは簡単ね。根性よ!」
「根性?」
「そう。ぐぐぐって押さえつける感じ。そしてそれを体の奥にしまい込むイメージかしら」
「んんー。よく分からんが慣れていくしかないのかな」
「そうよ。でも私もほとんど経験がないから…その…」
アスカが頬を赤らめる。
「テキトーだったんだな」
「違うもんっ! ちゃんとマリア様から聞いたんだもん。ただそのときなんか話しが長かったから………」
「お前寝てただろ」
「違うもんっ!」
図星と言った表情だ。
「まぁ慣れていくしかなさそうだな。じゃあ次だ。どうやったら力が貯まる」
「信仰ってのはたくさんあるんだけど、やはり最終的には夢や希望といった不確定なものを信じるってことかな」
「その信じる対象がハヤトだったらより強く力が貯まるはずよ」
「なるほど、ノアは直接俺のことを信じてくれたからあんなに力が沸いたのか……」
「いや~、それにしても夕飯のノアの顔見たか。ただふかしただけのいもにあんなに目を輝かせて」
「ははっ。そうね。その後、リュカとエレナが食べたいって言ったのに頑なに渡さなくて喧嘩になっていたわね」
「本当に賑やかな食卓だったな。それに……」
「ええ。みんな幸せそうだったわね」
あの笑顔のためなら俺はなんだってやってやる!
「よしっ! 明日から布教活動だ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます