信じる者

布教活動1日目


「コレズモス教をお願いしまーす!」


「おねがいしまーす」


作戦その1! ビラ配り!


布教といったらまずは認知活動。


絵で分かりすく説明したこのビラは興味を持ってもらえるはず。


この村の人口が30人ほどだから、すぐに終わるな。


(なんだぁこの落書きは?) 


ぽいっ。


布教活動1日目経過報告

     信者数1人(ノアのみ)


布教活動2日目

「今幸せですか?」


……


「そうなんですか、大変ですね」


「そうなのよ、うちの人はいつも野草を取るだけで他の仕事なんて一切しないのよ、この前だって……」


作戦その2! お悩み相談のコーナー! 


…1時間後

「……でね、本当にしょうがないんだから」


長い!


「奥さんそんな不満がコレズモス教に入ればあら不思議! 全て解消されます。どうでしょう?」


「何かすっきりしたわ。またね」


「………」


布教活動2日目経過報告

     信者数1人(ノアのみ)


その後も手を替え品を替え布教活動を行ってみるのだが


布教活動3日目~9日目経過報告

       信者数1人(ノアのみ)


*******************************

「ふっふっふ。これがダメなら……そうだ! 特典をつけよう。入会キャンペーンとして壺を渡すのはどうだろう。あっ、紹介制度を作るのもいいかもな。ポイント制で。紹介者の紹介者が入会しても上にもポイントが入るようにすれば………」


ブツブツ。


「ダメだ。早くなんとかしないと」


アスカが俺を憐れむような目で見ている気がするが気にしていられない。


「ハヤト、何か焦りすぎていないか」


「ノア」


「ハヤトの気持ちはありがたいが、周りのみんなも不審がっているぞ。いきなりコレズモス教とか言われてもよく分からないし。そもそもコレズモス教ってどういう意味なんだ?」


「……満腹教」


「……」


「満腹? ふっ、はははっ」


ノアが腹を抱えて笑っている。


「笑うな! これでもいろいろ考えたんだぞ!」


「でも満腹教って、はぁはぁ、まぁハヤトらしいか」


「早くこの村を救いたいんだ」


「どうしてだ?」


「……ノアの笑顔が見たいから」


はっ!? 思わず本音が


「ち、違うんだノア! その」


やばい


ノアの方を見ると、昨日食べた甘いリンゴのように真っ赤になっていた。


「お前、そういうのは簡単に口にするものではないぞ。それに、あれだ、アスカというものがありながら」


「ん? アスカがなんで出てくるんだ」


「それは……お前たちはつがいなのであろう」


つがい? あぁ夫婦のことか


はっ?


「いや待て、俺とアスカそんなんじゃないぞ」


「え、そうなのか? じゃあ何なのだ」


「んー。なんだ、ともだち? 主人と下僕?」


「だーれが下僕だ」


アスカ渾身のローキックが炸裂する。


「いってーな! 何するんだよアスカ!」


「あんたが適当なこと言うからでしょ!」


ぽかぽかぽかぽか


「そっか……。つがいじゃないのか」


「ノアなんかいったか? アスカがうるさくて聞こえなくて」


「いや、なんでもないぞ」


「ノアは私のこと応援しているのよ。こぶしなんて握っちゃって!」


「あ、ああ、そうだな」



*******************************


チュンチュン


「ハヤト、朝だよ。ご飯も出来ているよ」


甘美な声で目覚ます。


「うわっ!」


ノアの顔が……ち、近い。


「どうしたの?そんな声をだして」


クスリと笑うノア。とてもかわいい。というかこんな口調だったっけ。


それにいつもよりなんかいい香りがするような…


すっかり見とれてしまっている俺に気づき頬を赤らめながら話すノア


「な、何をずっと見ているのだ。ほ、ほら、ご飯だぞ」


そそくさと俺の部屋から出ていくノア。


口調が違うと思ったのは気のせいか……


ノアがぴょこっと顔だけ出してきた。


「今日もよろしくね。ハーヤト」


不意打ちを食らいいろいろな感情がこみ上げてくる!


うおおおおおおおおおおお!


「!」


「リュカ! エレナ! カイン! こっち来てーー!」


ドタドタ


「わあーー!! ヒカッテルーーー!!!!」


布教活動10日目

  信者数4名(ノア・リュカ・エレナ・カイン)

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