ごまかしてる

エリー.ファー

ごまかしてる

 闇の中に落ちていく夢を見た。

 布団から這い出して飲んだ水は温かった。

 私の中には不安な言葉が渦巻いている。呪いに近いのかもしれない。

 私は、私を苦しめる要因と化した。

 いつになったら、私は私をやめることができるのだろう。

 それは、死。

 いや。

 避けたい。

 というか、結構だ。

 そんな、死、などという強い言葉を私の体の中に入れたくはない。

 私は生きているし、死に憧れているわけでもない。

 何もかも平凡だ。

 変わらない人生が続いているだけである。

 吐き出した感情に色がなかったのは、私が制限をかけたためである。どれだけ薄汚れた表現物であったとしても、私には大切なものなのだ。

 失いたくはない。

 かけがえのないものばかりだ。

 足りていない。

 何もかも、捨ててしまいたくなる。

 私は私の体から離れることができない。

 呪いである。

 私は私であるということを私に依存している。

 もう、やめることはできない。

 生まれてからずっと続けて来た。

 本当から遠く。真実からは離れ。現実すら分からなくなってしまった。

 海を見つめているような気分になる。

 私は、私の中にある私の最後の欠片を見つめた。

 捨てることなく。

 飲み込む。

 私の心が穏やかになっていく。




「もしも、ここに遺跡があったとして」

「はい」

「それがいつか忘れ去られるとしたらどう思いますか」

「どうも思わないよ」

「でも、寂しいと思いませんか」

「忘れ去られるべきだよ。すべてのものはね」

「そんな考えはしない方がいいと思います」

「何故」

「だって、あなたもその中に含まれているんですよ」

「含まれているからだよ」




 めぐりめぐる全て。

 君にかかげる言葉の果て。

 風に思いを。

 光の中に。

 君と築いたすべてを乗せて。

 めぐりかける風。

 君と築き上げた羽。

 飛び立つ日々よ。

 変わりゆく時よ。

 



「クイズを出してもいいですか」

「駄目です」

「何故ですか」

「クイズって役に立たないじゃないですか」

「役に立つかどうかはあなたの生き方次第だと思います」




「僕は僕を失わずにいたいのです」

「あなたもですか。実は、私もなんですよ」




「これは、ショートショートですか」

「いえ、ショートショートです」

「どちらですか」

「実は、詩のように見えるだけなんです」

「つまり、どういうことですか」

「結局、詩とショートショートの中間なんですん」

「なんですん、とは何ですか。結局、どちらなのですか。教えて下さい」

「何だと思いますん」

「ますん」

「はい、ますん」

「あの、その。もう、いいです」




「もう普通のお肉じゃ満足できないんです。成形肉を下さい」




「揚げ物を家で作るのは、憲法で禁止にしませんか」




「お魚って、美味しいんですか」

「魚が可哀そうだと思いませんか」

「あっ、始まった始まった。いつものやつか。はいはい」




「今川焼で人を殺すことは可能ですか」

「私は、殺し屋です。今川焼を使って任務を遂行しています」

「嘘ですか」

「はい、嘘です」

「何が、嘘ですか」

「何が、嘘だと思いますか」

「あぁ。マジで埒が明かねぇ」




 ナンセンス、シュール、哲学的。

 多くの言葉によって彩られる物語には、ドラマが足りなくなる傾向があります。

 しかし、浮かび上がる価値があるのです。

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