聖水

 オリビアは鉱夫が掘り当てたという謎の空洞にランタンをかざしました。


 しかし、その明かりはランタン自身の姿を暗闇の中に描き出すだけで、奥に広がる空間を照らすだけの力を持ち合わせてはいませんでした。


 オリビアは明かりをつけたままここで待つよう鉱夫達に伝えると、ランタンを手にしたまま、下に見える石畳のような場所へと飛び降ります。


 ところがその石畳は少し進んだ先ですぐに途切れており、そこから先は足元さえも黒く塗り潰された漆黒の空間となっていました。


 止む無く石畳の縁に沿うように右の方へと進んでいくと、やがて石畳の角へと到着します。


 オリビアは再び前方への進路を奪われてしまいましたが、ランタンをかざしながらよく見ると、少し離れた先に石柱に支えられた屋根のようなものが見えました。


 その時初めて、今立っている場所も何かの建物の屋根部分ではなかろうかとオリビアは予想しました。


 その後、注意深く足元を覗き込むと、そこには幅の広い石段が存在しているようでした。


 オリビアは石段に飛び移ると、とにかく底部を目指そうと思い石段を下っていきました。


 その時、奇妙な声と共に、勢いよく石段を上ってくる数人の人影がオリビアの目に映ります。


 人影の正体はグールでした。


 オリビアは村の司祭からもらった聖水の瓶を取り出すと、間近に迫るグール達に向かって中身を浴びせかけました。


 何かを焼くような音が暗闇に響き渡り、聖水を掛けられたグール達はその場で悶えだしました。

 

 しかし、悶えるグールを押し退けるようにして新たなグール達が次々と石段を駆け上がってきます。


 オリビアは後退しながら再び聖水を浴びせかけますが、グール達に怯む様子は見られません。


 意を決したオリビアは、残り少ない聖水を瓶ごとグールの群れに投げつけました。


 そして手にしたメイスを振り上げると、神の力よりも鉄の力と言わんばかりに迫るグール達を叩き潰しながら、徐々に群れを押し返していきました。

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