シーフツール
「ブラコン、いけそうかい?」
考え込むブラックコンドルにカミラは心配そうな声をかけました。
彼らの前には金属製の大きな箱が置いてあります。
「しかし鍵を無くしたって、アネさんなら開錠の魔法で簡単に開けられるんじゃねぇんですかい?」
「それがさ、この箱の中には“消滅の指輪”って物がしまってあってね、そいつの周囲では魔力がみんなかき消されちまうんだよ」
「そりゃぁ、なんとも……」
「頼むよブラコン、あんただけが頼りなんだからさ」
「――道具を取ってきますんで、ちょっとばかり待っててくだせぇ」
そう言うとブラックコンドルは急ぎ足でカミラの家をあとにしました。
◇
ほどなくして戻ったブラックコンドルの手には、薄汚れた布包みが握られていました。
「なんだい、そりゃ?」
「こいつはあっしの七つ道具でさぁ。まぁ、見てておくんなせぇ」
そう言うなり布包みを広げ中から奇妙な形の棒を数本取り出すと、ブラックコンドルは鍵穴との格闘を開始しました。
「……これか」
ブラックコンドルは一旦指を止めると、今までよりも大胆な動きで鍵穴に攻勢をかけます。
――カチッ
手ごたえを感じたブラックコンドルは黙って箱の前から避けると、右手を箱に向けてカミラを促します。
促されるままにカミラが蓋を押し上げると、箱は苦も無く開きました。
「ありがとうブラコン!今日ほどアンタに感謝した日はないわ!」
そう言うなり、カミラは箱の中から青い宝石の付いた指輪を取り出します。
「ひょっとして、そいつが “消滅の指輪”ってやつで?」
「あぁ、違う違う。これは消滅の指輪じゃないよ。でも、欲しかったのはこの子」
「そいつも魔法の指輪なんで?」
「いや、この子はただの指輪だよ。これから出かけるんだけど、久しぶりにこの子を付けてみたくなってねぇ」
カミラは嬉しそうに指輪をはめると、魅入られたように自分の手を眺め回しました。
「……アネさん、あっしはそのためだけに早朝から呼び出されたんで?」
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