手鏡
曲がり角の先に何者かの気配を感じ取ったブラックコンドルは、歩み寄るカミラを制止すると、懐から取り出した手鏡を曲がり角の先へと伸ばしました。
鏡を頼りに通路の先を観察すると、曲がった先は行き止まりとなっており、突き当りの壁には大きな魔法陣のような模様が刻まれた石の扉が見えました。
扉の左右には青白いかがり火が燃え上がり、その火に挟まれるような形で1体のスケルトンが扉の番人のように立っています。
ブラックコンドルは鏡を戻すとカミラの待つ位置まで後退し、今見た状況を小声で彼女に伝えました。
「恐らく、その扉が目的の玄室に繋がる扉だね……しかし墓守がスケルトン1匹とは、張り合いがないね」
「何言ってるんですかアネさん、ここに着くまでに散々化け物の相手をしてきたじゃないですか……」
ブラックコンドルはうんざりした顔で、この地下墳墓で受けたアンデッド達からの熱烈な歓迎を回想していました。
「まぁ、あんたはそこで休んでな」
そう言うと、カミラは曲がり角の方へ悠然と歩いていきます。
ところが角を曲がるや否や、カミラは顔を引きつらせながら一目散にこちらへと戻ってきました。
「どうしたんですかアネさん?!」
問いかける声に答えもせず、カミラはブラックコンドルの横を脇目もふらず駆け抜けていきます。
訳も分からずカミラの後を追いかけながら、ブラックコンドルは再び訊ねました。
「アネさん!一体どうしたんです?」
「あんた!ヴァンパイアが2匹もいるなんて、私は聞いてないよ!」
「ヴァンパイア?!」
ブラックコンドルが後ろを振り返ると、そこには恐ろしい殺気を放ちながら自分達を追う2つの人影が見えました。
その瞬間、ブラックコンドルは以前聞いた「ヴァンパイアは鏡に映らない」という話を思い出していました。
「捕まったら命を吸われちまうよ!ブラコン、何とかしなっ!」
「無茶なこと言わんでくださいよ!」
2人の命を懸けた鬼ごっこが今、幕を開けました。
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