チェインメイル

 浪人のゲンジとハイエルフのクーリンディアは、連れ立って死霊の森を歩いていました。


「ゲンジさん、そんなの着て重くないんですか?」


 クーリンディアはまるで自分の家の中を歩くように獣道をスイスイと先導していきます。


「それほどでもないのだ。これは遠出用に重さを抑えて編んであるゆえ、打たれ弱さが難点ではあるがな」


 ゲンジは衣類の胸元を開け、下に着込んでいるチェインメイルを誇張した。


「其方こそ、そんな薄手の革鎧だけで心許なくはないか?」


「私は身軽な方が性に合ってますので」


 軽快に前を歩くクーリンディアを見て、ゲンジは微笑みを浮かべました。


 しばらく歩くと、二人は様々な花が生い茂る小川のほとりへと到着しました。


「これは見事な……」


「少し休憩しましょうか?」


  二人が気を緩めた直後、背後から一本の矢がゲンジを襲います。


「ぐっ!」


「ゲンジさん?!」


 矢はチェインメイルに阻まれながらも、ゲンジの肩に浅く食い込みました。


「……不覚!」


 ゲンジは刺さった矢を抜き去ると、振り向きざまにクーリンディアが見たこともない独特な形のシミターを構えます。


「其方は下がっておれ!」


 立て続けに放たれる3本の矢を切り落とすと、ゲンジが静かに言いました。


「いえ!私も戦います!」


 そう言うとクーリンディアは細身の剣を抜き、小さな声で何事かをつぶやき始めます。


 矢が治まると、茂みの中から4匹のオークが武器を手に現れました。


(先程倒したオークの仲間につけられていたか……相手は4匹とはいえこちらは手負い。さらにクーリンディアを守りながらの戦いとなると……)


 オーク達が茂みを抜け、ゲンジ達を取り囲もうと間隔をあけた瞬間、突然周囲のツルや木の根がオーク達の手足に絡まり始めその身動きを封じます。


 驚くゲンジをよそにクーリンディアが叫びました。


「ゲンジさん、今です!」


(妖術か、ありがたい!)


 全てを察したゲンジはクーリンディアと共にオーク達に斬りかかりました。

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