スケイルメイル

 アイザックは満足げな顔で店をあとにしました。その体はいつもの革鎧ではなく、新品のスケイルメイルに包まれていました。


 前に傭兵仲間のプレートメイルを試着したことがありましたが、それは予想以上に重く、動きも制限されてしまうため、これは自分に合わないなと感じていました。


 しかし、この鎧ならば革鎧よりも少し重い程度であり、自由な動きを阻害されない上、ウロコ状に貼られた金属片のお陰で防御能力もかなり期待できそうでした。



 数日後、アイザックは町の近くにできたオークの拠点を攻撃する仕事を請け負います。


 斥候の報告によると、拠点には20体ほどの武装したオークが駐留しているらしく、今は野営地に毛が生えた程度の拠点ですが、木材を集めて砦のようなものを建設している最中とのことでした。


 砦が完成してからでは面倒だというわけで、アイザックを含む10名の傭兵はその日の夜に拠点を強襲することとなりました。



 深夜、目的地に到着した傭兵達は周囲の地形も考慮し、3つのグループに別れて多方向から攻撃を行うことにしました。



 小休憩の後、アイザック達のグループは闇に紛れながら拠点北側へと向かいました。


 見張りに見つからないよう、一同は息を殺して目的地に向かいますが、アイザックの鎧は「カチャカチャ」と金属片同士がぶつかる嫌な音を響かせます。


「おい、その音何とかならねぇのか?気付かれちまうぞ」


「この程度なら気付かれねぇよ」


 後ろの男と小声で話しをしていると、アイザックは突然胸に衝撃を感じました。


 見ると無情にも一本の矢が突き刺さっているではありませんか。


 ところが、矢尻は金属片にこそ食い込んでいましたが、下の革鎧を貫通するまでには至らず、アイザックが負傷することはありませんでした。


「見ろよ、この鎧を着てなきゃやられてたな!」


「アホか!その鎧の音で気付かれたんだろうが!」


 周囲はにわかに騒がしくなり、なしくずし的に強襲作戦が幕を開けました。

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