バンデッドメイル
「ここもハズレか……金鉱の匂いが確かにしたんだけどなぁ……」
落胆する気持ちを全身で表しながら、ドワーフのビヴォールは洞窟の外へと姿を現しました。
この場所に潜って丸一日、ビヴォールは地中深く伸びる洞窟内を自分の勘だけを頼りに歩き回っていましたが、見つけたのはカメレオンのように体の色を変える巨大グモの住処だけで、目当ての鉱脈は見つけることができませんでした。
ビヴォールは腹の中こそ満たしたものの、その心の中は空虚なままです。
(俺の勘も当てにならねぇな)
起伏に富む荒野を失意のまま歩いていると、岩場の影から何者かがビヴォールに襲い掛かりました。
「な、なんだテメェ?!」
ビヴォールは慌ててハンマーを構えると、相手の斬撃を受け流します。
「おいチビ、カネとその荷物は俺が貰ってやる。大人しく死ねよ」
バンデッドメイルに身を包んだ傭兵崩れのような男は、剣を構え直しながら言いました。
「あ?」
ビヴォールは背負い袋を地面に下ろすと、武器を構えることなく相手をにらみつけます。
男は剣を振り上げビヴォールに詰め寄り、そのまま斜切りに斬りつけてきました。
ビヴォールは事も無げに剣を弾きますが、男は即座に構え直し、今度は水平に刃を走らせます。
襲い掛かる剣をハンマーで受け止めると同時に、ビヴォールはハンマーを寝かせながら下へと押し下げました。
剣を引っ張られ、男が僅かにバランスを崩した瞬間、ハンマーの柄が男の喉を突きます。
男が喉を押さえながらよろめいた直後、ビヴォールのハンマーは男の側頭部を打ち抜きました。
「人間風情がナメた口ききやがって」
ビヴォールの言葉が男に届くことはありませんでした。
ビヴォールはハンマーを腰に吊るすと、下ろした背負い袋を再び拾い上げました。
大きなため息がビヴォールの口から漏れます。
去り際に、ビヴォールは倒れている男に再び目を向けました。
「
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