ホーリーシンボル

 アイザックはとある村の雑貨屋で商品を眺めていました。


 中でもアイザックの目を引いたのは地母神ガイアを模したホーリーシンボルの数々です。


「この辺りに住む者はほとんどがアース教の信徒でして、教会側から公認を受けて販売させてもらってます」


 そういえばと、村の北部にアース教の大きな教会があったことをアイザックは思い出しました。


「でもね、この店での一番人気はほら、その手前に置いてある聖女様のメダルですよ」


 そう言うと、店主は上等な木の箱に入れられた小さな金属製のメダルを指さしました。


「ここの住人なら皆これを持ってますし、中には魔除けとして家の扉に貼り付けている者もいるくらいです」


 アイザックは箱からメダルを一枚取り上げると、まじまじとその表面を眺めました。そこには2本のメイスを天高く掲げる修道女の半身があり、その周囲を囲むように多数のオリーブの葉が描かれていました。


「これは教会の非公認品なんですがね、住人達からの強い要望があってウチが販売させてもらってるものなんですわ」


 聖女のメダルに興味を持ったアイザックが詳しい話を聞いてみると、2年ほど前にこの村の収入源とも言える鉱山にコボルトの集団が住み着いてしまい、鉱夫達が団結してコボルト共と戦ったということがあったそうですが、そのとき鉱山に同行して鉱夫達に勝利の祝福を与えたのが、そのメダルに描かれている修道女なのだそうです。


 その後も、採掘中に鉱夫が太古の神殿を掘り当ててしまい、そこに眠る恐ろしい魔物を呼び起こしてしまうという事件もありましたが、そのときも修道女が単身で神殿に赴き、ガイア様の加護を受けながら、たった1人で強大な魔物を鎮めてしまったとの話でした。


 今ではその聖女も修道院を離れて行方知れずとなっているそうですが、大した修道女がいたものだとアイザックは感服します。


 メダルを裏返してみると、そこには「鉱山の守護者・聖女オリビア」と刻まれていました。

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