メイス

 「私も同行させていただきます。苦難に立ち向かう皆様のために、神の祝福をお届けしたいのです」


 年若い修道女オリビアは、礼拝に来ていた鉱夫達に言いました。


 当然、鉱夫達は反対しました。あんな危険な場所へ教会の方を連れていくなどとんでもないというわけです。


 しかし、オリビアの熱心な説得と司祭の口添えもあり、鉱夫達はしぶしぶながらもオリビアの同行を承知しました。



 この村は良質な鉄が採れる鉱山のふもとにあり、その鉱山から得られる利益によって発展してきた歴史があります。


 ところが最近になって坑道内にコボルト達が住み付いてしまい、採掘をする鉱夫達に危害を加え始めました。


 事態を重く見た村の鉱山組合は、組合員の中から手練れの者を何名か選出し、コボルト掃討作戦を計画しました。



 ランタンの明かりを頼りに暗い通路を奥へと進み、一行は目的となる地点まで到着しました。


 しかし、一向にコボルトが向かってくる気配はありません。


 不審に思いながらも、鉱夫達は手分けをして辺りの様子を探り始めました。


 その時、オリビアの近くの坑道から見計らったようにコボルトの一団がなだれ込んできました。


「しまった!嬢ちゃん逃げろ!」


 異変に気付いた鉱夫が叫びますが、時既に遅く、先頭にいたコボルトがオリビア目掛けて剣を振り下ろします。


 オリビアは紙一重で斬撃をかわすと、すかさずメイスを握りコボルトの顔面を打ち抜きました。


 そして、そのコボルトが地面に倒れるまでの間に、オリビアは他の2匹の頭を潰していました。


 呆気にとられる鉱夫を尻目に、オリビアは次々とコボルトに殴りかかります。周囲には無残なコボルトの死体が積み上がっていきました。


 コボルト達を一掃するとオリビアは鉱夫達の方を向き、女神のような笑顔で言いました。


「大丈夫です!私達には神がついています!」


 ついているのが神かどうかは定かではないが、この分ならば鉱山の制圧も夢ではなさそうだと鉱夫達は確信しました。

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