第33話

「兄ちゃん、そろそろ探索に出ようと思うのだけれど何かとって来てほしいものある?」

僕が研究棟に籠って、太郎が取って来た砂や岩に何か菌がついていないかを確認するために菌を増殖させるための寒天培地を作っていると太郎が声をかけてきた。

「うん…とって来てほしいものはいくつかあるけど、とりあえず太郎はしっかりと寝ないとだめでしょう!また、涼子さんに怒られるよ!」

「ええ、だって…せっかく重機を準備できて操作確認も終えたんだから実際に現場で使ってみたくなるじゃんか!」

太郎は笑顔で言ってきた。僕には『兄ちゃんもそうでしょ!』という副音声が聞こえてきたがとりあえず、無視しておこう。

「太郎、あれからまだ1週間しか経っていないのにすでに3回以上寝ずに徹夜してたでしょ!ダメだよ!特に探索は体力を使うのだから、しっかりと睡眠をとって万全な状態でいかないと、危ないんだから!」

「それは兄ちゃんもでしょ!前みたいに1日1食しか食べないという生活はしていないみたいだけれど、寝てはいないでしょう!兄ちゃんはショートスリーパーじゅないのに睡眠時間は長くても4時間程度でしょうが!」

太郎のことを心配して言ってみたが、どうやらばれていたようだ。確かに、僕と太郎は涼子さんに怒られてから健康的な生活を心がけるようにしている。心がけているだけで、できると言えば嘘をつくことになるけど……それでも、毎日3食ちゃんとしたご飯を摂るようにはなった。睡眠はとったりとらなかったりだけれども……。だって、まだ寝るにはずいぶん早いからあと1つ試したらと思って試し出したら、これもあれもと試し始めてしまって、気がついたら朝になっていたということがすでに2回ほどあった。そして、布団に入ったけど夢の中ですら何か実験をしていることが多く、ふとあれをしたら何かわかるかもと思いそのまま目が覚めてしまい、結局研究棟に戻って実験を始めることも10回以上あった。なぜ、日数よりも回数が多いのかというと、実験工程の中で何々をして数時間放置というものが多くあり、その間の時間で昼寝をしていることが多いからだ。だから、1日の睡眠時間は小刻みではあるものの平均で6時間は取っている。

「兄ちゃんは寝てはいるよ!」

「いや、15分寝て作業してを何度繰り返してもダメだからね!それに、寝ている間も何か考えているでしょうが!時々寝言でしゃべっているし、手が動いていることもあるよ!」

「あれ?そうなの?」

「うん。」

流石に手が動いているとは思わなかったので太郎に言い返すと真顔で頷かれた。さすがにそんなことになっているとは思っていなかったので、驚いた。ちなみに太郎がなぜ僕が寝ているときのことを知っているかというと何かと理由をつけて研究棟にいる僕の様子を見に来るからだ。多分その時に寝ていたのだろう。決して、知らない間に研究棟内にカメラが付けられているとかではないと思う…ないよね?太郎は機械系をいじるのが好きで得意だからできないことはないけど、そんなことをしてまで確認しておかないと危険だと判断されてたら嫌だな…。

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