第31話報告

「ごちそうさまでした。」

太郎はやっと満足したような顔で両手を合わせて言った。

「さて、太郎簡単で良いから探索結果の報告してくれる?」

どうやらとてもお腹が空いていたようで一切話すことなくご飯を食べていたので、気になっていたことを食べながらゆっくりと聞くと言ったことはできなかった。

「いいよ。」

太郎はお茶を飲むと喋り始めた。

「まず、僕の今回の僕の移動ルートについて説明するね。」

太郎はそう言いながら手元に紙を引き寄せてペンで書き始めた。

「今回は家を出て南の方向へとまずは向かったよ。距離は約2500kmだね。そこから先はサラサラの砂でできた砂漠だったよ。進むならキャタピラがないと思う。なので、そこから東に行けるだけ行ってみようと思って東へと移動したよ。ただし、砂漠の縁に沿うような形で移動したから移動距離は200kmぐらいだけど直線距離ならもっと短いと思うんだけれど、そこには岩山があったよ。岩山はずっと北の方角に向かってのびていたよ。ちなみに、岩山は移動を始めてしばらくしたら見えてきたからそれなりに大きいよ。登ろうと思えば登れると思うけど、登山というよりロッククライミングに近いものになると思うよ。それから、戻って西に350kmぐらい砂漠の縁に沿うような形で移動したところで食料が尽きそうになったから帰ってきたよ。」

太郎はそう言うとお茶を飲んだ。

「何か質問はある?」

「採取物は?」

僕が聞くと太郎はにこにことしながら立ち上がると

「少し待ってて!」

と言って出ていった。しばらく待ったいると太郎は大きな箱を抱えて戻ってきた。

「砂漠の土とそのすぐ近くの場所の土は休憩の度に採取したよ。このちっちゃいジップロックがそうね。サと書いてあるのが砂漠で、ツと書いてあるのがすぐ近くの場所の土ね。そんで、こっちの石は岩山に杭を打ち込んで採取したものだよ。後、帰りに巨大なアリを轢いちゃって、アリの触角が取れたからこれも持って帰ってきたよ。」

太郎はそう言うと50cm近くあって赤い色をした棒を差し出してきた。

「おお、大丈夫だったの?」

「大丈夫だよ。車に傷1つついていないよ。ただ、アリの体液で地面が溶けていたけど。この触角もたまたま車に引っ掛かっていたから採取しただけで、そうじゃなければ怖くて採取しなかったね。」

太郎は自慢げに言った。しかし、地面が溶けていたって一体どのような物質だったんだろうか?

「太郎、後で念のため地下の医療施設で健康診断を受けるんだよ。」

「ええ…なんで?」

僕は太郎のことを心配して言ったが、案の定嫌そうな顔をされた。

「もしも、地面を溶かした物質に揮発性がある物質で体に害のあるものだったら困るからね。そんなもののせいで太郎に死なれたら僕はとても困るよ。」

太郎の顔を見ながらゆっくりとした口調で説明すると太郎は嫌そうな顔をしながらもうなずいた。

「ところで太郎さん、太郎さんの車はいつからそんなに丈夫になったんですか?」

僕が太郎が頷いてくれたことに満足していると涼子さんが聞いた。

「分からないよ。けど、この前小さな傷がついた時はすぐに直ったし、もしかしたらこの家のスキルは車にも影響をするんじゃないかな?」

太郎が首を傾げながら言った。

「そっか、もしかしたら家のレベルアップはpで交換できるものが増えるだけではないのかもしれないね。」

僕は家のレベルアップはてっきり交換できるものが増えるだけだと思っていたがそれだけでは無い気がしてきた。だって、50㎝近くある触角を持つアリが小さいというのはあり得ないからそれなりに大きいものだろうし、虫は外骨格がしっかりとしているはずだからそれなりの固さはあると思う。そんなのにぶつかっても無傷というのは日本で製造、販売されている一般のトラックではあり得ないだろう。となると、何らかの補正がかかっているとみるべきだろう。しかし、こちらに来てすぐの頃は太郎のトラックは傷がついたのを見たことがあったので、こちらに来たことで補正がかかったというわけでは無いと思う。だけど、今考えても分からないし、それどころじゃないよね。

「まあ、それについては追々確認していこうか。」

「うん。」

「分かりました。」

「さて、太郎。地下に行くよ。」

太郎に声を掛けると変な顔をしながらも

「はーい!」

と返事をして僕と一緒に地下医療施設へと向かった。

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