第30話 太郎の帰宅

「ただいま!」

太郎が玄関扉を勢いよく開けて入ってきたようだ。地下1階の地下1階の医療施設で健康診断をしている僕にも声が聞こえてきた。それにしてもどれだけ大きな声で叫んだんだろうか?医療施設の扉は分厚い扉だし、病人がゆっくりと休めるようにかは定かではないが、非常に防音性が高くて部屋の外でちょっとやそっと大きな音を立てても中には全く音が聞こえてこなかったんだけれどな…。

とりあえず、服を着て太郎を迎えに行くとするか。そう思って服を着て上に上がると、涼子さんが太郎を出迎えていた。

「太郎、おかえり!」

「あ、兄ちゃんただいま!」

太郎が僕を見つけて両手を振って声をかけてきた。

「太郎、ポチとトラをおさえてあげて!さすがに、涼子さんがかわいそうなことになっているから。」

「うん?」

太郎が首をかしげながら涼子さんと一緒に戯れている(襲っている?)ポチとトラを見た。涼子さんは僕が玄関に来たときはまだ2頭に押し倒されそうになりながらもギリギリ転がっていなかったが、今はポチとトラにのられて顔を舐められそうになっていた。何とか両手で顔を守っている状態だ。

「そうだね。ポチ、トラ伏せ!」

太郎がポチとトラに向けて声をかけると太郎の両横でポチとトラは伏せた。

「さて、話すべきことは山ほどあるんだけれど、とりあえず道中で色々と採取できたからそれらを運び込むね。兄ちゃんはご飯の用意をお願い!とてもお腹すいた!予定では今日の昼まであるはずだったんだけれど、途中で配分を間違えて、今日の朝にゼリー飲料を食べてから何も食べていないの。」

太郎は悲しそうな声で言った。現在の時刻は16時過ぎなのでお昼を食べそびれたようだ。それどころか、普段の太郎の食べている量からすれば朝ごはんすら抜きに近いのかな?さすがの僕でもゼリー飲料だけは足りないしね。

「分かった。簡易なものならすぐに用意できるよ。後、昨日の、いや、おとといの夕食のおかずも残っているからとりあえず、それを食べておいたら。明日の朝から荷物を降ろしたらいいじゃん。」

「そうだね。それじゃあ、必要最低限の荷物だけ降ろしてくるね。ごはんよろしく!」

太郎はそういうと玄関から飛び出していった。

「あの、私はシャワー浴びてきます。流石に、これは気持ち悪いので。」

僕がキッチンへ行こうとすると涼子さんが声をかけてきた。

「はい。確かに顔は舐められなかったみたいですけど、頭から足まで全身ポチとトラのよだれや毛まみれですもんね。分かりました。先にご飯の準備をしてきます。」

僕は涼子さんに声をかけてキッチンへと移動した。

さて、太郎が好きな唐揚げの下味はつけ終わっているし、揚げるとしようかな。

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