第28話 暇つぶし(オセロ編)
太郎との連絡を終え、思ったことが1つある。『それはやることがない。』ということである。太郎がいないので料理を作っても大量に余ってしまい3日は料理をしなくても米を炊くだけでご飯にできてしまう。よくよく考えるとこちらに来てから僕は大半の時間を料理と水やりに費やしていた。しかし、料理はしばらくしなくても大丈夫な状態だし、水やりは涼子さんがやってくれたのでもうやる必要がない。結果的に非常に長い暇な時間が出来てしまった。
「どうしようかな?」
とりあえず、ここにいても仕方がないのでリビングに移動することにした。リビングに行けば涼子さんがいるので話し相手に困ることはない。だけど、涼子さんと話すこともない。そもそも会社にいた時も基本的に仕事の話しかしなかったし、それ以外の会話は涼子さんから振ってこられた話題に対して相づちを打ったり、一言、二言返したりというだけでよく考えてみればよくそれで会話が続いていたなと思うレベルである。
リビングに行くと涼子さんが座っていた。涼子さんもすることが無いようで暇そうにしている。
「あ、史郎さん。太郎さんはどうでしたか?」
「元気そうでしたよ。」
「そうですか。よかったですね。」
「はい。」
椅子に座ると涼子さんは話しかけてきたが会話が終わってしまった。さて、どうしようかな。
「史郎さん、どうかしましたか?」
しばらく考え事をしていると僕の顔を覗き込むようにしながら涼子さんに話しかけられた。さっきまで前に座っていたのにいつの間に横に移動してきたのだろうか?
「あ、いえ。やることが無いな…と」
「え、あ、そういえば史郎さんっていつも料理をしていましたね。そうですよね。太郎さんがいなくて余るようになりましたもんね。」
「はい。おかげで3日ほど料理をしなくても冷蔵庫に入れてあるもので何とかなりそうです。」
「なるほど。」
そう言うと涼子さんはしばらく考え込むような仕草をしたが、すぐに何か思い至ったようでトコトコと出て行った。しばらくすると涼子さんはオセロと将棋を持って戻ってきた。
「これしませんか?」
「いいですよ。どちらからしますか?」
「それじゃあ、オセロからで。」
涼子さんはそういうとオセロを準備し始めた。
「それじゃあ、私からでいいですか?」
「はい、どうぞ。」
オセロは久しぶりにするから楽しみだな。大学の時に暇時間を見つけてはオセロと将棋は友達と何度もしたけど、オセロは途中から通り数を数えるようになって最終的に勝てるものと負けるもの、引き分けになるものを書き出し始めたよね。それをしてたらいつの間にか日が暮れた再び日が昇っていたっけ。確か、それをし始めた時ぐらいから太郎は相手してくれなくなったんだよね。なんでも全く勝てないからとか言って。
と考え事をしながら打っていると全部埋まる前に僕の色で盤面が染まってしまった。
「もう一度やりましょう!」
その後、日が変わるまで何度も何度もやったけど僕が全勝してしまった。おかげで暇を持て余さないで済んだけれど涼子さんが少々拗ねてしまったような気がする。
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