第25話 起きられない朝

うん?なんか身体が重い。違う、なんか暖かいものが僕の上に載っている。いや、何か暖かくて柔らかいものを自分の身体の上に載せて両手で抱き抱えているというのが正確なところかな?

夜は暖かいので基本的に僕は布団を被らないで最近は寝ている。というか、掛け布団を干した後、自室に持って上がるのが面倒でそのまま2階の1室に放置していたはずだ。なので僕のベットの上には敷きパットと汗とりマット、枕以外のものはなかったと思う。それじゃあ一体これはなんだろうか?

なんとなく何か察しはついているが確認してもしそうだった場合どうしたらいいのか分からなくなる気がするので退いてくれるのを寝たふりをして待つとしよう。

しかし、いつまで経ってもまったく動く気配はない。別に僕の上にで熟睡していると言うわけではなくどちらかというと起きているようで先ほどから僕の上で動いている。先ほど手は離したので動こうと思えば動けると思うのだけれどどうしたのだろうか?もしかしたら僕の上でパニックになっているのかもしれない。それなら落ち着くまで寝たふりをしておこう。

しばらく経ったと思う。寝たふりをする予定が本当に二度寝をしてしまった。しかし、先ほどと同じように上に載っているようだ。というか、先ほどと離した手を自分で取って自分を抱き締めるように動かそうとしているようでさっきから僕の腕を掴んで持ち上げようとしている。抵抗すれば起きていることがバレそうなので一切力をいれずに放置してみた。すると先ほどまでうつ伏せの状態で僕の上には載っていたのにわざわざ仰向けになって僕の手を自分の上に持っていった。その後、僕の手が簡単に取れないようにと自分の手で押さえこんだ。

僕の上でくるりと回転したり、僕の手を移動させるために動かしてくれたことにより1つ分かったことがある。それは彼女が服はきちんと着ているということだ。これで少なくとも非常に気まずい事態になることだけは避けられたと思う。しかし、僕の上にいる時点で結構気まずいのだけれど。

しばらく経った。最初は僕手を自分の上で組ませていただけだったが少しづつ僕の手を移動させ始め、現在起きると非常に気まずくなる位置に置かれてしまった。さて、真面目にどうしようか?

しばらく考えた結果、寝返りを打ってみることにした。

「キャ!」

仰向けの姿勢から左向きの姿勢になった。その勢いで彼女横に落ちた。そのまま反対側に向こうと思ったが左腕が彼女の身体の下敷きになっており右向きの姿勢になるには関節が曲がってはダメな角度に曲がってしまう。結果僕は再び仰向けの姿勢になった。

「もう!ここまでしても起きないとは。」

そう言いながら彼女は再び僕の上に載って来た。あれ?もしかして載ってくる前に起きた方が良かったのかな?

少々考え事をしていると僕の手は再び先ほどと同じように非常に気まずい位置に戻されてしまった。

どうしよう。そろそろ喉も乾いてきたし、お腹もすいてきたので起きたいのだけれど、いい加減退いてくれないかな?

そうだ。勢いよく起き上がればそのまま彼女が膝の上に座っているだけにならないかな?

「しょうがないな…」

どうすればいいのだろうかと考えていると再び手を移動させ始めた。左手のひらにさっきまで当たっていた布の感触がなくなった。代わりに手の甲と手のひらの両方が肌の感触に変化した。

確か、涼子さんは最近前がボタンの寝巻きをを着ていたよね。もしかして服の中に僕の手を入れた?一体何をするつもりなんだろうか。とりあえず、ますます起きることができなくなった。

しばらくすると

「そっか…こうしているよりもこっちの方がいいのかな?」

と言いながら僕の上でうつ伏せになった。すると僕の手を自分の身体の上に持っていって再び組ませた。先ほどと違って一切布の感触がないんだけどどうしたらいいのだろうか?

よし、やっぱり寝たふり続行だ!

「あれ、これってもし今史郎さんが起きたら不味くない?」

「ん」

あ、思わず返事してしまった。

「起きる?よし一旦離脱!」

そう言った瞬間僕の上から重さが消えた。

バタン!

扉が閉まる音がしたのを確認して起き上がると僕のすぐ横にオレンジ色の女性ものの上着が落ちていた。

これは、見なかったことにしておいた方がいい気がしたので着替えると自分の寝巻きと一緒に洗濯機に放り込んだ。

さて、今日からはしっかりと施錠してから寝るとしよう。

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