第24話 夕食と涼子さん
夕食の時間になると涼子さんは部屋から出てきた。しかし、一切僕と顔を合わせようとしない。僕もまあ、そんなこともあるだろうと思いそのまま気にすることなく準備を始めた。
「あの…史郎さん、太郎さんはどうしたのですか?」
夕食の準備を終えて席に着くと涼子さんが聞いてきた。
「ああ、太郎はポチとトラを連れて周囲の探索に出ていますよ。20日分の食料と水を持って行ったのでしばらくは帰ってこないと思います。連絡してみますか?」
「えっと、携帯は繋がらなかったり繋がったりで使えなかったんじゃないですか?」
涼子さんはきょとんとした顔で聞いてきた。確かに携帯は10回掛ければ2、3回繋がる程度で音も悪くとても電話ができる状態ではなかった。そこでpの交換物で何か役に立つものが無いかな?と探しているとアマチュア無線の機材セットと小屋の増築があったのでその中でも一番いいやつを交換して準備し、家の屋上に増築した小屋に設置した。
そして、太郎の車の助手席を取り外して代わりに小型の受信機兼発信器を取り付けた。日本でやれば違法だがここではそんな法律はないので太郎が使いやすいようにと改造していた。太郎に横見辛くない?と聞くと問題ない。と言われたので細かいことは気にしないことにした。
「色々と考えた結果アマチュア無線を屋上に設置しました。連絡をとろうと思えばとれますよ。」
涼子さんは少し考える素振りをみせたがすぐに
「なるほど。分かりました。ですが、特に用事があるわけではないので大丈夫です。」
と答えた。
「それよりも、しばらくの間、2人きりになりますね。」
「そうですね。太郎には間違っても自分が帰ってくるまで家の敷地の外に出たらダメだと念を押されてしまったのでしばらくは家でおとなしくしておきます。」
「それで…その、」
「どうかしましたか?」
涼子さんは顔を赤らめながら何かを言おうとした。僕は気になったので聞き返すと
「私は史郎さんのことが好きだとこの前もお伝えしましたよね。」
「そういえば、そんなこと言っていましたね。」
確かに涼子さんが来てすぐぐらいの頃にそんなことを言っていた気がする。
「それで、その…」
「ん?」
「やっぱり、後で言います。あ、いや、言わずに行動します。」
涼子さんは何かを覚悟した顔で言いきった。
「危ないことでないなら停めませんよ。どうぞ、自由にしてください。なんやかんや僕と太郎が苦労をかけていると思うので。」
やはり、そこまで関わりがあったわけでもないのにいきなり同じ家に住むというのは何かとストレスが溜まるものだろう。ましてや僕と太郎は結構好き勝手にしている自覚はあるので余計に心労をかけている気がする。
「苦労はかけられていませんよ。はい、大丈夫です。むしろ私の方がかけていると気がします。」
涼子さんは勢いよく首を横に振って全力で否定した。
「涼子さんはまったく苦労をかけていません。なんなら少々暴走気味な僕たち兄弟のストッパーをしてもらって悪いと思っているぐらいです。」
「そうですか。これ以上言ってもお互いに大丈夫の言い合いになりそうなのでこの辺にしておきましょうか。」
「そうですね。」
その後はほとんど話すことなく夕食を食べ終え、お風呂に入り自室に戻って布団に入った。
僕が寝る時間が近づくにつれて涼子さんの緊張度合いが増しているように見えたが気にしないことにした。
さて、明日は何を作ろうかな…と考えながら僕は夢の世界へと旅立っていった。
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