第10話 鈍感
「あの、史郎さん?太郎さんって自由なんですね。」
「ええ。下の子っていうのもあってもともと自由気ままな性格をしてますからね。」
「そうですね。(史郎さんよりも人の感情には敏感な気がするんですけど。)」
涼子さんが呆れた顔をしながら小さな声で何かをつぶやいた。
「何か言いましたか?」
「いえ。大丈夫ですよ。あの、私の史郎さんのことが好きなんです。お付き合いしてもらえないですか?」
涼子さんが真顔で頭を下げてきた。
「え、いきなりどうしたんですか?」
「太郎さんが遠回しに告白しても伝わらないと言っていたので直球で伝えてみました。」
「はぁ、あの、確かに僕は遠回しに告白されても気がつかないことがあったと太郎に言われましたけど、行動を起こされたら気がつきますよ。どこに行きたいんですか?」
「伝わってないです!」
「熱でもあるんですか?顔真っ赤ですよ。」
「言わないで大丈夫です。」
ガチャ
「兄ちゃん、家の周囲を確認してきたけど、塀は玄関の前と駐車場の前にはなかったけどそれ以外の場所には厚みが約30cmぐらいでとても丈夫そうな高さ2mの塀ができてたよ。」
「そうか。」
「涼子さん、大丈夫ですか?全身真っ赤ですよ。ブルブル震えますし、もしかして体調が悪いんですか?早めに休んでくださいね。すぐに病院に行けるわけでもないんですから。」
「いえ、大丈夫です。気にしないでください。」
「涼子さん!」
「はい、史郎さんなんでしょうか?」
おどおどしながらも涼子さんが答えた。
「はい、体温計です。」
「え!」
「気がつかないうちに熱が出てることもあるので念のためどうぞ。今、風邪をひいても薬がすぐ出てこないので。市販の風邪薬がどこかにあったはずなんですけど1年以上前に買ったものなんで使えるかもわからないですし、どこに置いてるかもわからないんです。」
「兄ちゃん、風邪薬とか湿布まで1通りの市販薬は買ってきて兄ちゃんが薬品を置いてる部屋に入れたよ。」
「おお、ありがとう。熱にきく風邪薬をとってきてくれるか?」
「分かった。」
「あの、大丈夫です!!それよりも見張りをできるかの確認をするんじゃないんですか?」
「そうでした。太郎、確認したいから荷物持って上がるの手伝って。」
「分かった。」
「涼子さん、お風呂沸かしてるので沸いたら入ってきてください。」
「あ、はい。分かりました。」
「兄ちゃんどこにあるの?」
「2階か1階のどこかのクロ-ゼットの中」
「はぁ~。分かった。僕は2階を探すから兄ちゃんは1階を探して。」
太郎は呆れた顔をしながらも探しに行った。
「分かった。」
太郎の後姿を見ながら僕は静かに答えた。
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