CHAPTER.18 賢明にそしてゆっくりと
「そうやな、昨日、
◇◇◇
語り手:惣一
この戦いやば、超次元すぎやろ。
「よし、用意しよか」
こちらとしても、魔女たちを喰われてウズルパの能力を増やすわけにはいかない。そう思って僕は、隣で待機するダブルに声をかける。
「あぁ、『複製』はプロンプターで良いんだな?」
「そうやな、一番素で強いし、向こうの動揺も誘えるやろ」
──おっと、もう助けないとやばいな。
「よし、行って!」
僕は、アンドロイドを操るダブルに声をかける。そして、同時に目の前の砂漠を展開してる二人の前に姿を現した。
「シヴィル、エレーヌ、魔法を解いてください」
真っ直ぐ目を見つめてそう言った僕に、二人は一瞬、目を丸くした……が、直ぐにシヴィルはスっと目を細めて警戒を露わにした。
「……誰?」
無表情やけど、明らかに敵意が感じるその目、その威圧感に僕は苦笑いせざるを得ない。しかし、そんなシヴィルをエレーヌは手で制す。
「シヴィル、魔法解こ。もう帰りたいしー、多分その人仲間だよ」
僕はこちらを見る二人に微笑んだ。しばらくの間、シヴィルはエレーヌを見つめてたけど、最後には「……分かった。」と了承してくれた。
「「『
二人が同時に詠唱すると同時に、酷熱の砂漠は見慣れた路地裏へと戻る。
ダブルも上手いことやってるみたいで少しほっとする。土煙が晴れてやっと見えたけど、ちゃんとこっちが見えないように抑え込んでるし、流石に操り人形の扱いは年季の長いダブルの方が上手だった。
「じゃ、プロンプターのこと、ちょっと足止めしといてー」
僕は何処かで操作しているであろうダブルにそう言って、シヴィルの手を引っ張った。って、ええ……。僕が力を入れるままに引っ張られるやん。
「ちょっ、アンタ誰よ!」
マノンだったか……彼女が凄い敵意むき出しに、そう言った。
「誰でも良いやない、ただそうやなぁ。敢えて言うなら、プロンプターの敵ってこと。ほら、行こか」
「はぁ!? そんな説明で納得行くわけっ」
いやでもなぁ、ここで説明すんのはあかんし……と、困っていると隣の二ネット? が手助けしてくれた。
「いや、マノン。ここはこの男に着いて行こう。このまま戦ってもあのアンドロイド、いやプロンプターと言ったか? に殺されるだけだ」
「分かったみたいで良かったわ、じゃこっち来て。はよ!」
そのまま、僕と魔女6人は誉と事前に決めてた集合場所に向かった。
◇◇◇
五分くらいしか走ってないけど、僕は息もままならなかった。
「……はぁっ、はぁ。ごめんなぁ、はぁっ、訳分からんと思うけど……ついて来てぇ、はぁっ……」
僕は後ろをついて走って来る魔女たちに声をかける。普段から運動をせえへん分、こうやって喋るだけで更にキツい。
「……まったく、息も絶え絶えじゃないか。まぁ、アンタからは敵意は一つも感じないから信用してるけどね」
「ていうか、どこに向かう気なの?」
二ネットとマノンは、僕が全力で走ってるというのに余裕の表情で後ろを追いながらそう言った。
って……ええ!?
彼女らの足下を見た僕は驚愕した。
なんせ、ちょっと浮いてスライドするように移動していたのだ。道理で、彼女らの頭が上下しない訳だ。
「それ、ずるない!?」
「……
シヴィルは目を細めて心地良さそうに風を浴びている。
「……遅っ」
「仕方ないんじゃなーい? ただの人間なんだからさ」
後ろの方では、ファイエットとエレーヌが煽る。
そんなこんなで、僕達は集合場所についた。
「って、帰ってきただけじゃないか」
そう、僕達は教会に帰ってきていた。
「あんまりいろんな場所を巻き込む訳にも本意じゃないし。言うならば、灯台もと暗しってことや」
「ふーん、で君は誰なの?」
エレーヌは当然の質問をした。
そこで、僕は今までの話をする。プロ子という未来から来たアンドロイドが、未来で大きな犯罪をした者を捕まえに過去に来ていること。
しかし、どうやらウズルパという奴に操られているようで、魔女を狙ったのも能力が欲しいためということ。プロ子を解放するためにモルフェウスを仲間にしなければならないこと、そしてその為にはエメが必要だということ。それら全てをだ。
「……さっきの奴とグルかよ」
ファイエットは、誉のことを思い出してるのか目線は左上を見ながらそう言った。
「そうやな、誉は今頃エメと交渉してるはず」
「んなんの交渉だい? もうモルフェウスに会いに行く話は了承したよ」
二ネットが不思議そうに聞く。
「あ、そうなんや。でもまだその後にもエメは必要になってくる。プロンプターとウズルパを剥がすのに彼女の協力が必要やからな」
「ふぅーん、ま、私たちには関係の無い話だね。救ってくれたことには感謝しとくよ」
そう言って二ネットはどっか行こうとしたけど、僕は慌ててそれを引き止める。
「いいや、君たちにも協力して欲しいんや」
そう僕が言った途端、マノンは声を上げた。
「はぁ? なんでアンタなんかに、私たちが協力すんのよ!」
「まぁ待て、何か向こうにも勝算があってそう言ってるんだろう。話を聞こうじゃないか」
「そーそ、マノンはいつも急ぎすぎ」
二ネットとエレーヌがマノンを抑え、僕に続きを話すように促した。
「ちょっと遠回りに話すねんけどさ、なんで君たち魔女が狙われたと思う?」
僕の質問に、魔女たちは怪訝な顔をするだけで答えなかった。
「分からん? なら、なんで見つかったと思う? だって、おかしくない? 君たちの正体が魔女なんて、乗っ取って数日のウズルパが知ってるわけないやん。あ、一応補足しとくけど……」
「知ってるよ。ウズルパは乗っ取っていない状態じゃ一日ごとに記憶を失うんだろ? 記憶を保管する場所がなくて」
二ネットは僕の補足を先に答えたが、質問への答えは返さなかった。
「……まぁ、そんな難しい話やないねんけど。要するにや、ウズルパがプロ子が持っている犯罪者のデータベースを閲覧出来るってことやねん」
「ちょっと! 私たちが犯罪者って言いたいわけ!?」
マノンが直ぐに憤慨する。
「現に、信者たちを洗脳してるやん」
僕の指摘に、エレーヌは口を挟んだ。
「それは誤解だよ~、えっとアレは信者さん達が、モルフェウスに襲われないための~、えっーと……」
「……保護措置」
「そーそー、それ。エメも仕方なくやったんだから」
エレーヌはあくまでも温和に誤解だ、と言う。
「うん、知ってた。ナキガオもそう言ってたしな。いやぁ、良かった。どう見ても良い人にしか見えへんかったからさぁ」
実際、僕はホッとしてた。計画通りに話が進んでるからやけども。
「じゃあ、何で、未来で大犯罪を犯したグループとして追われてるんやろうな? 」
「……何が言いたい?」
二ネットは質問形式はやめろと言わんばかりにそう言った。
「考えられる可能性を三つあげよう。一つ、君たちが急に心変わりをした。一つ、まったくの別組織との誤解。一つ、何者かに組織が乗っ取られた」
最後の可能性を聞いて、マノンは呟く。
「『乗っ取り屋』……」
「噂だ」
すぐにファイエットが否定したが、僕は聞き逃さなかった。
「やっぱり。心当たりはあるみたいやな」
「ファイエットが言った通り、噂程度の与太話だよ。それで、結局何で私たちが協力しなきゃいけないんだい?」
「ちょっとした交渉や。その『乗っ取り屋』にしても、さっき上げたどの可能性にしても、何らかの外的要因が関わってると思われる。せやから、プロ子が復活したら僕らが未然に防いだるわ」
「だから手伝えって? 何処に、本当に何かしてくれるっていう保証がある?」
二ネットは慎重にそう聞いた。
「その点は安心して。プロ子は、未来との通信が出来る。もし、プロ子が復活したならその時点で、未来との連絡を取ってもらう。そこで、」
「私たちが犯罪者リストに乗ってなかったら、アンタらがちゃんと働いたってことか」
「そうや、もしそうじゃなかったら。僕らが、プロ子と『上』に全力で交渉するわ。なんなら、なんか契約でも結ぶ? どうせそういう魔法もあるやろ」
ま、『上』に交渉なんて出来ひんと思うし、契約は怖いから辞めて欲しいけど。
「……良いだろう。良いね? みんなも」
二ネットが頷き、みんなにも確認を取る。
「仕方ないわね」
「……チッ」
「めんどくさいけどね~」
「……
みんな個性強いなぁって感じやけど、了承してるみたいで安心した。
「じゃ、今日のところはお開きってことで。また明日呼ぶと思うから宜し……」
僕が締めの挨拶してたら、大きな音を立ててドアが開いた。
「みんな揃ってんじゃ~ん。ボクのこと心配だったんじゃない?」
「いいや、もう大体の事情は聞いたからな。あの男の洗脳もハッタリだったのだろう。原理は分からんが」
エメの軽口に二ネットは真面目に返す。
「な~んだ、もう知ってるんだ。お、君が惣一ぃ?」
突如入ってきた魔女はこちらを向いてそう言った。
「そうやで、もう誉から大体聞いてる?」
「モルフェウスを倒しに行くなら惣一の夢で行け、とだけ~」
「じゃ、作戦立てるか」
そうして僕は、エメと作戦を練ることにした。
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