ぬいプライアンス
てこ/ひかり
ぬいぐるハラスメント
「皆さんへの話とは他でもありません」
もうすぐ授業も終わりかけと言う時だった。担任の先生が授業を中断し、真剣な顔をして僕たちを見回した。
「あなたたちの中で……学校に、ぬいぐるみを持ってきている生徒がいます!」
ざわざわ……と周囲が騒がしくなる。中には顔を赤らめる生徒や、一体誰が……とキョロキョロ辺りを見回してる奴もいた。
「最低……」
「気色悪〜」
女子たちの間からは次々と侮蔑の言葉が上がった。
「何だよ、ぬいぐるみくらい」
今度は男子たちから反論の声が上がる。
「
たちまち男子の歓声と女子の悲鳴が混じり合う。教室は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。
「静かに!」
先生がジロリと生徒たちを睨んだ。
「勘違いしないで。私はあなたたちに、ぬいぐるみを持つな、とは言っていません。そう言うのに興味のある年頃でしょう。だけど、学校に持ってきてまでやることですか!」
「僕らが学校にぬいぐるみを持ってきて、具体的に何をやってるって言うんですか?」
クラスでもお調子者の男子が、囃し立てるように口笛を吹いた。
「たとえば……耳のふわふわを撫で回したり?」
「いやぁぁぁあ!」
「ほっぺたでスリスリしてみたり?」
「やめてぇぇえ!」
「誰にも言えない悩みを、こっそりぬいぐるみに相談してみたり!」
「もうやめて……ぬいハラよ! こんなの、ぬいぐるハラスメント!」
「良い加減にしなさい!」
それから散々、男子たちがぬいプライアンスに反するようなことを捲し立てたので、先生はとうとう机をバン! と叩いた。
「ぬいぐるみの話はこれでお終い! ぬいぐるみはもう金輪際学校に持ってこないこと! 良いわね? さぁ、授業に戻りましょう」
こめかみに青筋を立て、先生が怒鳴る。
「さっさとエロ本を開いて。38ページの嬌声から、みんなで読み上げてちょうだい!」
ぬいプライアンス てこ/ひかり @light317
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