第13話 男性学3

男に現在彼女がいないとわかった途端、めすぶt……ごほん。女子生徒達は我先にと興奮状態でアピールし始めた。思春期の性欲盛んな女子相手に、イケメンで年上で優しくて現在彼女のいない男教師が真面目に授業を展開する事が甚だ無理な話であった。


「前橋さんどうぞ」


「はい!私は前橋です!瞳です!」


男に指名された前橋某は聞いてもいないのにファーストネームを主張する。

男を見つめるその瞳の瞳は、瞳を瞳と呼ぶのを期待する瞳をしていた。


「で、では……瞳さん、どうぞ」


「はい瞳です! 先生のタイプはどんな女性ですか! 」


室内に静寂が訪れる。


「そうですね……明るくて笑顔が絶えない女性が好みですね。容姿で言えばショートカットが好みです」


当然ショートカットの女子が騒ぎ出した。

別にショートカットで全てが決まるわけでもないというのに、それだけで女子達は一喜一憂に包まれた。ロングの女子に至っては既にハサミに手をかける者が発生し、ショートよりも短い女子は絶望の表情で机に伏していた。

 どこぞの一番手のラッキーガールは自分がショートカットだと言うことに気付き、私はショートカット=先生の好みの女性=私も先生のこと満更でもない=ワンチャン付き合えるという不成立方程式を建てていた。『満更でもない』と言うところが彼女が調子に乗っていることを顕著に示していた。どうせ叶わぬ勘違いなのにも関われず、醜いマウントをとってしまっていた。


そしてここで、男は自身の発言の迂闊さに気付いた。男自身は単純に、自分の最近の好み――昨日の夜抱いた女の髪型――を思い出しながらの発言だった。本当に他意は無かった。

しかし、目の前でハサミを持った女子生徒がブツブツ何かを言いながら己の髪に刃を合わせ始めたことで始めて気付いた。


「――あ、で、ですが! ショートカットもいいですがだからといってポニーテールやロングが劣っているとは私は思いません! 」


男の声に女子生徒達の動きが一度停止する。

女性生徒達の視線が集中する中、男はそのまま畳みかけるように持論を展開した。


「私は女性には個人個人の美しさがあると思っています!髪型で一意に決定付けられるものではありません!」


「きっと私がショートカットが好きな理由は、ショートカットの女性が頭の形が綺麗に見え、かつ私が顔が小さい人が好きだからでしょう!」


「し、しかしポニーテールの場合は、女性らしい綺麗な耳に後ろから覗くうなじがとても好きです!」


「そ、それにロングの場合は、女性特有のサラサラした綺麗な髪が作り出すまるで神秘のような滑らかさ。そして時たま邪魔になった髪を耳にかけるその仕草がとてもグッときます!!!!」



「……」



「……」



――もはや男のライフは0だった。

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