第4話 ホームルーム2
教師と思われる男が二年一組の教室に入ってからしばらく。
扉付近にいた女子生徒は『お、お触された………』『良い匂い……』等と顔を赤らめて放心していたり、それ以外の生徒は取っ組み合いをしていた友達と『……これって現実?』『妄想乙』『……だよね』と脳の処理が追いつかずオーバーフローしていたり、もしくは『え?男?』『え?』『え?』『『え?!』』のように ”え” という言葉しか口に出せないでいた。
どう見ても生徒達は状態異常であり、至急それらを回復できるスプレータイプか塗り薬タイプのあの薬が必要な状況だった。……いや、放心≓メロメロと考えると確か効かなかったはずだから…………と、とにかく…… 二年一組は軽く学級崩壊を起こしていた。
そんな中、これまで壇上で無言で佇んでいた男が口を開く。
「よーし、これから始業式もあるしホームルーム始めるから席に着けよー」
その言葉に、教室内が突如静寂に包まれる。
何というイケメンか……!何という美声か……! 女子生徒達は、突如脳内に侵入してきた甘美な信号により、抵抗虚しく思考停止を余儀なくされた。
……だが甘かった。こんなのはまだ序の口だった。
この爽やかそうな風貌の男はそれに飽き足らず、なんと生徒一人一人に近づくとその身体に触れると生徒の乙女心を拐かし、微笑みを浮かべると生徒を虜にした。
男の行動によって、即座に二年一組に静けさが
その後。
他のクラスが男教師に注目して騒がしくなる中、始業式に大人しく取り組む二年一組の生徒達――全員が上の空――を見た教員や理事長が、その姿勢にクラスの評価を上げていたのは無理ないことだろう。同様に、遠くからそれを見た男も内心『やり過ぎだったか』と僅かに反省していた。
始業式の後、二年一組では二度目のホームルームが開始されていた。
生徒達はすっかり元に戻ったのか、薄ら顔を赤らめつつも男を直視できるまでに回復。そして落ち着きと共に自分たちが如何に幸運だったのかを早々に理解すると、男の話を聞きながらその幸せを噛みしめていた。ねっっっとりと。
委員会決めでは、早々に予期できていた事ながら、担任である男と関わる事の多い委員長には全員が立候補した。しかしこのままだと女同士の争いが勃発し冗談抜きで刃傷沙汰に発展することを実体験から危惧した男が、公平にくじ引きで決めることにした。ただ、一人一人順番に引いていく際に、外れを引いた生徒をその他全員で煽りまくるという構図が出来てしまったが……。
最も、お楽しみは長く続くことは無かった。
十分後、二年一組では一人の勝者とその他大勢の敗者が誕生した。
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