第5話 生徒達

ホームルームが終わると、『先生、この後デートしよう!』『連絡先教えてー』『彼女います?』といった二年一組の生徒達の声を適当に流してから、俺――玉城歩は職員室に向かった。


これより学園の第一会議室で会議が行われる。

議題は、本日就任一日目になる男性教師が学校や生徒達にどのような影響を及ぼしたのか。それに関する所感や対策事項などを各学年の担任と理事長を含めた教師達でディスカッションを行う。


俺としては『楽しい』『役得』くらいしか所感というか感想がないわけだが、そこは始業式中や今の放課後の騒がしさを考えると長引くことが容易に想像出来る。

これに関しては俺が悪いんだし他の先生方には苦労をかけるだろう。そういうわけで会議が終わったら皆で飲みに行こうと思う。……正直ムラムラするし。

べ、別に送り狼(メス)を期待しているわけではないけど…………期待していないわけでもない。つまりはその時はその時、文字通り流れに身を任せようと思っている。



「あっ!!玉城先生だ!」

「近くで見ると更にイケメンじゃん!!」

「先生今度遊びに行きませんか!大丈夫です!何もしないので!」


廊下を歩いていると、生きの良い生徒達が声をかけてきた。

元気なのは良いことだ。それにイケメンと褒められるのはたとえお世辞であっても嬉しい。可愛い子なら尚更。

ただ最後の奴。俺は何もしないと言って本当に何もしなかった女を見たことがない。……何もしない奴は何もしないなんて言わない!!



「二年一組羨ましすぎる……」

「あーもう!! 二年一組にいる妹がむかつく!私より胸大きいくせに!」

「一緒の教室で過ごすとかエッチすぎるでしょ。実質セックスじゃん」


声をかけてきた生徒達とコミュニケーションを取った後、再び廊下を歩いていると、先ほどとは別の――遠くからハンカチを噛んで『キーッ』と悔しそうにこちらを見つめる野生の生徒達がいた。

俺は現実にハンカチを噛む文化が存在していたことに驚く。てっきりあれはネットスラングだと思ってた。普通に可愛いのはどうしたものか。


それはそうと、確かに二年一組が羨ましいとは思うけどクラスの担当を決めたのは俺じゃないので……その怒りは是非理事長に向けて欲しい。他意は無い。

スポーツ大会なんかのイベントがあれば二年一組だけ集中砲火を浴びることになるのは確定だろうし。


あと、二番目の子の言う通りなんだけど、この世界ではスレンダーで小動物系の女性らしさが少ない方が男性に好まれやすい。良く女性間でマウントを取り合うときは『巨乳』『デカ尻』が重要になる。覚えておいて欲しい。

そして最後、セックスではない。



沢山の生徒達に絡まれつつも俺は会議室にたどり着く。中に入ると既にそこには俺以外の全員が集まっており、全員『疲れた』と言わなくても伝わるような表情で座っていた。


「遅くなって済みません」


「開始時間に遅れていないですし気にしないでください」


理事長に挨拶をしてから、俺は一つだけ空席の椅子に座る。

それからしばらく、理事長は着席している教師全員に視線を送り『うむ』と一度頷くと、会議開幕の狼煙を上げた。



「それでは、これより職員会議を始めたいと思います」

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