第3話 ホームルーム1

絶叫が校舎を駆け巡る中、邪魔な女子生徒を手で退かしつつ俺は教室前面に設置されたホワイトボード、その下一面にある壇――おそらく教師用の足場――の上に立ち、教室全体を眺める。


そこは、見渡す限りの女、女、女。

誰もが俺を見ると驚愕し、確認のため直ぐさま友人と顔を見合わせると……再び驚愕する。

俺が来てからその一連の動作が既に幾度となく繰り返されていた。


見慣れた光景だ。

俺は壇上からの景色に感傷に浸る。

むしろ故郷に帰ってきたかのような懐かしさでなごむまである。


この現象は俺がこの世界で小学、中学、高校、大学と入学する度に起きていた。約四年ぶりになるが、なかなかどうも……癖になる。女をもてあそんでるかのようだ。


一応建前上、男性は中学までが選択であり高校から義務教育ということになっている。そうしないと一般女性達に男性と出会う機会が訪れないからだ。

現にこの学校でも男子の入学者は毎年いるのだが……いるはずなのだが……誰も来ない。

事実、男は資産のある名家の女性と婚姻を結ぶことが殆どのため、わざわざ苦労して学校に行く人がいない。

義務教育は学校――いや、社会全体での暗黙の了解になってしまっている。


極希に、一部家庭の事情などで真面目に登校する男性――翌日以降消失――はいるが、それに関しては来たら来たでラッキーというか眼福というかボーナスステージというか……そんな認識だ。完全にメタルスライム。


この世界の女性には同情するしかない。

仮に俺がその立場で人生を生きていくことになるとしたら、小学校から大学まで進学しても一度も女子を見る機会も話す機会もなかったとしたら、俺は普通に精神がおかしくなると思うんだよ……。


転生当初、ニュースで女性の性犯罪が多発していると知ったとき、この世界は大丈夫なのか?と思ったがそりゃ性犯罪者が出るはずだ。無理もない。

ただ、そのせいでますます男性は家を出ようとしなくなる訳だが。

そして女性は男性と関わる機会が減少してより精神を病み、最終的に性犯罪を犯す。

……これほどまでの負のループは政府もお手上げだろう。


まあそんなわけだから、それを考慮つつ授業を始めるためにも誰かしら正気に戻ってほしいのだけども……まだ掛かりそう。



今日の予定でもおさらいしようか。



今日は初めに、ホームルームの後、体育館で始業式がある。そこでは理事長などの挨拶の後で各学年の担任とその担当科目などが全校生徒へ通達される。一応今年は俺というイレギュラーが存在するため、生徒達が慣れるまではしばらく騒がしくなるかもしれないが、その点は各クラス担任の先生方にご迷惑をおかけすることだろう。

その代わりといってもなんだが、余裕が出来たら飲み会でも開いてハーレm……ではなく慰労会をしたいと思う。きっと喜んでくれるはずだ。


次には、各クラス教室へ戻りクラスの集合写真や係決めなどを行う。所謂委員長決めとかそういうやつだ。そしてそれが終われば午前中で解散、放課後になる。もちろんそれは生徒達だけで、教師である俺達は理事長を含めた全員で会議があるけど。


会議での議題は、主に俺による生徒達への影響について話合うらしい。何せ誰もが未経験な男性教師、何が起こるかはわからない。不測の事態に備えるために会議を開くことになったわけだ。


授業自体は明日以降スタートすることになるだろう。一応俺は教師なので担当科目がきちんと存在しており、『男性学』を担当する。これは簡単に言えば男性の扱いや思想、どういった行為が好まれるかや、その他身体的特徴などを学ぶ。男の俺が担当すると言うことは……いろんな期待もあると思うので存分に楽しもうと思う。



俺は女性耐性はもちろんのこと女性経験も結構豊富なので教師生活は辛いどころかむしろ前世の事を顧みるとご褒美でしかない。一応校則や法律を確認したけど、男性教師と女子生徒が不純な関係になるのは禁止されてなかったし。社会的に見れば推奨されるまである。流石に全員は無理だけど何人かは……ぐへへ。



「よーし、これから始業式もあるしホームルーム始めるから席に着けよー」



これ以上は本当に時間が無いので、壇上から降りると教室一周、生徒達の肩を軽く叩きながら着席を促す。何か呻き声のような物が聞こえてくるがそんなのは無視。



ここから俺の教師生活パラダイスが始まる。

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