第2話

 一般的な通勤時間でもある、駅チカのコンビニ前。

 トラックがぶつかったのを見て、慌てる人々。

 救急車や警察を呼ぶのをボーっと上空から私は見ていたわ。


 「チッ。見つかったか!」


 そのとき、そんな声が近くで聞こえて思わず横を見たの。


 ・・・・・


 「キャーーーー!!!」


 思わず私は叫んでた。


 だって、私の横に血みどろで、ところどころ体の部位がなくなったり飛び出したりしている、初老の男がいたんだもの。


 「うるせい!」

 男は、私にそう言うと、チッとまた舌打ちして、そのまま斜め上へとスーッと消えてった。


 ・・・


 消えてった?


 うそ。

 まるで幽霊じゃん・・・・

 キャーーーー

 私は思わず叫んだわよ。

 だって、ダメなのよ、私。

 幽霊とかって、耐性ないの。

 病院ってさ、その手の話、事欠かなくて、とにかく塩とかお守りとかで防御してたんだからね。といっても幽霊とかいまだかつて見たことなかったんだけどね。


 てか、初幽霊がスプラッタて、怖すぎる~~


 そんな感じでおののいていたら、なんだかわかんないけど、体がスーって上空へと引っ張られた。




 で・・・・



 土下座、だよね。


 真っ白い空間。金髪のロン毛ストレートヘアの美人さん。

 ギリシャ神話の女神みたいな格好のその人?が、私の前で床にガンガン頭を打ちつつ、ごめんなさいごめんなさい、って言ってるんですけど、私、どうしたらいいですか?


 しばらくその光景を唖然として見てたんだけどね、やがて、満足したのか、謝るのをやめて上目遣いに私を見てきた。

 いやん。女の私でもちょっとドキッてしたわ。


 「あの・・・本当は杉下さんを成仏させる予定だったんです。だけど、ちょっとした手違いで、あなたを巻き込んでしまいました。」

 「杉下さん?」

 「あなたを引きずり込んで殺した幽霊です。」

 「へ?」


 話をじっくり聞くと、どうやらあのスプラッタな幽霊が杉下さん、とかいう奴らしい。杉下さんはあのコンビニ前で車にひかれて死んじゃったんだけど、無念が大きくて成仏できず地縛霊ってのになったんだって。

 でもって、自分と同じ目に遭わせる人間を虎視眈々と狙っているらしい。

 実際もう何人も彼の手で交通事故に遭わせられて、その中の何人かは死んじゃったらしい。

 危険人物(?)として、あの場から剥がしちゃおうってことが天界で決まったらしいのよ。それにはそれなりの段取りがいるってことで、被害者をなくすために、神様的な人たちが順繰りであの場を見張ることになっていたらしい。

 で、目の前の女神(本人談)が、担当の時間だったんだけどね、ちょっとした手違いで、留守しちゃってた合間を縫って、事故が起きた。

 で、死なないはずの私が死んじゃった、だって?

 そのちょっとした手違いっていうのを問いただしたら、なんと寝坊だって言うのよ。そりゃ土下座で平謝りするわぁ。


 地縛霊の力を押さえられていたら死なずにすんだ私の命。

 お詫びにこの後の人生、あなたの望みをできうる限り叶えます、なんて言うのよ。

 これって、チートもらって異世界転生、っていうやつ、だよね?

 うわぁ、どんなチートもらおうかしら。

 やっぱり愛されたいわよねぇ。

 かわいくていっぱい愛されるような人がいい。

 そうね、人肌が恋しい今日この頃、いっぱいハグとかされたらうれしいじゃない?

 あと、ふわふわもけこは欲しいわよねぇ。

 妄想は次から次へと出てくるけど、案外、どんな能力がいいとか、難しいわね。

 お金持ちの家に美人で生まれたいなぁ。


 「お金持ちの家、愛されキャラ。ふわふわもけこ。かわいいに美人、ですね。うんなんとかなりそうです。おまかせください。では湊さん。残りの人生を楽しんで!」


 女神がいい笑顔で手を振ると、私はスーっと引っ張られるような感じがして、意識を失った。

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