第8話 魔王の寝室
玉座の後ろの部屋から強制的に追い出されてから1時間(体感)は経過したと思われるが未だに魔王は戻って来ない。また、魔王の命令によって追い出された近衛兵達も戻って来ない。俺はいったい何をしたというのだろうか?
更に時間が経った。身動きをとることもできず放置されるのはつらい。そろそろ出してほしい。手先の感覚が全くなくなってきているのだが、大丈夫だろうか?
「おい!大丈夫か?誰かおるか!だれでもよいからすぐに来てくれ!!」
目を開けると魔王が顔を覗き込んでいた。
「お、起きたか。大丈夫か?」
と言いながら俺の両肩をつかんで前後に揺らされた。
「あ、やめて!揺らさないで!」
残念なことにその願いは聞き届けられることもなく、再び視界が真っ暗になった。
「・・・、・・・」
女の人が何かを言っている声で目が覚めた。
「起きたか。」
目の前には魔王がいた。
「あれ、さっきまでここに女の人がいませんでしたか?」
「いや、ここには我しか入れぬゆえ、他の者はおらぬぞ。」
魔王はこちらを見ずに言った。
「あの、ここはどこなのでしょうか?」
「ここは我の寝室であるぞ。医務室に運び込む予定じゃったのだが、なぜか医務室に大鍋と肉切り包丁が用意されていたのでな。ここに運びこむことにした。おかげで簡易な手当てしかできておらぬ。どこか痛むところはあるか?」
そういわれて改めて自分の状況を確認すると服は何も変わっていなかったが、手足は自由になっており、ところどころ包帯がまかれていた。
「大丈夫です。ありがとうございます。」
「そうか、良かった。もうしばらくすれば食い物を持ってきてもらえるはずだ。それまで寝ておけ。早々に体を治せ!それから我に付き合え!我はお主と一緒に早く向こうに帰らねばならぬ。そのために我とお主が望まれた願いをかなえるとしよう。」
魔王はそういうとすぐ近くにあった椅子に座って書物を読みだした。
聖女、いえ学生です。しかも、男です。 カエル @azumahikigaeru
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