お話をしよう!
「ねえ、どっちなの?」
「っ……」
耳元で甘く囁かれる。
ビリビリと電気が軽く体を走るかのように、美羽から与えられる温もりと柔らかさが甘美な刺激になっていた。
(俺は……俺は……)
自分の中で自問自答する。
俺が美羽に対して抱くこのドキドキは妹に対してなのか、それとも一人の女に対してなのか……そんなの、答えは一つじゃないのか?
俺は美羽のことを大切な妹だと思っている……でも、義理だからなのか一人の女性として考えているのも確か……美羽をエロいと感じたり、可愛いと思ったり、或いは愛おしい子だと思うのは……これは美羽のことを意識しているからじゃないのか?
「美羽……」
腹に回されている美羽の腕を触る。
今年に着ていくからと水着姿をこの場で披露している彼女……パジャマと違って肌の面積が多いため、二の腕などを触ってもスベスベとした感触が伝わる。
「……なあに? 兄さん♪」
……って、ちょっと待ってくれ。
色々と冷静になって今を考えてみようか――ここは俺の部屋、居るのは俺と美羽の二人だけ……美羽はその豊満な肉体を惜しげもなく見せびらかすように新しい水着を身に付けており、そんな状態で俺の背中から抱き着いている。
(……なんだよこの状況)
嬉し恥ずかしのトンでも展開キタコレえええええええ!! ……はぁ。
確かにドキドキはするし……この心臓の高鳴りと体の熱さはとてつもないが、美羽のことを思えば思うほどもっと酷くなるし、逆に冷静にもなれる……それは美羽のことを大切に考えているからこそのものだった。
「美羽、俺は――」
何を言うべきかはハッキリしていない……それでも落ち着く時間が欲しかった。
そう伝えるために声を掛けたのに、美羽はまるでそれを許さないと言わんばかりにサッと体を離したかと思えば、俺の正面に回った。
「お、おい!?」
そのまま胡坐を搔いていた俺の足の間にストンと腰を下ろし、体全体を押し付け、そして気付いた時には唇に柔らかなモノが触れていた。
「っ!?」
「ぅん……っ!!」
目の前にあるのは彼女の綺麗な顔……今どういう状況なのか、それを理解しても何故か美羽を引き離すことが出来ない。
それどころか、俺は反射的に美羽の背中に腕を回しそうになって……そこで彼女はスッと離れた。
「……ふふっ♡」
「お、おま――」
「あたし、戻るね」
たぷんと胸を揺らして立ち上がった美羽はそのまま扉に向かって歩く。
胸だけに意識が集中していたが、そのお尻も中々に強烈な刺激を視界に与えてくる凶器だった……彼女は部屋を出る直前に振り返る。
「……またね?」
「……おう」
バタンと、音を立てて扉が閉まり美羽は出て行った。
「……え?」
……え?
実際に言葉でも、そして内心でも俺は困惑一色だ。
部屋を出て行った彼女を追うでもなく、ただ俺は自身の唇に指を当てた……カサカサでなくて良かったとか、荒れてなくて良かったとかそんなことを考える前に俺は困惑している。
「……え?」
いやいや……いやいや!!
だってそうだろ誰だってそうなるだろ!? いきなりキスだぞ!? 触れ合うだけのキスではあったけどキス! 俺の人生初めてのキス! しかも美羽と……えええええええええええええっ!?!?
「……え?」
もうえっとしか言えないわ……BOTかのようにそれしか言えない。
でも……落ち着きかけていた心臓の鼓動が凄まじく煩い……キスをした後の顔を離した美羽の笑顔と、部屋を出る際の切なそうなまたね……美羽のことが頭から離れないほどに、ずっと頭に残り続けている。
「キス……キス……俺、どうすれば良いんだ?」
これもまた兄妹のスキンシップ……そっかそうなのかとはならない。
ここまでされて気付けない以上鈍感なつもりはないし……くそっ、もしかしてこれで逃げ場はないと、思う存分意識しろとでも言うつもりか?
「……どうしよマジで」
美羽は……あの子はどんな顔をしているんだろうか。
案外顔が真っ赤だったって笑っているのか……それとも本当に揶揄いの意味しかなかったのか……なんにせよ、向き合う必要がありそうだ。
▼▽
「やっちゃった……やっちゃった……やっちゃったっ!?!?」
部屋に戻ってすぐ、あたしはベッドに飛び込んだ。
今の自分が水着姿ということも忘れ、とにかく体の火照りと恥ずかしさを体の外に逃がしたくて毛布を全身に巻き付ける。
「あ……あっつ~~~~~い!!」
ってそんなの無理に決まってんじゃんか!
こんなことをしたらもっと暑くなるし! そもそももうすぐ夏……ううん、もう夏に入りかけているのに熱中症になっちゃうよあたしの馬鹿!
「……はぁ」
勢いが大事だと思ってキスをしちゃったけど……うぅ、いつも兄さんに対して攻めまくってるのに……お風呂だって一緒に入ったのに……それこそ大事な部分まで見られてもちょっと恥ずかしいだけだったのに、いざこうして実際に行動に移しちゃうとこんなに恥ずかしくなるの!!
「でも……これで良かったんだ。これで……兄さんも逃げられないはず……あたしのことを意識して逃げられないはず!」
そう、これで兄さんは逃げられない。
あたしが今までどんなことを思っていたのか、どんなことを考えていたのか、それを必ず分かってくれるはず……キスまでしたのだから、妹とか兄とかそういう枠から抜け出して考えてくれるはずだ。
「あたしは兄さんの妹だもん……分かるもん」
けれど……ちょっと驚かせたし困惑させたのはごめんなさいとも思ってる。
それでもあたしの中ではこれで良かったと、良く行動したんだと自分のことを褒めたいくらいだ……ねえお願い兄さん、たくさん悩んで……あたしのことをいっぱい考えて!
「……体が熱い……落ち着かないと……取り敢えず……発散しよ」
正直なことを言うと、兄さんとキスが出来たことがあたしの体をとてつもないほどに興奮させていた。
あたしはとにかく心を落ち着かせたかったのと、今までに感じたことのないこの興奮を更に味わいたくて……いつも兄さんを思い浮かべて使っている相棒を取り出す。
「……これ、やばっ」
買ったばかりの水着……洗わないと。
でもこんなのたまらない!
この時のあたしはきっとおかしかった……だからなのか、外から聞こえた声に反射的に返事をしたんだ。
「美羽、ちょっと良いか?」
「え? うん……あっ♡」
……マズった、そう思った時には遅かった。
兄さんが扉を開けてあたしを見て……目を丸くしたかと思えばすぐに顔を赤くし、あたしはその瞬間に体を思いっきり震わせた。
(ま、まあこれも兄さんを意識させると思えば……っ!)
それじゃあ兄さん、お話をしようか!
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