妹が……妹がよ……ぅあああああっ!!

「……あ、帰っていたのか」


 家に帰った男性を待ち構えていたのは無防備に眠る妹の姿だった。

 眠る直前までスマホを見ていたのか、手に持ったままお腹に乗せるように彼女は眠っている。


「すぅ……すぅ……」


 規則正しい寝息が聞こえ、呼吸によって胸が上下する。

 ただでさえ男の情欲を誘うムチッとした肉体を持つ妹の姿に、学校帰りの男性は思わず生唾を飲んだ。


「……くそっ、エロ過ぎだろ!」


 外でも不特定多数の男性から邪な感情をぶつけられる妹である。

 男性は兄として妹にそのような感情を抱くことはなかったが、それでもこうして無防備でありながらも男を誘う気配を垂れ流す妹を見ていると……男性の心にも決して宿ってはならない感情が抱かれてしまう。


「……ちょっとなら……良いかな?」


 そう言って男性は妹に近付いた。

 男性と妹の仲は決して悪いとは言わない……むしろ良い方だと言える。

 軽口を叩き合うだけでに飽き足らず、昔なら一緒にお風呂に入ったりするのも普通で……けれども時が経てば経つほど、当然だがそんな行いもなくなっていく。


「昔はお互いにガキだったのに……凄いな本当に」


 幼い頃から知っているからこそ、妹の成長は凄まじかった。

 男性はゆっくりと妹に近付き、そっと腰を下ろしてジッと彼女の寝顔を見つめる。

 体付きが凶悪なのはもちろんだが、顔立ちも非常に整っていて可愛いし美人とも言われているようだ。

 喋ったら生意気な言葉を吐くその口も、切れ長な睫毛も……その全てが妹の美貌を完成へと近づけるパーツに過ぎない。


「……よしっ」


 ここまで来たらもうやるしかねえと、男性は覚悟を決めた。

 そもそも無防備に寝ているのが悪いんだと、お前が兄でさえも誘惑するほどにエッチなのがダメなんだとそう自分に言い聞かせる。

 体が女性らしい膨らみを持ち始めたその時から、スタイルの良さを見せ付けるようにしてくる妹……そんな彼女にどれだけ困らせられたか、それを晴らすかのように男性は手を伸ばす。


「……おぉ」


 初めて……初めて自らの意志と、自らの手で妹の胸に触れた。

 服越しではあっても驚異の柔らかさ、少し力を込めれば指が柔らかな肉の中に進行していく……。


「ぅん……っ」


 眠っている妹が悩まし気に体を揺らした。

 微妙に顔が赤くなっている気がしないでもないが、男性は既にそんなことすら気にならないほどにその圧倒的な弾力に夢中だった。


「……凄いな」


 しばらく触り続け、男性は我慢が出来なくなったんだろう。

 自らの欲望を解放するため、ベルトを緩め……そして――。


▼▽


「……う~ん。相変わらず良いねぇ」


 せっかくの静かな時間なのだから有効活用せねば、そう言わんばかりに俺は自室で漫画を読み耽っていた。

 読んでいるのは当然俺の性癖を粉々にしてくれた妹もののエロ漫画で、既に7巻まで発売されている大ヒット作だ――既に7巻まで読んでいるものの、心機一転ということで1巻から再び読み始めている。


「なんでこんなにエロいし面白いんだろうなぁ……エロはもちろんあるし、それはもう最高に興奮する。けど兄と妹の恋愛が尊すぎるって言うか……もちろんエロに振ってる部分はあるけど、妹の気持ちがとにかく可愛いんだよなぁ」


 この作品の妹はビッチである――その点に関して受け入れられない人も居るだろうし、そんな妹を愛する兄の方が受け入れられない人も居るだろう。

 だがこの漫画はあくまで純愛であり、どこまで行っても兄と妹の恋愛を描いているだけに過ぎない……それが良い! それが最高なのである!


「にゃあ……」

「お、ココアも見るか?」


 俺の隣で丸まって寝ていたココアが漫画を見つめている。

 今日は振替休日ということで父さんと母さんは向こうに行くための準備で買い物に大忙しで、美羽は小テストがあるとかで勉強を頑張っている。


「にゃ~……にゃ!」

「あぁはいはい」


 ココアが次のページを見せろと言わんばかりに鳴いた。

 もしも猫のココアに人と似た思考回路があったとしたら、きっと俺のこの趣味に良い顔はしないと思う……だってこの子雌だしな。

 それからしばらくココアと一緒に漫画を読んでいたが、ココアはすぐに飽きたのか俺をジッと見てきた。


「ははっ、そうだなぁ。父さんも母さんも居ないし、美羽も勉強中だから構う人間が俺しか居ないもんな」

「にゃ!」


 ということはつまり、ココアがジッと見つめてくるのは遊べということだ。

 漫画を閉じて腕を広げるとココアが胸に飛び込んできた――そのまま頭を撫でたり背中を撫でたり、とにかくココアが好むことをしてあげる。


「にゃ~♪」

「ここか? ここが良いのか?」


 やっぱりこうしてペットと遊ぶ時間ってのは偉大だ……だってどんなことすらどうでも良くなるほどに癒しを与えてくれるし、この子を見つけて良かったと心から思えるんだから。


「ココアと出会ったのは一年前だったか」


 実は俺たち一家とココアは店で会ったわけではない。

 友達と遊んだ帰りのこと、土砂降りの中でダンボールに隠れるこの子を俺が見つけたのだ。

 捨て猫だったのはすぐに分かったが、ペットを飼うという難しさも知っていた。

 だから俺はごめんなと謝るかのように、切なそうに見つめてくるココアを俺は一度見捨ててしまった。


『どうしたんだ?』

『何かあったの?』


 それこそ再婚してまだ少しばかりが経ったくらいの時、ココアを見捨ててしまった罪悪感に耐えている俺を父さんと母さんが気付いてくれ、それで俺はココアのことを話した。

 正直……話して良かったと思う。

 そのおかげで父さんと母さんが飼っても良いと言ってくれて、美羽も是非一緒に飼いたいと言ってくれたから。


「なあココア、この家に来て良かったと思ってるか?」

「にゃっ!」


 言葉なんて通じるわけもない……だというのに、この子は大きな声で鳴いた。

 そんな風に反応されると俺もつい嬉しくなってとにかく構い倒してしまう……いい加減に止めろと爪を立てられたところで俺は我に返り、すまんすまんとココアに謝った。


「小腹が空いたな。良い時間だしお菓子にするか」


 ココアも連れて俺はリビングに降りた……すると、あまりにもタイムリー過ぎる光景が目の前に展開されていた。


「すぅ……すぅ……」


 部屋で勉強していたはずの美羽がソファの上で寝ていた。

 休日なのでスタイルはギャル風に変わっており、いつもはストレートに流している髪もツインテールというあざとさマックスだ。

 スマホを弄っていたのか机に置かれており、彼女の呼吸の応じて胸が上下に動いており……って! これさっきの漫画と全く同じシーンじゃねえかよ!


「……ていうか再現率たけえなおい!」


 もちろん彼女が起きないように小声で喋っている。

 短いスカートのせいで角度的にパンツも見えてるし……眠っている美羽からしたら絶対に狙ってないだろうけど、こんなの俺以外の男子が見たらどうなるか分からんぞ割とマジで。


「……にい……さん……っ」

「っ!?」


 一瞬、美羽に呼ばれた気がしてビビった。

 これがあの漫画の世界ならば、何も言わずに近づいて俺も好き勝手絶対にしていることだろう……だがこれは現実、更に言えばいつ父さんと母さんが帰ってくるかも分からない状況だ――つまり、俺に出来るのは眺めることだけだ。


「……なんて、何してんだ俺ってば」


 軽くため息を吐いた後、ココアのお菓子を用意した。

 勢いよく食べていくココアの様子に癒されながら俺の方もチョコのお菓子をパクパクと口に運んでいく。


「……ふむ」


 しかし……こうして改めて眺めても本当に美羽はエロい。

 最近になって割と本気で思うことがあるのだが、もし漫画である程度の耐性がなかった場合……果たして俺はどんな風に美羽を見ていたんだろうか。

 ドキドキは当然するとして、我慢出来なくなって襲い掛かったり……なんて考えるだけでも恐ろしいことをしていただろうか?


「……いや、ないなそれは。どんな俺でも美羽のことは大切なんだから」


 そう強がるように自分に言い聞かせた。


「にゃ~!!」

「お、おいココア!」


 さて、そうこうしてるとお菓子を食べ終えたココアが美羽に飛び掛かった。

 ココアが飛んだ場所はちょうど美羽の胸元で、ココアからしたらとてつもないほどの弾力に着地したような心地だろう。

 衝撃を受けて美羽も目を覚まし、自分の上に乗っているココアを見て状況を理解したようだ。


「ココアかぁ……あたし、つい兄さんが我慢出来なくなって上に乗ってきたかと思っちゃったよぉ」

「おい。起きたばかりで何言ってんだ」

「兄さんが我慢出来なくって、あたしの胸を使ってその熱く滾ったのを挟み込んで好き勝手してきたものだと思っちゃった♪」

「だから何言ってんだああああああっ!!」


 恥ずかしげもなく言うのをやめなさい!

 ニヤニヤ笑って見つめてくる妹を見ていると……俺が彼女に勝てる日は果たして来るのかと、兄としての威厳を保つことは出来るのかと少し不安だよ。


『だからお前はアホなのだ!』


 付いていたテレビにもツッコミを入れられたしもう終わりだよ。

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