妹があまりにもエッチ

「息子よ」

「なんだい父よ」


 夕飯を済ませた後――母さんが食事の後片付け、美羽が風呂に向かったところで隣でテレビを見ていた父さんが声を掛けてきた。


「にゃぁ?」


 足の間で寝ている飼い猫のココアもどうしたんだと顔を上げた。


「……美羽は本当に」

「うん」

「その……なんだ」


 うちの父さんはかつて柔道をやっていたのもあってガッシリとした体付きなのもあるが、その顔立ちはとても厳つい。

 それこそサングラスを掛けたらマフィアのボスなんじゃねえかってくらいに厳ついのだが、そんな父さんは今しどろもどろの状態で言葉を探しているかのよう。


「美羽がどうしたんだよ」

「……んんっ! 別に心配しているんじゃないぞ。俺はあの子を信頼しているし、そうならないように努力してきたつもりだ」

「うん」

「美羽は……本当に援交とかしてないよな?」

「してないだろ絶対に」


 あ、またこの話題かと俺は笑った。

 元々の美羽は外でも家でも地味というか、とにかくそこまで目立つような恰好はしなかったので、高校生になったのを機にプライベート限定とはいえあそこまで変化をした美羽が不安なんだろう。

 その気持ちは分かる……大いに分かる!

 でもなぁ父さん……このやり取り何回目?


「それは美羽だって否定してただろ? 父さんの気持ちは分かるけど、そこは信頼してやろうぜ」

「分かっている……分かってはいるんだ! だがしかし……俺にとってはもう本当に大事な娘なんだ。あの子の外行きの顔も知っているが、プライベートだと百八十度どころじゃない三百六十度変わる……それにスマホも良く弄ってるし」

「年頃なんだからスマホぐらい触るっしょ」

「……そんな……ものなのかなぁ」

「にゃ~」


 ほら、ココアも心配のしすぎだって呆れたように欠伸してるよ。


「まあ父さん。美羽があんな風に明るくなってから小遣い増えたもんな」

「あぁ。援交するくらいなら金くらいいくらでもあげるさ」

「家庭の中で何か不満を持っていないか、その聞き取り調査も欠かさないもんな」

「家族の不和はダメだ。これは亡くなった母さんとの約束でもある」

「……そうだね」


 少しだけしんみりしてしまったけど、以前に父さんが美羽の小遣いを増やしたのは結構面白かった。

 援交の可能性が少しでもあるならと考え、突然に美羽の小遣いを増やした。

 美羽は当然驚いてどうしたのかと聞いたら父さんが素直にゲロり、美羽は俺や母さんが居る場で何を言ってんのと父さんにドロップキックをかましていた。


『あたしはそんなことしないし! というかこの格好は……うぅ! とにかくそんなことはしてないよ! Twitterに上げてるどうでもいい自撮りくらいだよやってることって言ったら!』


 なんてやり取りが去年の頭にあったことを思い出す。

 でもそうか……あれからもう一年は経つのか感慨深いもんだな。


「ちなみに美羽は増えた分の小遣い、母さんに渡して貯金してんだぜ?」

「そうなのか?」

「あぁ。なあ母さん?」

「えぇ。ちゃんと預かってるわよ」


 な? だから何も心配は要らないんだって。

 ……とは言いつつも、漫画で見た妹ギャルみたいにもしかしたら美羽も援交してんじゃないかって不安になったことは俺もあるので、そこはあまり父さんに強く言えないところだ。


「うん? 何を話してるの?」

「あら、おかえり美羽」


 パジャマ姿の美羽がリビングに戻ってきた。

 三人揃っている俺たちに疎外感でも抱いたのか、彼女はすぐにパタパタと俺の傍に駆け寄り、ギュッと腕を抱いて動かなくなる。

 パジャマに包まれた豊かな胸の感触に意識が持って行かれ、少しばかり下半身に力が入りそうになる。


「……にゃ~」


 顔を上げたココアが妹に欲情するなよと言ってくるかのようで、ココアは尻尾で軽く俺の腿を叩く。


「本当にあなたたちは仲が良いわね。ほらあなた、これを見てまだ言うの?」

「むぅ……」

「ねえ、だからなんの話?」


 一人だけ置いてけぼりの美羽は癒しである。

 その後、母さんがココアを引き取ってくれたので俺はそのまま自分の部屋へ……しかし、何故か美羽まで一緒に付いてきた。


「どうした?」

「もう少し一緒に居ようよぉ」


 手を合わせてそう言われたので、俺としては考える間もなく頷いた。

 部屋に入った瞬間に本棚から漫画を取り出し、床に寝そべるようにして美羽は本を読み始めた。

 ムチッとしたお尻を俺に向けている美羽から視線を逸らしつつ、俺はそういえばとTwitterを開いた。


(おぉやってんねぇ)


 Twitterにおける美羽、それは言ってしまえば三つ目の顔と言えるだろう。

 今の派手な姿の彼女が美羽である……それは友人さえも知らないことだし、SNS上でそこそこに過激な自撮りを投稿しているこの子が美羽であることは誰も思い付かない。


「なあ美羽」

「なに?」

「……いや、なんでもないや」


 彼女が今日投稿した写真――パジャマのボタンを全開にした状態で、その豊かな胸の先端を腕で隠している写真だ。

 もう一つの顔と共にマスクなんかもしてるため、本当にこの美羽はこのTwitter上にしか存在していないかのよう。

 名前も“ミュウ”なので……安直だが別ではある。


「さっきさ」

「うん」

「父さんと話してたのは美羽が援交を本当にやってないよなって話」

「また~?」

「またなんだなこれが」

「心配性だなぁお父さんは。明日にでもしてないから大丈夫だよって言っとこ♪」


 とはいえ、心配してくれているのが嬉しい様子だ。

 その嬉しそうにはにかんだ表情もやっぱり可愛いなと思いつつ、俺は少しトイレに行きたくなったので腰を上げた。


「トイレ行ってくるわ」

「はいは~い」


 出す物をしっかり出した後、部屋に戻ると何故か美羽がにんまりと笑っている。

 これは何か思い付いたなとビクビクしていると、座り込んだ俺の背後に回った美羽がギュッと抱き着いてきた。


「捕獲完了♪」

「……………」


 肩の下から腕を回し、腰回りに足を絡めるようにしているのであまりにも彼女から伝わる感触はダイレクトだ。

 背中に伝わる大きな胸は美羽の力加減によって形を変えており、今は思いっきり抱き着かれているのでふんわりと潰れているはず……一体、彼女の持つこの大きなマシュマロは揉んだらどれだけ柔らかいんだろうと考えてしまうあたり、本当にマズいと思うのでどうにか耐えるしかない。


(くそっ……振り解けば良いのに、平常心を装ってこの感触を楽しもうとするスケベ心には勝てねえぜベイベー……)


 というか妹よ、兄の胸を弄るんじゃない……俺もお前の胸を弄るぞこら。


「ねえ兄さん?」

「うん?」

「Twitterであたしの写真見てたでしょ?」

「……………」


 あ……背後でニヤニヤしている美羽が容易に想像出来る。

 というかスマホを裏返すだけでトイレに行ったし、そりゃ見ようと思えば見れるもんなぁ……まあ別に見られたからと言って怒ることはないし、変なやり取りとかしてることもないので別にどうでも良いんだが。


「どうだったのぉ?」

「……あれ、エロい以外にある?」

「正直だねぇ」


 ちなみに、リプでもかなり色んなコメントが来ていた。

 エロい、凄い、おっぱいデカい、揉みたい、エッチしたい、どこで会えますかなど色んなメッセージがあった。

 基本的にこういうのって本人の承認欲満たす意図が大半だが、美羽は全然違う。


「美羽は反応とかそこまで興味ないんだよな?」

「ないよ? あたしは単に普段学校とか、友達の前で見せない恰好をしているのを面白いって思ってるからねぇ。普段のあたしを知ってれば知ってるほど、このミュウがあたしだと思う人は居ない――だからまあ、これも一つコスプレみたいなもの」

「……ミュウって人間を演じるコスプレか……深いな」

「でしょ? でもね……」

「うん?」

「あたしは……今のあたしの方が好き。でもこのあたしがあたしだって知ってるのはお父さんとお母さんもだけど、兄さんだけで良いよ。兄さんだけが知ってればそれで良いもん」

「……………」


 お前……そんなこと言われたら惚れてまうやろがい。

 シスコンだと自負しているわけではないが、俺はとことんシスコンかもしれん。


「なあ美羽」

「なに?」

「今日は一緒に寝るか」

「っ……いいの!?」

「うん。なんかそんな気分だし」


 偶には妹孝行もせねばなるまいて。

 その日、とんでもなく機嫌の良い美羽と一緒の布団で寝るのだが……すぐに眠った彼女と違い、俺の方は大分寝るまでが長かった。

 だって……ねえ?


▽▼


「なんか寝不足か?」

「うい」


 翌日、学校で寝不足を早速指摘された。

 目の前に立つ親友兼悪友の村上むらかみ利信としのぶだ――心配してくれるのはありがたいが、なんでさっきからこいつはニヤニヤしてるんだ?


「なんかあったの?」

「おうよ! 実は最高の推しを見つけちまってな!」

「推し?」

「この子だ!」


 そう言って利信はスマホの画面を俺に見せた。

 それはTwitter上のとある画像で、それを見て俺は大きく咽た。


「この“ミュウ”って子がめっちゃエロくて可愛いんだよ! かぁ最高!!」

「……………」


 知らんぷりしとこ、教えるつもりは微塵もないけど。




【あとがき】


この調子で毎日投稿していきます!

甘々は書いててもちょいエッチなの最近書いてなかったから…なんとなくですけど書くのが楽しいです凄く。

調子戻ってきた!

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