ぬいぐるみを抱いていないと眠れないと、クラスで一番苦手なやつにバレた

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

なぜオカン、わたしが苦手にしてるクラスメイトの親と再婚したし

「ミサキって、ぬいぐるみ抱いてないと寝れないの?」


 アヤが、わたしに声をかけてきた。

 

「う……なぜバレたし」


 ガッコでは、カッコいいスパダリ系で通しているのに。

 よりによって、クラスで一番の秀才に見破られてしまうとは。

 コイツ、苦手なんだよな。


 どうして、こんなのの父親と再婚しちゃうかなー。オカーン。もーお。

 

 クラスメイトと姉妹とか、ラノベかってのー。


 それも、男女じゃーん。


 なんで、苦手な女子とー。


 もーお。

 

 

「……ミサキ、かわいい」


「へう!?」


「そういうとこ、あるわよね」


「ほっといてっ。どうせ、オモシローとかいって、ニヤついてんだろ?」


「ニヤニヤは、しちゃうかも。普段はボーイッシュな子に、そんな一面があるなんて、かわいくて」


 枕を抱きしめながら、アヤが顔を赤らめる。


 マジか。


「バカにしたきゃ、しろよな」

 

「しないわ。人ってさ、より所ってあるわよね? そういう逸話ってあるんじゃない? そういうの、バカにしちゃいけないと思うの」


「ん。このぬいぐるみさ、出ていった父親が残してくれた、唯一のプレゼントなんだよね」


 クリスマスの日に買ってくれたのだ。もう一〇年以上前のことだが。

 父の顔は覚えていないため、このぬいぐるみを父親代わりにしている。

 

「でもさ、あんたが気にするんなら捨てるよ。今のとーちゃんはあの人だもん」


「ダメ!」


 語気を強くして、アヤは否定した。


「絶対にダメ。あんたがそう思っていたって、ダメ。絆を自分から捨てちゃうなんて、悲しいわよ」


「あ、うん。あんがと」


「父も気にしてないわよ。まあ、洗ったほうがいいかなーとは、思うかもしれないけど」


「そうだね。ちょっと黒ずんできたから洗おっかな?」


「洗うのはいいわ。捨てるなんて、とんでもないわよ」


 洗い方までレクチャーしてくれるらしい。

 

「気にしていないなら、いいよ。ありがと」


 なんだ。コイツめちゃイイやつじゃん。


 

「ところでアヤさぁ、聞いていい?」


「なに?」


 アヤが、自分の枕を身体に寄せる。

 

「あんたさ、アニメキャラの抱きまくらがないと眠れないの?」

 

「ええそうよ」


「イケメンキャラじゃなくて、女子キャラだけど?」


 普通こういうのは、美形男子のイラストが書いていると思ったが。


「まごうことなき、美少女よ」


 アヤが抱いているのは、爆乳の美少女キャラだ。

 いわゆる『うらら系』で、最近売り出し中なのだとか。


「レスポールの何十万もするギターを、熟年バンドマン並にかき鳴らすの」

 

「それも、オフクロさん絡みだから? だから、わたしを肯定しているの?」


「え? これは私の趣味よ?」

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