第234話 12月24日
***
『それで、ミル様はどうしてVtuberになったんですか?』
『えーっと、元々Vtuberには興味を持っていて、小学生でも募集しているところを探したら【ニュー・チルドレン】を見つけた感じです。なので元々ヤマト先輩のことは知っていました』
『そうなんですね』
おぉ!
ニュー・チルドレン調べてみたけど、最近できたところじゃん!
新しい取り組み
ヤマトの目標すでに実現してんじゃね?
現在僕は生誕祭前配信を行っていた。
12月21日から24日まで連日配信で。
その4日間を通して、今回の生誕祭3DLIVEのスペシャルゲスト紹介。
ミル様が最後のゲスト紹介である。
『ではミル様、今日はありがとうございました。明日またお願いします!』
『ご主人様の皆様、ありがとうございました!』
リアルJSありがとう!
明日頑張ってね!
お姉さん見に行くからね!
ニュー・チルドレン見るね!
ミル様が画面から抜け、配信も終盤に差し掛かってきた。
『今少しやば目のコメントがありましたけど、皆様、犯罪者にならないようにお気を付けください』
流石に女子小学生に欲情するのはヤバい。
それは超えてはならない一線。
僕もしっかり注意喚起を促す。
『21日から今日まで、明日の生誕祭スペシャルゲストの皆様に出演してもらいました。ここで、明日のスペシャルゲストを改めて紹介します。ガーデンランドから棘野いばら様、竜田ラノ様、翼竜つばさ様、獅童ライガ様、赤音イロハ様。ごろろっくから音無フータ様、鬼頭キラリ様、ジン様、真夏真冬さま、リューティー・アービス様。ニュー・チルドレンから先ほど出ていただいた奥間ミル様、個人勢の雨猫ハリンさんになります。では皆様、明日をお楽しみにお待ちください!』
楽しみに待ってるよ!
25日なの助かる
明日楽しみにしてます!
最高の誕生日になるよ!
***
配信が終わり、一息つく。
天井を見上げ思い浮かぶのはこの5日間。
この5日間は本当に楽しかった。
初日はお互いに挨拶しながら交流を深めていき、2日目から今日までは和気藹々と楽しくレッスンをすることができた。
今から明日が楽しみでたまらない。
「ヤマト君。お疲れ様」
「フータさん、お疲れ様です。ミルさんは向こうの家に帰りましたか?」
「うん。さっきハリンさんが迎えに来て帰っていったよ」
「ハリンさん宅、まだ電気ついてますかね?」
「どうだろう。ミルちゃんがいるから早い時間に寝ると思うけど……」
「なるほど、それじゃあ着替えてからもう少し待ちましょうか」
いつもなら配信が終わったらこれで終わり、となっているが、今日に限りこれで終わりではない。
明日は僕の誕生日。
つまり今日は12月24日、クリスマスイブだ。
リビングに降りると、僕の家に泊まっている男性陣は既にサンタやトナカイの衣装にコスプレしていた。
僕も急いでサンタの服に着替える。
「い、今更だけど、自分たちが隣の家に突撃してもいいのかな」
「あ、そこに関しては大丈夫です」
僕たちがこれから向かうところは水無月家。
今回の女性陣が止まっている家だ。
そこに今から突撃するんだから、ジンさんが心配になる気持ちはわかる。
だけど、それに関しては既に対策済み。
「協力者1さん情報によると、女性陣は5つの部屋に分かれているらしく、そのうちの4部屋がターゲットです。そして今回の協力者は4人。なので部屋に入るのは僕たちではなく、その協力者に入ってもらいます」
「なるほどね。つまり今回のプレゼントは女性陣にバレないようにこの家に隠して、僕たちはそのプレゼントを向こうの家に運ぶサンタさん、ということだね」
「そうです。その際、バレないように気を付けなければいけないので足音には気を付けてください」
「因みに向こうの家の鍵はどうなってるのかな。流石に鍵を開けた状態で電気を消すってことはないと思うけど」
「それに関しては協力者4さんにカギを預かっているので問題ありません」
すでに準備万端だ。
僕たちはいつでも突入できる。
後は協力者の連絡を待つだけ。
リビングで暖を取りながら待機していると、僕のスマホに突入指示のメッセージが来た。
「では行きましょうか」
「うん、っと、その前に」
フータさんは袋の中からプレゼントを2つとり、自室に戻り数秒で戻ってくる。
どうやらあのプレゼントはイチタ君とニタ君の物だったようだ。
「それじゃあ行こうか」
それぞれ靴を履き、家の外に出て隣の家に移動する。
流石に12月の夜中は昼よりも寒い。
急いで水無月家に移動して、音が鳴らないようにカギを開け突入する。
水無月家は日向市では珍しい3階建ての構想になっており、全員2階の部屋に泊まっているとのこと。
音が鳴らないように階段を昇り2階に着くと、すでに協力者の『1234』が部屋の前で待機していた。
僕は1さんのもとに、リューティーさんが2さん、ジンさんが3さん、フータさんは4さんのもとに移動する。
「それじゃあこの袋の中にプレゼントが入っているのでお願いします」
「……ヤマトン、ドア開いたら覚悟してね」
「え、それはどういう——」
全て聞こうとしたら1さんはドアを開き、中に突入しようとしたが、すぐに躊躇う。
同時に僕は「覚悟してね」という言葉の意味を理解する。
中から聞こえてきたのは、
「ぐおぉぉぉぉぉ、かぁぁぁぁぁ。ぐおぉぉぉぉぉ、かぁぁぁぁぁ」
今にも逃げ出したくなるような大きないびき。
このいびきに驚いているのは僕たち男性陣だけで、協力者234の皆さんはドアを開けることなく、その場でとどまっていた。
僕の袋の中に入っていたプレゼントはいばらさん、ラノさん、つばささんの3名分。
いばらさんとつばささんがこんなに大きないびきをかくとは思えない。
と、言うことは……。
「ヤマトンの考えで会ってる。イバランとツバッサンは多分知ってて同じ部屋になったから。ティラノンは理解してなかったけど」
「なるほどですね」
今回の突入がプレゼント私でよかったと本心から思った。
これが突撃ドッキリだった場合、ラノさんは人知れず羞恥をさらすことになっていた。
……あの人の場合問題無いか。
「それじゃあ、行ってくる」
「はい」
戦場に行くかのような顔つきの協力者1さんを見送り、気づかれないことを祈る。
数分後に戻ってきた1さんは空いた両手で耳を抑えながら親指を上に立てた。
それと同時に他3名は一斉に突入する。
どうやらこの部屋が最大の関門だったようで、他の3名は数十秒で部屋から出てきた。
「ヤマト君、私たちそのまま3階に戻るから、カギ閉めってもらってもいいかな?」
「はい、了解しました」
「それじゃあお休み」
「おやすみなさい」
協力者さんたちはそのまま3階に向かい、僕たちは袋を一塊にして降りようとしたその時、部屋の1つの扉が開く音がした。
『っ!?』
驚いた僕たちは1階に降りるのではなく、2階にあるトイレに逃げ込んだ。
何故トイレに逃げ込んだのか、それは驚いてパニくったというのもあるが、階段よりもトイレの方が近かったからである。
だが、この判断が致命的なミスにつながってしまった。
「あの、すみません。トイレしたいんですけど誰かいるんですか?」
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