第211話 100万人突破記念配信 アンコール編


楽しい時間とは過ぎるのが早いもので、僕の持ち曲にライム様の曲を数曲歌っただけで、16時を回ってしまった。


『……時間が経つのは早いですね。僕の感覚ではほんの数分前に配信を開始したのに、もう皆様とお別れの時間になってしまいました』



え、もう16時!?

時間経つの早っ!

まだ30分あると思ってた……

最高のLIVEでした!!



『10時に開始してから6時間経ちました。ご主人様ともうすぐでお別れになります。……あーっ!! 寂しいっ!! もっとしたい!』


初めて配信で吠える。



ヤマトが吠えた……

俺たちも寂しい!

もっと聞きたい!

次のLIVEも楽しみにしてるぞ!



歌っているときに吠えることはあるが、話しながら吠えるのは初めてかもしれない。

それだけ今日の配信は最高に楽しかった。終わってほしくない。

だが、どんなものにも終わりは来るものだ。


『次の3DLIVE配信がいつになるかはわかりませんが、皆様に楽しんでもらえるような配信にします! では皆様、本日はありがとうございました!』



次も楽しみにしてるぞ!

今日の配信最高でした!

また来るねー

ヤマト様マジゴッド!!



最後の挨拶を終え映像の外に出ると、配信画面はフェードアウトしていく。


***



「ふぅ、来夢、今どんな感じ?」


スタジオの中から外でサポートしてくれた来夢に呼びかける。

既にミュート状態になっているため、僕の声は配信に乗ることはない。


「画面はかなりうす暗くなったよ。コメント欄は満足なものがたくさん」

「オッケー。それじゃあ頼んでいたものお願いしていい?」

「良いけど、休まなくて大丈夫なの?」

「うん。今アドレナリンが出まくってるから、そのままいきたい」

「分かった」


画面は暗いもののなかなか終わらない配信を僕は見つめる。

視聴者は少なくなってきてはいるが、まだかなりの人数が残っていた。


各々コメントを書き込んでいる状態だ。


そんな中ひときわ目立つコメントが流れてくる。



次も絶対に見る!


ライム

アンコール! アンコール!

¥10,000


今週の疲れが一気に吹っ飛びました!

次回が楽しみ!


神無月恋夢

アンコール! アンコール!

¥10,000


なかなか終了しないな……

ライムと恋夢いるじゃん!

え、これアンコールあるパターン!?

アンコール!

アンコール! アンコール!

アンコール



2つの赤スパはものすごく目立ち、まだ残っている人たちは赤スパコメントにつられるように【アンコール】のコメントを書き込んでいく。


流石にスパチャを投げてくるとは思っていなかったけど、かなり効果はあった。


先ほどまでは感想が多かったコメント欄も気づけば【アンコール】一色。


「お兄ちゃん、いけるよ!」

「よし! 本当の最後、楽しんでいこうか!」


本当に最後の3DLIVE配信が今始まる!



***


イントロから大きな音が鳴り響く。

全てを破壊するような、全てを終わらせるかのような、終末の世界を見せるかのような入り。

その曲の名は〈終末世界ラグナロク〉——もうすぐで終わってしまうこの世界で、最後に全力で音楽を奏でる! 少々痛い言葉も言うが、世界がなくなるなら関係ない! という気持ちの入った曲。


イントロが終わり間奏に入り、僕は皆に声をかける。


『みんなー! アンコールありがとー!! ラスト3曲、全力で盛り上がっていこう! 一曲目、【終末世界ラグナロク】ぅぅぅぅぅ!!!』



待ってたよー!

もう少しヤマトの歌を聴ける!

アンコールと聞いて戻ってきたぞー!

ヤ・マ・ト! ヤ・マ・ト!



全身全霊、思いを込めて歌う終末世界(ラグナロク)。

アンコールの入りとしては最高の選曲で、音が落ちることのないこの曲はご主人様たちに最高の高揚感を与えた。


歌い終わると僕自身、ものすごく興奮しているのが熱で分かる。


『ふぅ、皆、アンコールありがとうございまーす! コメント欄が【アンコール】で埋め尽くされるのは見ていて気持ちよかったです!』



コメント欄完全にアンコール状態だった

なかなか配信終了しなかったからな……

最後まで残っててよかったー

最高のサプライズだよ!



『先ほど歌った【終末世界ラグナロク】ですが、来週の土曜日に歌ってみたの動画を投稿します。動画の【終末世界ラグナロク】は飛鷹凛音さまとのデュエットになっていますので、ぜひそちらも見てください!』



マジか!

え、来週も楽しみなんだけど!

どんな感じになってるのか楽しみ!

飛鷹凛音がこれを歌うのか……



これもかなりのサプライズ発表になったようだ。

だが、サプライズ発表はこれだけではない。


『残り2曲、みんなで盛りあがっていきましょう! 次の曲は僕の新オリジナル曲の1つ【夏休み】』


〈夏休み〉——【終末世界ラグナロク】とは真逆で優しくすべてを包み込むかのようなメロディ。とても優しい内容の歌で、サビの部分で弾ける。

色で表すなら黄色やオレンジと言った、柑橘系の果物が多い色だ。


この曲は7月8月を利用してライム様が生み出した僕のオリジナル曲。

夏休みだから心落ち着くひと時や、夏休みだからこその全力で楽しむ一幕を表している。


東京にいるとき、宮崎に帰ってからなるべく早く収録に入ろう、と決めていた曲だが、最高の場所で披露することができてよかった。


『新曲【夏休み】でした。いかがだったでしょう。夏が終わりに近づいたこの時期にピッタリの思い出ソングになっています』



サビの部分最高でした!

弾け飛んだ!

サビ意外のところものすごく心休まって好き!

配信開始はいつになりますか?



『【夏休み】の投稿も来週の土曜日を予定しています。それまで楽しみにお待ちください』



来週に曲投稿キチャー!

来週神だろ! 今週もだけど

楽しみ増えすぎて早く来週が来てほしい!

情報過多すぎ……



かなりのサプライズになったと思うが、まだ足りない。

これだけでは終わらせない。


『ではアンコールラストソングに参ります』



もうラスト!?

やっぱり時間経つの早すぎだろ!

名残惜しいけど覚悟できてます!



『ラストの曲は僕の新オリジナル曲の1つ、【今を超えて行け】』


〈今を超えて行け〉——聞く人すべてに勇気をつける曲。

今という自分を超えて新しい自分になれという意味が込められている。

優しすぎず激しすぎず、ただ聞く人の気持ちをノリノリにさせてくれるようなリズムにテンポ。

落ち込んでいる人に「前を向け」というかのような歌詞。

歌っている僕自身も勇気づけられてしまう。


この曲はライム様が7月8月に創った歌の1つ。

本人曰く、勉強の息抜きで作ったらなかなかいい曲ができて、そのまま歌にしてしまったという、歌詞に込められた意味とは無縁の創作理由。

それでも勇気づけられるのがこの歌の凄いところだ。


ただ、この歌が終わるころには僕のアドレナリンは切れてしまい、疲れが一気にのしかかってきた。


『ふぅ、新曲【今を超えて行け】いかがだったでしょうか。歌っている僕自身、この曲には勇気をもらえました』



ヤバい、なんで今日土曜日なの?

今なら仕事もはかどりそう!

興奮が収まらない!

心臓がずーっとドキドキしてる

この曲の配信はいつなんだ!?



この曲もなかなか好評のようでうれしい。


『【今を超えて行け】の投稿も来週の土曜日を予定しています。なので、来週の土曜日は【終末世界ラグナロク】【夏休み】【今を超えて行け】この3曲に付け加え今日の3DLIVE配信を投稿しますのでお楽しみに~!』



この配信もか!?

3曲だけと思っていたところにまさかのもう一つ!

驚きすぎて本当に興奮が収まらん!

心臓バクバクしすぎてヤバい……!?



最後の報告も終わり、本当にこの配信の終わりが近づいてきた。


『皆様、今日は僕の100万人突破記念配信に来てくださり本当にありがとうございました。今後も、神無月ヤマトの活動に精進していきますので、変わらぬ声援していただけるとありがたいです』



当り前だ!

一生ヤマトを応援するよ!

生涯ヤマトlove!

ヤマト様love!



『ふふっ、では今度こそ本当に僕の100万人突破記念配信を終わります。ではご主人様、行ってらっしゃいませ。またお会いできる日を楽しみにお待ちしております』



行ってきます!

また来るね!

今度は誕生祭楽しみにしてるよ!

今後も頑張ってください!



先ほどと違い、映像にはヤマトのイラストが映され、配信を終了した。



***

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る