第210話 100万人突破記念配信 3DLIVE配信編
歌枠配信も終盤に差し掛かる。
ご主人様のリクエスト曲は有名なアニソンやVtuberの曲が多く、中にはこの後に歌う予定の曲まで入っていた。
その中から6,7個ほど選曲して雑談を交えながら歌わせてもらった。
そして現在、歌枠最後の曲。
チャンネル登録者数は999,587人。
企画で僕が数を操作しているとはいえ、1時間も満たないうちに残り400人ちょいになった。
『それじゃあ次の曲。時間的にこれがラストですね。この曲で100万人突破を目指します!』
おう、頑張れー!
ヤマトの歌枠が終わってしまう!
この後のLIVE楽しみにしてます!
何の曲歌うんですかー?
『ラスト曲、〈メイドの道も一歩から〉』
執事がメイドソング!
執事の歌ないもんな……
神アニメ!
【これが私のメイド
【これが私のメイド道】とは秋に放送されたアニメで、主人公の女の子がメイド喫茶の従業員を夢見るが極度の男性恐怖症でその夢を諦めようとしたその時、間違えて入ってしまった店は何と女性専用のメイド喫茶。
主人公はその店でアルバイトとして働き始め、メイド道を極めるといったアニメ。
ジャンルは日常・百合・お仕事といったもので、秋アニメの中でもかなりの人気を誇った作品だ。
〈メイドの道も一歩から〉——【これが私のメイド道】のオープニング曲で、とても明るく聞く人の気分をノリノリにしてくれるような曲。
ただ、途中で歌詞が暗くなるシーンがあり、そこはメイド道の辛さや苦しさをしっかり表している。
その後に一気に曲が盛り上がるため、沈んだ心は一気に明るくなる。
歌い始め前半が終わり、後半に入ってすぐにチャンネル登録者数は100万人を突破。
『ご主人様~! 100万人突破、ありがとうございまーす! これからも頑張りますので、応援よろしくお願いしまーす!』
おめでとう!
2度目の100万人突破おめでとう!
おめでとうございます!
おめでとー!
歌っている途中ではあるが、しっかりと感謝の言葉を言って歌に戻る。
100万人突破する際にやりたかったことができたので、すでにかなり満足している。
歌も歌い終わり、配信終了の時間が近づいてきた。
『ふぅ、100万人突破待機配信できてよかった…………です。それでは……みな、つぎ……、です、ので……お待ち…………』
お、戻ってくるのか?
ヤマトが戻ってくるぞ!
次はいよいよだ!
ヤマト初の3DLIVEきちゃー!
再び【ザザッ】という音が鳴り、画面は暗くなるように思えた。
しかし目を凝らしてみると、画面に映っている背景はただ黒いだけではなかった。
***
「着替え終わった?」
「もう少し!」
企画が終わり、後のことをすべて来夢に任せた僕は急いでトラッキングスーツに着替える。
このスーツを着て3D配信をするとのこと。
残念ながら僕の頭ではこのあたりを理解するのは難しすぎるため、このあたりの仕事は完全に来夢に頼っている。
「こっちはもう準備できたよ!」
「ありがとう」
スーツを着終え、すぐにスタジオの中央に移動する。
スタジオ内にあるモニターで現在の自分の位置を確認し、配信再開まで歌い始めのポーズをとり待機する。
モニターには現在の配信画面が映っており、背景がどういう風になっているのかがよくわかる。
「それでは、一曲目〈天才〉から再開します!」
ついに僕の3DLIVE配信が始まる。
***
画面が暗い中、〈天才〉のイントロが流れる。
〈天才〉——入りは滑らかな旋律、ただ途中から天才だからこその悩みが溜まっていき、サビの部分で悩みが爆発。入りからは予想もできない荒々しい歌に様変わりする。
最後は心を落ち着かせたかのような滑らかな歌に戻る曲だ。
これは神無月ヤマトの初のオリジナルソロ曲で、今でも人気の曲だ。
ラストのシーンは少し手を開いて右下の方に顔を向ける。
曲が完全に終わってからポーズを解除する。
『皆様、改めまして、100万人突破ありがとうございまーす!』
おめでとう!
〈天才〉最高でした!
ヤマトの動き切れ切れだったな!
すっご!
『1曲目はヤマトオリジナル曲〈天才〉でした。この曲はライム様に作ってもらった曲で、今でも皆様に愛されている曲になります。この歌は…………やっぱり最高ですね!』
この曲の思い出を語ろうと思ったが、この曲はライム様のつくった歌を間違えて僕が歌ってしまい、僕の持ち歌になってしまった、なんて言えるはずもない。
本当にいろいろあった曲だ。
『皆様のコメント、しっかり見えてます。因みに動きが切れきれとありましたが、踊りながら歌うのは今日が初めてです!』
ええっ!
ぶっつけ本番でこのパフォーマンス!?
やっぱり天才や……
才能の塊すぎん?
冗談や大げさに言っているわけではなく、本当に今日これが初めてだ。
全てがぶっつけ本番で今も緊張している。
数日前に配信すると決まっただけに練習する時間を取ることができなかった。
だからと言ってクオリティを下げるつもりはない。
僕の持てる才能を全部使って最高の3DLIVE配信にする。
『では次の曲、〈ライバル家族〉』
ドラマ【ラブ・ファミリー】第2クールの主題歌で、神無月ヤマトのオリジナル曲の1つ。
〈ライバル家族〉——一見仲良し家族に見えるが、その裏ではいろいろな駆け引きが行われている、そんな様子を歌った曲だ。
力のある演奏に力の入った歌。
〈天才〉とは違い最初から最後まで勢いのある曲になっている。
時間は3分と一般的に比べる少し短いが、それでも頭に残る曲になっている。
歌も凄いが、この曲の最大の見せ場はパフォーマンスの方だ。
練習無し、下は普通の床、そんな状況でカメラの方見向けてハンドスプリングをしながら近づき、最終的にはカメラの目の前に来て、ガチ恋距離で投げキッスをする。
ハンドスプリングが終わった後の残りの曲は、少し難しいステップをしながらなんとかのり切る。
綺麗なハンドスプリング……
これ練習無しって本当かよ……
近づいてくるときドキッとしたぁ
投げキッスで心奪われメンバーになりました。
『ふぅ。あー、ハンドスプリング成功してよかったです。下が普通の床だったので失敗したらどうなっていたか……。本当に成功してよかったー』
成功した時の感覚が今でも残っている。
体がついてこれなさそうだったら途中で辞めようかとも思っていたけど、しっかり動いてくれたことに安心した。
『〈ライバル家族〉現在放送中のドラマ【ラブ・ファミリー】の主題歌になっています。2クール連続で放送された【ラブ・ファミリー】もついにクライマックス! 僕の知り合いだと母さまと凛音さまが出演されているドラマですので、ぜひご覧になってください! 見逃し配信もしているので見たことのない人はぜひ1話目から見てください!』
少し息を整えながらしっかりと宣伝をする。
ハンドスプリングを成功させてから緊張がかなりほぐれた。
『では3曲目、行きます! 神無月ヤマト、まいります!』
3曲目のアニメ【恋する魔法少女】のオープニング〈魔法少女、まいります〉が始まった。
〈魔法少女、まいります〉——入りからラストまで同じテンポの明るい曲。この歌を聴くとものすごく心が躍り、この曲が好きな人はほんの少しだけ魔法少女になれる、と言った曲だ。
この曲は歌もそうだが、一番の見どころは演出。
途中で執事服のヤマトをオレンジ色の光が包み、光が消えるとそこにいたのはドレス姿のロリヤマト。
右手には魔法のステッキを持っていた。
この曲でヤマトは正真正銘の魔法少女へと変身し、コメント欄は大いに盛り上がった。
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