第202話 神無月ヤマトの謝罪配信
***
待機中
いったい何の謝罪なんだ!?
この一週間配信してなかったことか?
でもそれならトリッターで報告してたぞ……
何か炎上してしまったとか?
ヤマトの場合、炎上だったらネットニュースに載るだろ
それな!
ネットニュースには炎上のことなんてなかったから違うな
ヤバい、何の謝罪か待ち遠しすぎる!
まだ2時間近くあるのに、ドキドキで心臓が止まりそう!
***
「……2時間前なのにすでに2万人ってどんだけなの?」
「謝罪配信ってタイトルに1週間ぶりの配信だからね。お兄ちゃんのファンの人は待ち遠しいでしょ」
「今日平日なのに……」
「もう18時は回ってるけどね」
僕の配信開始時間は20時から1時間。
配信の内容は完全に固まっている。
準備も万端。
それゆえに焦る必要はないんだけど、ここまで待機している人がいたら話は別だ。
違う意味で緊張してしまう。
「それじゃあ晩御飯食べようか。お兄ちゃんが寝ている間にカツ丼作っといたよ」
「……配信で勝つ! って意味じゃないよね」
「そんなわけないじゃん。たまたまだよ、たまたま」
「たまたまなら仕方ないね」
来夢の作ってくれたかつ丼を口いっぱいに放り込み、しっかり噛んで飲み込む。
配信2時間前にご飯を食べるのは少し遅い気もするけど、空いていたお腹には一瞬で溜まっていく。
これで今日の配信もいつも通りにできそうだ。
配信のチャット欄を見物しながら時間が過ぎ去るのを待つ。
19時50分。
そろそろ配信時間のため、部屋に戻り気持ちを入れ替える。
「マイクよし、アプリも問題無し、コメントが見れるPCも正常。……その他も問題無し」
配信直前機材確認を済ませ、配信ができる環境を整える。
それから10分。
神無月ヤマトの謝罪配信が始まる。
***
お、始まった!
キチャーーーーー!!
ついに来た!
同接7万人!?
あれ、いつもと雰囲気違う?
あ、服が違う!
スーツの立ち絵?
今回のヤマトはまず服装と入りが違った。
服はいつもの服ではなく、スーツの立ち絵をいつものヤマトの前に置くことで、謝罪会見の雰囲気を強調した。
更に画面にはマイクも置かれている。
「本日は僕、神無月ヤマトの謝罪配信にお集まりいただき、ありがとうございます。ご主人様、お帰りなさいませ。あなたの執事、神無月ヤマトです」
ただいまー!
ただいま……って言うべきか?
…………
…………
…………
流石にいつものやつは流れてこないか。
やはり今日のコメント欄の雰囲気も少し違う。
それも仕方ないのかもしれない。
謝罪配信というだけで緊張感を持ってしまう。
「謝罪……、の前に、まずはこちらの動画をご覧ください」
動画?
なんだ?
もしかして、動画で失敗してしまった事に対しての謝罪か?
早く見せろ!
【15】
【14】
【13】
【12】
【11】
動画を流そうとすると、黒い画面に数字が表れカウントダウンが始まってしまう。
普通なら5秒3秒で設定すればいいものを今回は15秒だ。
15秒は長い!
飛ばしたくなる……
長くても10秒でよくない?
カウントが減っていくだけでドキドキしてしまう!
【10】
【9】
【8】
【7】
【6】
【5】
【4】
【3】
【2】
【1】
最後のカウントが消えると、画面は何も見えない真っ黒に。
そして人の声が聞こえ始めた。
『~~~~~~♪』
ん? 歌?
この声、夢見サクラさんじゃない?
え、なんで?
あ、画面が見え始めてきた!
動画に映っているのは夢見サクラ様と、歌枠で歌った曲のセトリにコメント。その上には【999958】という数字。
数字は徐々に増えていき、ほんの数秒で【1000000】を超えた。
それを見たサクラ様は歌の途中であったが、歌うのをやめて話し始めた。
『みんなー!!! 100万人突破しました! ありがとうございまーす! 配信はまだまだ続くからチャンネルはそのままでお願いしますねー!』
サクラ様はお礼を言った後再び歌い始めた。
……ああ、なんとなくわかった。
そう言えばヤマトしてなかったね。
一気に増えたもんな。
え、なになに?
動画はすぐに切り替わり、次に映ったのは江本モエ様。
サクラ様と違い、モエ様は普通に雑談時ながら配信だった。
『おお! みんな、もう解除しなくていいからな! そろそろ終わらせろよ! ……ああ! また減った! みんな、帰ってこーい! お……、おぉ! ……きたぁーー!! 100万人突破ぁぁぁぁぁ! おめでとぉぉぉぉ!』
そのあともリューティー様、シュウ様、キラリ様、ライガ様、めくる様の順番で10分にも満たない動画を流した。
最後のめくる様の番にはほとんどの人が何に対しての謝罪動画なのか理解していた。
動画が終わり、再び真っ白の背景に僕がいる画面に。
「えー、今回僕は、最後にメン限配信をしたとき、チャンネル登録者数が90万人いたにもかかわらず、配信しなければ人も増えないと思い込んでしまい、気づいたときには110万人ものチャンネル登録者がいました。これだけのチャンネル登録者様がいるにもかかわらず、100万に突破待機配信をしないどころか、100万人を超えたことにも気づかず、誠に申し訳ございませんでした」
ガチのトーンでしっかりと謝罪する。
コメント欄を見ると【気にしなくてもいい】や【全然大丈夫】といった励ましの言葉が流れる。
他にも、【反省しろ!】や【これは謝罪案件だねぇ】といった冗談半分、説教半分のコメントも流れてきた。
「えー、今回の配信ですが、この後皆様からの質問コメントを見てNG無しで答えたいと思います」
おおぉ!
マジか!
NG無し!
覚悟しとけよ!
「ご主人様、まだ話は終わっていませんので落ち着いてください」
NG無しの質問回答にご主人様は大いに盛り上がる。
が、まだ話は終わっていないので、いったん落ち着かせる。
「今回の配信は1時間を予定しております。残り50分ですがNG無し質問を40分設け、残りの10分で重大発表をしますので、是非最後まで配信の方を見てください」
当然!
ヤマト様ーーー!
NG無し質問まだか?
重大発表気になる!
堅苦しい雰囲気はこれで終わりにし、少し明るめのBGMを流す。
「では今からコメントで僕に聞きたいことやお願いを書いてください」
よし来た!
よしって、うおぉ!?
コメント早っ!
みんな待機してたな!
コメントはものすごい速さで流れていく。
中には本名や住所についての質問もあったが、NG無しとは言え流石にそれに答えることはできない。
それらの質問に関しては見て見ぬふりをし、早速面白そうな質問を捕まえる。
「最初に、【ヤマト様の3サイズを教えてください】ですね。上から76・57・79です」
一番最初に神無月ヤマトの設定集を見せてもらった時に書いてあった3サイズを思い出しながら答える。
最初は必要ないと思っていたがまさか役に立つとは思わなかった。
この質問が来たときコメント欄は少し盛り上がったが、僕が淡々と答えてしまったせいで一気に盛り上がりは消え去った。
だが、コメントは盛り上がり続けている。
「【ヤマトの声で愛の告白をください!】。愛の告白はかっこいい系がいいですか? 可愛い系ですか?」
かっこいい系!
かっこいい系!
可愛い系!
かっこいい系です!
可愛い系推し!
かっこいいがいい
「かっこいい系が多いのでかっこいい方で行きますね」
BGMの音量を下げ、愛の告白の準備を整える。
【おい、何処見てるんだ? 僕だけを見ろって言ったよね? なに、忘れた? それじゃあ今度は忘れるなよ。『他の奴なんて見るな。僕だけを見ろ』】
やばっ!?
何今の……、危険過ぎでしょ!
ああぁ! 耳と脳が侵食されていくぅ!!
イヤホン外しててよかったぁ
最高過ぎる!
中毒性高すぎだろ!
最後はセルフASMRで占める。
いきなりのASMRにコメントは大盛り上がり。
僕の声は男性の声にも聞こえるし女性の声にも聞こえるらしい。
無駄に声を変えなかったことで性別関係なく楽しめたら嬉しいと思った。
「あ、今の告白で質問とお願いが止まってますね。いいんですか? 今後NG無しなんて可能性は低いですけど、何もないとこのまま終わりますよ」
完全に思考停止しているご主人様を少し煽り現実に引き戻す。
質問やお願いのコメントが再びたくさん流れ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます