100万人突破記念配信

第201話 ピンチを生かした配信企画


久しぶりにチャンネル登録者数を確認するとまさかの100万人を超えていた。

あのイベントの後、一度も配信していなかったのにまさかの伸び。

トリッターでは帰宅の準備と仕事があるため、という理由で配信を休んでいた。


「……どうしよう」

「どうすることもできなくない?」

「まぁ、そうなんだけど……」


現在、僕と来夢は緊急の家族会議を行っていた。

父さんは仕事があるため帰ってしまったため、今は僕と来夢の2人だけ。


今回の家族会議議題は【神無月ヤマト 100万人突破!? どうする?】だ。


「めくるさんにサクラさん、他の100万に突破しているVtuberのチャンネル見に行ったけどみんな100万人耐久してるんだよね……」

「まぁ、Vtuberにとって100万人って大台みたいなものでしょ。むしろ私はお兄ちゃんが100万人突破目前なのにチャンネル登録者数を確認してなかったことに驚いてる」

「うっ、は、配信してなかったらそこまで伸びないと思ったんだけどね。8月後半の方はイベントでしか配信しなかったし……」

「でもイベントには神無月ヤマトとして参加したんでしょ。ならヤマトのこと知らない人がヤマトを知ってチャンネル登録してもおかしくないよね」

「それは、確かに……」

「配信してなかったことを言い訳にしない」

「……はい」


来夢の言う通り、今回は完全に僕の注意不足。

どんな言い訳も通用しない。


「反省は後にして、今はどう対応するか考えようか。お兄ちゃんは何考えてる?」

「うん。僕としては今回のこの状況使えないかなと思ってるんだよね」

「と、言うと?」

「3Dライブをするのは当然として、僕としては今の状況を使えないかなと思うんだ」

「どういうこと?」

「つまり——」


今の現状、父さんに教えてもらった新スタジオの機能を最大限に活かした100万人突破記念の企画を来夢に伝える。


「——という感じで、行こうと思うんだけど……」

「お兄ちゃん1人で出来るの?」

「これに関しては僕一人でも無理だね。特にスタジオの機能は分かったけど使い方はちんぷんかんぷんだから。だからこそ来夢にお願いしたいんだ。今回の企画、手伝ってください。お願いします!」

「……………………はぁ」


来夢は少しの間考えた後、一息吐いてあげてた肩を下ろした。

その表情は何とも言えないようなもの。


「企画を聞いた瞬間こうなることはなんとなく予想着いたからね。……夏休みの宿題はほとんど終わってるしいいよ。手伝ってあげる」

「来夢!」

「ただし! 今後はこまめにチャンネル登録者数を確認すること! Vtuberさんは10万人突破するごとに記念配信する人がほとんどって聞いたからね。次からは忘れないように!」

「はい!」

「それじゃあ、早速打ち合わせに入ろうか」


帰宅そうそう荷物をまとめることなく打ち合わせに入る。


どことなく楽しそうにしている来夢を見ると、彼女自身新しいスタジオを使えることにワクワクしている感じだ。

僕もこうして来夢と一から何かを作るのはほぼ初めてなのでものすごくワクワクしている。


「で、お兄ちゃんの次の配信はいつなの?」

「次は今週の木曜日の予定かな」

「ということは2日。お兄ちゃんが今連絡取れそうな人で、いち早く答えてくれそうな人は?」

「条件にあっている人はラノさん、キラリさん、めくるさん、ドラゴンさん、サクラさん、ミランさん、リューティーさん、レベッカさん、パポピさん、トープさん、モエさん、ライガさん、シュウさんかな」

「その中で返信が早そうなのは?」

「確実なのはキラリさん、サクラさん、リューティーさん、モエさん、ライガさん、シュウさんだね」


サクラさんを覗いた5名に関しては、僕がメッセージを送ったらその日のうちに読んで返信をくれそうな気がする。

サクラさんに関しては早い方だと思う。


「レベッカ姉さんに関しては私の方が早いと思う。あとめくるさんはライムでつながってるからそっちで聞いてみるね。まぁ5人いれば十分かもしれないけど」

「いや、多いに越したことはないよ」

「それもそうだね。それじゃあ配信を切り抜いて使えるかの了承を得るために早くメッセージで送ろうか」


来夢に言われた通り、僕は返信が早そうな6名に対して配信を切り抜き使用する許可かをメッセージで送る。


予想通り、6名とも既読がつき返信するのが早かった。

キラリさんとリューティーさんは事務所の方に許可の確認をして改めてメッセージするとのこと。


サクラさん、モエさん、ライガさん、シュウさんに関してはオッケー。

これで少なくとも4人の許可が取れた。


「ガーデンランド組はオッケー、ごろろっく組は事務所の許可を取ってからだって」

「私の方も今返信が来た。めくるさんは……ものすごく長い文で来てる。簡潔に話すと話を詳しく知りたいからお兄ちゃんに直接概要を伝えるように言ってだって」

「……これは説教確定コースだね」

「レベッカ姉さんは……あー、100万人突破配信をそもそも出来なかったみたい」

「……流石3日で100万人突破の記録保持者レコードホルダー

「だね。私は早速3Dライブ配信のためにスタジオの設定を完璧に覚えてくるから、お兄ちゃんはめくるさんに許可を取って、許可を貰えたVtuberさんの配信の切り抜き編集をお願いね」

「うん。……いろいろありがとね」

「それは全部終わった後に聞かせて」


来夢はカッコよく手を振り、新スタジオにつながっているキッチンの方に歩いていった。


僕は来夢に言われた通りめくるさんに今回配信を切り抜くことになった経緯と許可をもらうためにメッセージを送る。

既読は予想よりも早くつき、帰ってきた返信メッセージには長々と説教文が書かれていた。

僕にも読みやすいように漢字にはフリガナ付きで。


いくつかの文には僕の心を射抜くようなことも書かれており、徐々にダメージが蓄積されていく。


ただ、悪いことだけではなく褒め言葉も書かれている。

最後の方には温かいメッセージとともに『配信使用許可』と書かれていた。


説教文に書かれていた反省すべきところを胸に、早速5名の配信切り抜き編集を始める。

比較的に最近のモエさん、ライガさん、シュウさんの配信はすぐに見つけることができたけど、サクラさん、めくるさんはかなり前の配信になるため、探すのに時間がかかってしまう。


「あ、メッセージ2件……よし!」


メッセージを送ってくれたのはリューティーさんにキラリさん。

思ったよりも早く許可が取れたらしく、対象になる動画をつけてメッセージを送ってくれた。


「……これで、後は僕が頑張るだけ。何とか明後日までには間に合わす!」


手を抜けばすぐに終わらすことはできるかもしれないが、そんなことをした日にはせっかく許可をくれた7名には申し訳が立たない。


そこからは風呂とご飯、休憩以外はすべての時間を切り抜き編集に費やした。

睡眠時間も編集作業に費やし、配信前日の午後5時に編集を終えることができた。


「来夢、編集の最終チェック、お願い……」

「オッケー。お兄ちゃんは共同するの? ご飯食べる?」

「ごめん、僕はもう寝る。きつい……」

「お風呂は?」

「明日入る」

「分かった。おやすみなさい」

「お休み」


一睡もせずに作業をするなんて初めてかもしれない。

その日は寝る直前に何も考えることなく睡眠に入ることができた。


そして翌日。


ヤマトチャンネルの配信予定地には真っ白な背景の真ん中に映るヤマト。

タイトルは【神無月ヤマトの謝罪配信】


配信2時間前には2万を超えるリスナーがチャット欄で様々な憶測を交わしていた。


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