第116話 案件配信コラボ feat.雨猫ハリン 『箱バトル! 後編』
残り1勝で僕の勝利ときたところで、次に副将戦。
上下の画面には配信部屋が映り、僕の方の画面には【夢見サクラ】さまが映り、ハリンさんの方の画面には【シチロー】さまが映る。
副将戦の対戦内容は【ゲーム勝負】。
このバトルの中で副将戦のみが対決内容にランダム要素が振り込まれていて、【運動対決】や、【雑談対決】など様々な内容があるけど、今回ばかりは完全に運が悪すぎる。
当然配信なので、ただ【ゲーム】のステータスだけでなく【学力】や【コミュ力】のステータスもそこそこ重要になってくる。
それでも相手は元プロゲーマー。
育成でも【ゲーム】のステータスは高くなっていて、ゲーム勝負に有利なスキルもある。そのほかのステータスも申し分ないようで終わってみれば【12454人対21054人】とかなりの大差が開いていた。
「こればかりは仕方ない感じですね」
『副将戦は完全にランダムだからな。シチロープロのような特化したライバーを置くプレイヤーもいれば、夢見さんのようにオールラウンダー系のライバーも置くプレイヤーもいるみたいだし』
「ですね。そこをどう攻めるかもプレイヤー様の腕になりますね」
『んじゃ、最終バトルに行くか!』
「はい」
最後の大将戦。
これまでお互いに2対2と互角の勝負を繰り広げたけど、これで全部が決まる。
大将戦はこれまでの対決と違い、少し長い時間対決が行われる。
スキップすることもできるけど、今回は無し。
上下の画面に映ったのはこれまでのような配信部屋などではなく、大きなステージ。
上の方には初期衣装の【神無月ヤマト】が映り、下の画面には【綺羅めくる】さまが映る。
そして、音楽が流れて二人とも踊りだす。
最後の対決は【ライブ配信対決】
この対決はこれまでの対決と違い、【スーパーチャット】の金額によって決着がつく。
更に、前の対決に出てきたライバーたちもゲストとしてステージに出て一緒に踊りだす。
だけど、ここでも編成の違いが出てくるのがこの対決のみそ。
僕の画面の方には【神無月ヤマト】と【でびる♡がーるず】のお二人が一緒に踊っているけど、ハリンさんの画面の方にはすでに【神無月ヤマト】【福良萩】さま【ミネルバ】さま【シチロー】さまが一緒に踊っていた。
すぐに僕の画面には【でびる♡がーるず】のお二人が退散し、すぐに【レベッカ・カタストロフィー】さまが一緒に踊ってくれる。
けれど、ハリン様の方は未だに五人で一緒に踊っている。
これが【神無月ヤマト】と【綺羅めくる】さまの違い、とのこと。
恋夢がスマホと一緒に持ってきてくれたノートには、本来の大将戦は【先鋒】【次鋒】【中堅】【副将】の人とそれぞれ一緒に踊るらしい。
けれど、一つだけ例外がありその例外が今ハリンさん方で起こっていること。
【綺羅めくる】さまにはスキル【個人の中心】と言うスキルがあり、【箱バトル】の時に必ずコラボが発生し、【大将】にいると、最初から最後まで5人で踊るようになるとのこと。
その分スコアも上がって、トッププレイヤーがする編成の一つらしい。
そんな編成に唯一対抗できるのが【神無月ヤマト】。
【神無月ヤマト】のスキル【天才】は【箱バトル】の時にコラボすればするほど、スコアが上昇していくライバーで、【綺羅めくる】さまに対抗できる唯一の手段とのこと。
「どちらの配信も捨てがたいですね」
『うん。ヤマトの方はライバーが少しずつ変わっていくから面白さがあるけど、めくるさんの方は最初から5人もいるから迫力あるよな』
「はい。あと流れる音楽にライバーさんたちが躍っている姿も最高にいいです!」
大将戦は1分ほどで終了し、最終スコアが表示される。
結果、【135,000円対127,700円】で今回の【箱バトル】では僕が勝利した。
「よしっ!」
『だぁぁー、負けたぁー!!』
メッチャ接戦だった……。
いつも大将戦スキップしてたけどああいう風になってたんだ……
これがトップランカーたちの編成と戦い。
ゲームだってわかってるのに、緊張のあまり口が締まらなかった
最後の【箱バトル】はなかなかの好評で『おめでとう』と言うコメント付きのスパチャが投げられたりした。
いや、本当に見ているだけだったのに最後の最後まで緊張したよぉ。
「あ、もうすぐで23時ですね。本当は感想とか言いあいたいんですけど、時間がないので最後に一言、感想あったらお願いします」
『オッケー。まぁ今回見てもらった通り見てるだけでも盛り上がれるし、ガチャ要素もあって面白いからな、ぜひ遊んでみてくれ! 私からは以上!』
「では最後に僕から、このゲームは実際に僕たちVtuberがモデルとなっているゲームなので、今後僕が『ごろろっく』さまや、他のライバー様とコラボしたら、それがこのゲームにも反映されるようになっています。今後とも僕たちも頑張っていくので是非遊んでいただけると嬉しいです!」
インストールしたぞ!
また配信してくれー!
ヤマトが当たりました
今年一のゲーム間違いなし!
「あ、でも課金だけには気を付けてくださいね」
『それな』
いいたいことも言い終えたし、そろそろ閉めないと。
「この後は23時からは『ごろろっく』魔性の男の娘、
「本日は僕と楽しい時間を過ごしていただきありがとうございます。行ってらっしゃいませ、ご主人様。またお会いできる日を楽しみにしております」
『今日の私たちの配信は終わり! チャンネル登録と高評価の方よろしく! トリッターもやってるから、そっちの方からも情報仕入れてね。それじゃ、乙ハリン! また来いよー!』
また来るぞー!
乙ハリン
行ってきまーす!
また来るねー!
***
配信を切り、ようやく一息つく。
緊張の糸が一気に切れた感じがする。
「嵐子さん、お疲れ様です」
『お疲れ~。なかなか良かったんじゃないか? これならそこそこの人がインストールしてくれるだろ』
「どうでしょうか。視聴者さんに興味は持ってもらえたと思いますけど、どれだけの人数が今回の配信を見てインストールするかはわかりませんからね。僕たちができるのはゲームの面白さを伝えるまでです。あとは運営さん次第ですね」
それでも、今のところは黒字で行けていると思う。
リリースして一週間たった今でもその人気は衰えず、獅喰蓮さんを起用した効果は配信前だというのにすでに結果に出て来ている。
今回の配信もVtuber初見の人がそこそこいたし、嵐子さんの方なんかは育成している途中に獅喰蓮さん関連で来た人がそこそこいたようで、今回の配信で1000人も登録者数が増えたとのこと。
今回の案件配信は僕たちにとっても大成功と言っても問題ないよね!
『それじゃあ私、太陽にスマホ返さないといけないから』
「あ、僕も来夢にスマホ返さないと」
『じゃあ今日はこれでお開きだな』
「ですね。お疲れさまでした」
『お疲れぃ!』
通話が終了し、スマホを取って一階に向かう。
明日が休みなのもあって来夢は今日夜更かししている。
リビングに着くと、案の定来夢はソファに座りながらテレビでMytubeを見ていた。
「来夢ー。寝なくていいの?」
「明日学校休みだから問題ない。それよりもお兄ちゃん、よくやった」
来夢はソファから立ち上がると腕を組み僕をほめてきた。
「何で上から目線なの?」
「だって私のパーティーだからね。何か文句でもある?」
「……ないです」
それを言われたら何も言えない。
結局のところ来夢と太陽の手助けが無かったら最後の『箱バトル』はできなかったんだから。
「今は白馬リオンさんの配信中なんだね」
「うん」
白馬リオンさん。
ペガサス王国の王子様で超がつくほどの男の娘。
ごろろっく所属のVtuberで、男の娘たちだけで結成された『リトルボーイズ』と言うグループに入っている。
デビューは5年ほど前でかなりのベテランライバーさん。
ゲームや歌もうまいけど、一番はその可愛さ!
男の娘だと分かっているのに、彼に恋する男性は後を絶たない。
誰かとわいわいするのが大好きなライバーさんのようで、個人配信はもちろんコラボ配信などを多く行っている。
因みに『リトルボーイズ』にはミネルバさんも所属している。
「そういえば配信前にリオンさん、お兄ちゃんの配信見てたらしいよ」
「何か言ってた?」
「うん。たくさんの人とコラボしたり、一人で配信できるお兄ちゃんのことにあこがれてるみたい」
「うん?」
なんだか普通のことに思えるけど……。
まぁ、人にはそれぞれ得意不得意があるし気にしなくも問題ないかな。
「それと同時に自分の前にあれだけの配信はやめてほしいって言ってた」
「……僕は褒められたの? それとも叱られたの?」
「褒められたんじゃない? それだけお兄ちゃんと嵐子さんの配信が凄かったってことでしょ」
「……うん。そうだね!」
褒められたんなら胸張っても問題ないよね。
さてと、気分もいい感じだし配信疲れたから今日はもう寝ようかな!
「あ、お兄ちゃん!」
リビングを出ようとする僕を来夢嬉しそうな笑顔で呼び留めてきた。
「どうした?」
「明日の配信って夜だよね?」
「そうだけど……どこかに出かけたいの?」
「そうじゃなくて……そのー」
来夢は何かを言い淀みながらスマホの画面を見せてきた。
それは『Vtuber育成学園』のホーム画面。
ああ、そういう。
「明日は特にすることもないし、今日のお礼もあるから一緒にやる?」
「っ! うん!」
ヤバい。最近忙しかったせいであまり見れてなかったけど、来夢の満面の笑み、最高に可愛い!
結局、僕と来夢は日が真上に上るまで一緒にゲームをして遊んだ。
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