第115話 案件配信コラボ feat.雨猫ハリン 『箱バトル 前編』
僕たちの育成はそこから順調に進んでいき、僕の方はスキルやステータスがなかなか高く、目標ファン数も余裕をもってクリアすることができた。
対する、ハリンさんはかなりギリギリで育成していたみたいで、ステータスは完全に偏り、ファン数も目標よりも少し多いくらいで終えることができていた。
育成が成功すると、最後にそのライバーの卒業式が行われ、卒業式にミックスしたBGMと、校長先生のお話がこれまでの頑張りを思い出させてきて、少しだけ親の気持ちを理解することができた。
と言っても、校長先生の声僕なんだけどね。
そして、最後にステータスの確認と、残ったスキルポイントの振り分けをして育成が完了する。
最終的に、僕とハリンさんが育成したライバーたちのステータスはこういう風になった。
【神無月ヤマト 学力:705 歌唱力:1125 運動神経:700 根性:857 トーク力:998 メンタル:989 ファン数:1,235,543人 育成ランクS】
【デビリット魔怜 学力:854 歌唱力:561 運動神経:555 根性:1412 トーク力:451 メンタル:765 ファン数:700,021人 育成ランクB+】
本当にハリンさんの方の育成はぎりぎりだった。
僕の方が育成を先に終え、ご主人様たちと一緒にハリンさんの育成を見ていたけど、ぎりぎりすぎるあまり、配信のことを完全に忘れて何とか目標達成できるように祈ってた。
ギリギリ目標達成できた時は大声で喜んで、大盛り上がり。
コメント欄の方も『おめでとう』などのコメントが飛び交い、まさかここまで盛り上がるなんて思いもしてなかった。
それだけ、僕やご主人様たちはこのゲームにのめり込んでしまったということ。
これだけ盛り上がることができれば案件の方も成功と言って間違いないよね!
……だけど、僕たちの配信はこれだけじゃ終わらない。
「あー、あんなに大声出して大喜びしたの初めてかもしれないです」
『なんとなくそんな気がするわ』
「さてと、育成も終わりましたし、最後に参りましょうか。23時までもう少ししかありませんから急いでくださいね」
『分かってる!』
僕たちは画面に映っていたゲーム画面を一回消す。
お?
なんだ、なんだ?
もう終わり?
何する気だ?
数分したころに、ハリンさんのゲーム画面、次に僕のゲーム画面が配信画面に映った。
それは先ほどまで遊んでいた『Vtuber育成学園』のゲーム画面ではあるけど、明らかにゲームのホーム画面が先ほどまで遊んでいた画面とは違っていた。
僕のゲームのホーム画面はど真ん中にヤマトがいて、背景は『学校』。
実際に始めたばかりだと、オーソドックスなホーム画面になっていて、ゲームをプレイしていくと背景を選択できたり、ホーム画面のキャラをいじれたりすることができる。
それを踏まえて、今の僕のゲーム画面を見ていくと違いは明らか。
ど真ん中にヤマトがいるのは何も変わらない。
ただ背景は育成の時に出てくる配信部屋の風景に画面全体はキラキラのエフェクトがかかっている。
更に、ヤマトの後ろにはメモリーガチャで出たであろうイラストがフワフワと浮いていた。
え、
どいうこと?
このエフェクトって先週のランク上位者にしか与えられない……。
え、……え? 後ろにXが2枚あるんだけど……。
ハリンさんの画面も同じように、画面の真ん中には本来ハリンさんが持っていないはずの【『天才』神無月ヤマト】が映っていて、背景は温泉。
僕の方とは違い紫色のエフェクトがかかっており、ヤマトの後ろにはメモリーガチャで出たであろうイラストが浮いていた。
「はい。それでは最後にこのゲームのバトル要素でもある『箱バトル』をやっていきたいと思います。気づいている方もいらっしゃるかもしれませんが、今皆様が見ている画面は僕たちが先ほどまでやっていたゲームの画面ではありません」
そりゃ、なぁ~
これ、それなりのランカーだろ
もしかしてヤマトの本アカ?
ヤマトの演技に騙されたのか?
「今開いているデータは僕たちの妹のデータになります」
『箱バトルをするのに、かなり育成しないといけないらしかったからな。さすがに時間が足りないってことになって妹たちにスマホ借りたんだよ』
「ということです。やり方に関しては既に恋夢が設定しててくれたみたいなので、後は【箱バトル】のボタンを押して、【フレンド対戦】を押した後に【サニー】と言うフレンドを押すとできるそうなので、早速やっていきますね」
ボタンの場所や推す順番に関してもみっちり教えてもらえたおかげで、いちいちあたふたすることなく【サニー】の名前を推すことができた。
「ハリンさん。届きましたか?」
『ああ、こっちは【了承】ボタンでいいんだよな?』
「そのはずです」
しばらくすると【『サニー』さんとの対戦が可決されました】と言う文字が出て、画面が【フレンド対戦】モードに切り替わった。
「確か、このまま【対戦スタート】を押せばいいんですよね」
『そうだけど、その前に今回の編成を見せなくてもいいのか?』
「あ! 忘れてました。ではまず僕の方から今回の編成を見せていきますね」
今回、僕の編成はこのようになっていた。
【先鋒 デビリット魔怜 SSS+】
【次鋒 真魔キュア SSS+】
【中堅 レベッカ・カタストロフィー X-10】
【副将 夢見サクラ X-8】
【大将 神無月ヤマト X-4】
対するハリンさんの編成はこちら
【先鋒 神無月ヤマト X-5】
【次鋒
【中堅 ミネルバ X-10】
【副将 シチロー SS-】
【大将 綺羅めくる X-7】
僕の方は、これまでに僕が関わってきた人たちだけで固められている。
対するハリンさんの方は僕が関わったことがある人がまったくいない。
だけど、そこには微かながら関連性があった。
それは、僕と同じく他の4名も現在個人勢と言うところ。
福良萩さま
元ごろろっく所属のでかなりの最古参のライバー。
1年ほど前にごろろっくを退社してから、個人として活動している人。
ごろろっくとの関係が悪くなった、などではなく、もともとそういう契約でごろろっくに入社したと、何かの切り抜きで見たことがある。
現に、ごろろっくが大型企画を行う際、MCや助っ人として福良萩さんがよく出演している。
因みに福良萩という名前は本人がふくらはぎフェチだからという理由でつけられた名前で、ごろろっくの時はもっと普通の名前だったとのこと。
シチローさま
3年ほど前に出てきたライバーで、かなりの元プロゲーマー。
年齢は確か40代で、本人曰く外国の凄い大学を飛び級で卒業しているとのこと。
ゲームで世界チャンピョンにもなったことがあるらしい。
それもあって、このライバーさんはVtuberでは珍しく、実際に顔出しなどをしているライバーさんになる。
今現在、ゲームをするときはプロのような勝ちを求めていくスタイルではなく、誰もしたことがない、見たことがないような発見を持てめていくスタイルでゲームをしているとのこと。
「育成ランク、凄いですね」
『ああ、ヤマトの育成したヤマトもなかなかのものだったけど、それ以上のランクってどうなってんだよ……』
……この編成どこかで見たことあるのは気のせいか?
奇遇だな。オレも見たことある
ヤマトの方はヤマト中心のオーソドックスな編成だから見たことあるだけだろ
それを言うならハリンの方も綺羅めくるを中心にしたソロ編成だからそこにでもいる
いや、そうじゃなくて、この編成に育成ランク、絶対に見たことあるんよ
「この編成は僕たちの妹がさっきまで調整していたもので、僕たちは何もわかってない状態なんですけど……」
『何人か見たことあるんだったらランキングじゃね? うちの妹、時間が来るまでランク戦みたいなのやってたみたいだし』
ああああああああ!!
あ……。
ああ、どうりで。
見たことあると思ったらそういう事か
ハリンさんの一言でご主人様たちは何かわかったみたい。
僕は何のことか一切わからないけど。
「ハリンさん、そろそろ時間もないですし始めましょうか」
『ああ、一応妹の威厳がかかってるから負けねぇぞ!』
「僕も、今日の日まで頑張ってくれた恋夢のために負けられませんので」
【対戦スタート】ボタンを押すと画面の背景は変わり、どこかの配信部屋が上下に表示され、上の方に【デビリット魔怜】さま。下の方に【神無月ヤマト】が現れた。
そしてバトルがスタートする。
先鋒戦のバトル内容は配信同接数対決。
お互いに配信して同接数で競うバトルで、二人の配信シーンがアニメーションで流れていく。
10数秒で対決が終わり、結果【6501人対10231人】の差で負けてしまう。
次に次鋒戦。
次鋒戦は上下にゲーム画面がに変わる。
僕の方には【でびる♡がーるず】の2人が映り、ハリンさんの方には【福良萩】さまと【神無月ヤマト】の2人が映る。
次鋒戦はコラボ力の対決。
お互いでコラボ配信していく中、僕の方の【でびる♡がーるず】は相性最高でスコアが伸びていき、対するハリンさんの方は相性普通だったけど、【神無月ヤマト】のスキル【適応力】が発動して相性は良好まで駆け上がった。
結果、スコア【10546対10212】の僅差で、僕の勝利。
あまりにも僅差の勝敗で一瞬ヒヤッとしてしまった。
「これでお互いに1勝1敗ですね」
『いやー、流石に【でびる♡がーるず】には勝てねぇか!』
「2人の絆はそう簡単に負けませんよ」
『1戦落としてしまったけどあと3戦! 2勝すれば私の勝ちだからな!』
次に中堅戦。
上下の画面には教室と机、その上には紙が置かれている。
僕の方には【レベッカ・カタストロフィー】さま、ハリンさんの方には【ミネルバ】さまが映る。
中堅戦は学力勝負
お互いにテストを解いていき、合計点で競うというゲーム。
だけど、この勝負は学力がいいだけではなく、いくつかのスキルが重要になってくる。
その中の一つは珍回答系のスキル。
そう。
このテストはただのテストではなく、テスト企画の一つ。
どれだけ、珍回答ができ、ファンを面白くさせることができるかが肝になってくる。
当然、普通に解くために学力も必要。
当然のことだけど、それが許されるのはゲームだからであって、リアルでは絶対に許されるはずがない。
珍回答とは真面目に解いたのに出てくるかこそ面白いんだから。
結果は【452点対395点】で僕の勝利。
後、1勝で僕の勝利が決まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます