第109話 ゲーム沼
「保仁、どうしよう……」
「どうしたんですか。いきなり部屋に入って来て……」
案件配信前日。
いつも通り嵐子さんは部屋に入って来たけど、今日はいつもと違ってどこか複雑そうな表情を浮かべていた。
「実は太陽がこれまで貯めてきたお金をゲームに使ってた……」
「マジですか。因みにそのゲームは——」
「『Vtuber育成学園』」
「ですよねー」
どうやら嵐子さんのところでも同じことが起こっていたらしい。
来夢も今回、僕のライバーが出るまで課金した結果、合計10万円も使い込んでいたことが判明。
今後は課金をする際に僕に報告するようにという条件が付けられた。
「それで、いくらですか?」
「8万」
まだ来夢よりは少ないけど、普通に大金を使い込んでいた。
「今回のゲーム、ヤマトの配布率があまりにも低いらしいんだけど……」
「あー、来夢も言ってましたね。結局天井? というところまで行ったらしいです」
「これって、私たちが案件配信しなくても大成功だよな」
「ですね。運営のサーバー強化の早い対応に、メンテナンスのお詫び、イラストの完成度といろんなところで高評価受けてますよ」
「問題点は声だけだし」
「それに関しては仕方ないですからね。本来、これは声優の仕事なので」
全体的な評価では星4評価が多く、唯一声の部分だけが問題視されていた。
僕としても悪くないとは思うんだけど、何人かが棒読みなのがちょっと気になるかなーって感じ。
因みにMytubeでは、声ランキングや育成方法に遊び方と言った解説動画がすでにいくつも挙げられていた。
因みに、声ランキングでは『無所属 神無月ヤマト 1位』『ごろろっく所属 クラ・ベルマール 2位』『ガーデンランド所属 真魔キュア 3位』という風に順位がつけられていた。
「保仁はゲームのダウンロードは終わった?」
「はい、ダウンロードだけはリリース当日に済ませました。当然それ以来開いてないです」
「進みは台本通りで問題ないよな」
「大丈夫です」
「あ、でも私解説動画とかゲーム実況の動画見ちゃってるわ……」
「しっかり初めてプレイするような演技してくださいね。よく見てる人はそういうところを厳しく見てきますから」
「分かってるよ」
とはいうけど、僕も解説動画等は見ていないけどゲームの評判やランキング動画は見てるからあまり人のこと言えないけど。
それに来夢のガチャ結果も見ちゃったし、そのせいで今回のゲームのライバーやサポートカードのイラストとかも見ちゃったから、ライバーが出た時に初めて出た時の喜びの演技もしないといけないけど。
「もしこのゲームに沼ったら……」
「やめてください。考えたくないです」
それだけは考えたらいけない。
今の僕は数十万を簡単に稼げる状態になっちゃってる。
だからこそ、少しでも無駄遣いしないようにしないといけないのに、今回のゲームに沼ったらと考えると……。
震えが止まらなくなる!
「今回の案件で30万だけど、これってもしかしてそのお金を課金してくださいって意味じゃないよな?」
「流石にそこまではないと……思い、ます」
どうしても言い切ることができない。
それほどに今回のゲームは危険に感じる。
「私、今日配信の予定だったんだけどやめとこうかな」
「その方がいいですね。今回の案件に関しては気になりすぎて配信中にそのことを考えてしまうかもしれませんし。特に、ゲームをメインに扱っているハリンさんなら尚更」
今回ばかりは僕も木曜日の配信をお休みにさせてもらった。
代りに金曜日に案件配信することになり、金、土の連日配信することが決定した。
これを機に配信日をもう少し増やしてもいいか考えておこ。
「それじゃあもう帰るわ」
「あれ? いつもより全然早いですね」
「ああ、このドキドキを消すためにゲームにもぐることにしたから。それと、さっきからなってるスマホの相手にも申し訳ないからな」
「え?」
嵐子さんに言われ僕のスマホを見てみると、すでに50を超えるメッセージが届いていた。
送り主は凛音さん。
「じゃあ、また明日よろしくな」
「あ、はい。また明日」
嵐子さんを見送り凛音さんからのメッセージを確認すると、何回か電話していたみたいで、気づかなかったことに申し訳なくなり、すぐに折り返し電話をすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます