ヤマト、ママになる

第93話 新衣装お披露目配信準備


さてと、トリッターで募集した視聴者が書いてくれた新衣装のイラストは何を出すかまとめて、配信できる準備はできたけど……いまだに肝心なものが届いてない。


それは、僕の新衣装のデータ!


なぜか未だに届いてない!?


母さんたちが帰ってから、数時間が経ったときに僕はこの事実に気づいてしまった。


本当に今更!

配信は明日なのに!


さっきから義姉さんに電話しているけどなかなか繋がらない。

忘れてるってことはないと思うし……。


「やーすーひーとーくん! あーそーぼー!!」


スマホを見つめていると聞き覚えのある声が外から……!


「義姉さん! なんでいるんですか!?」


家の前にはさっきまで電話をかけても繋がらなかった義姉さんがいた。


「え~、それ酷くない? せっかく新衣装持ってきてあげたのに~」

「え、新衣装!?」

「そうだよ~。だから開けてくれない?」

「……鍵持ってないんですか?」

「持ってないよ~」

「……分かりました。今行きます」


急いでカギを開けて義姉さんを中に入れる。


それにしても、どうしてわざわざ足を運んでくれたんだろう。

新衣装を送るだけならデータでもいいはずなのに……。


「歩いてきたんですか?」

「うん。せっかくだからね。ずーっと座ってるのも体に悪いから運動がてらにちょっとね。それに新衣装を設定するうえでやらないといけないことがあったし」

「やらないといけないこと?」

「そうだよ~。保仁くんって来夢ちゃんの作ったアプリでの新衣装の設定の仕方知ってる~?」

「もちろんですよ。確か……」


あれ?

僕来夢にそのこと教えてもらったっけ?


僕が来夢に教わったアプリの使い方は、顔を通してスキャンするとモデル体が現れることと、テストで動かす方法だけ……。


詳しい使い方教わってない!?


「すみません。分かりません」

「だよね。だから来たんだ~。来夢ちゃんは保仁くんにやらせて壊れたらいやだから教えなかったみたい」

「いやいや、流石の僕でもそこまでは——」

「因みにだいぶ複雑でものすごく頭使うけど~」

「流石来夢ですね。僕のことをよくわかってる!」

「あはは、それじゃあさっそく作業に入るから保仁くんはのんびりしてていいよ」

「分かりました。パソコンの電源はついているので自由に使ってください」


複雑なのはさすがに無理。

ここは義姉さんに任せるとして、僕は今後のスケジュールでも考えようかな。


義姉さんはそのままに買いにある僕の部屋に行き、僕はリビングでカレンダーとにらめっこをしていた。


曜日や日付の確認をしていると一件のメッセージ。


相手は凛音さんから?

……なにこれ。


届いたのは昨日の寝ているときの写真。


写っているのはすやすやと寝ている僕に抱き着いている凛音さん。

因みに写真の種類はいくつもあって、普通のやつから、顔を近づけているやつ、耳をカプリと噛んでいるものまである。


最後には【また一緒に寝ようね】というメッセージ付きで。


うん。

一緒に寝るかどうかは置いといて、【その写真、絶対に他人に見せないでくださいね】とだけ送っておこう。


「保仁くーん! 設定できたからちょっと来てくれない?」

「分かりましたー!!」


さて、これから僕は新衣装を着たヤマトと対面する。


初めてヤマトを見た時は、急な頼みで普通のイラストと思っていただけにそこまで感動的な出会いではなかったけど、今回は僕の新衣装だと分かっての対面。


楽しみで仕方がない!


「義姉さん! 見せてください!」

「待って待って! まずは顔認証からね~。そのあとにいろいろと覚えてもらわないといけないことがあるから、しっかり聞いてね」

「……分かりました」


一昨日の凛音さんと同じように、顔をカメラでスキャンしてダウンロードが済むまで我慢する。


凛音さんの場合は3Dモデルを一から作ったから時間がかかったけど、僕の場合はモデルがすでにある状態だからそこまで時間はかからなかった。


「……あれ? いつもと画面が違う」


いつもならすぐに僕のモデルが出てくるのに、今回出てきたのは僕のモデルではなく二つのファイル。


「そう。ここからが保仁くんに覚えてもらわないといけないところだよ。このファイルには片方に初期衣装のヤマトが、もう片方には新衣装のヤマトが入ってる。これまでは顔認証したらすぐにモデルが出てきたけど、今後はこのファイルからもでる選択してね」


『初期衣装』と書かれた方のファイルをクリックすると、今まで使っていた僕のモデルのアイコンが載っていた。

それをクリックすると、いつも配信している画面に……!?


シンプルで分かりやすい!


「配信の途中に衣装チェンジしたいときは、左下にある【衣装チェンジ】のボタンをクリックしてね。そしたら衣装が変わるから」

「なるほど……」

「新衣装の方も同じ感じになってるから、試してみてね。……ちょっとソファ借りていい~?」

「いいですけど、どうしたんですか?」

「いやー、最近寝不足だったからね~。少し眠らせてもらうね」


確かに、さっきまで元気だったけど、今は徹夜で一仕事終えた後に来夢みたいにげっそりしてる。


「なら僕のベッドでも……」

「それはさすがに、ね」

「はい?」

「だって昨日そのベッドで凛音さんと寝たんでしょ? 二人の愛の巣にお邪魔するのはちょっとね~……」

「あ、愛の巣ちゃっ、ちゃいますよ!?」


ていうか何で知ってるの!?


もしかして昨日の配信見てたとか?

それとも母さんが……!?


「私としては保仁くんに春が来て嬉しいけどね~。じゃ、ソファ借りるね。少し使ってみたいってのもあるから~」

「それが本音ですか……」


義姉さんはそのまま部屋を出ていった。


ソファで寝たいって言うのもあるかもしれないけど、一番はたぶん僕のため。


新衣装を一人で堪能するために気を利かせてくれたんじゃないかな。

別に一緒に見てもいいのに。


だけどここは義姉さんの気遣いをありがたく受け取るとしよう!


「さぁ、僕の新衣装とご対面!」



~~~~~~~~~~



時間が経つのは早いもので、凛音さんとコラボしてから早二日。

今日は僕の新衣装配信日。


昨日は新衣装を貰ってからずーっと調整モードで動かして遊んでいた。


それはもう1日中。

いつもは長風呂なのに昨日は20分でお風呂から上がったし、家事炊事は来夢の当番だったから、ご飯を食べるとき以外は自分の部屋にいた。


理由はもろもろあるけど、今回の新衣装。

面白いことに2種類(・・・)あって、そこからさらにいろんなバリエーションがあるという豪華仕様!!


全部試しながら、どれが一番しっくりくるかを試したりしていた。


まぁ全部が全部納得いく仕様ってわけじゃなかったけど……。

簡単に試した後に義姉さんに文句言おうと思ったらすでに帰ってたし、メッセージを送っても【その方が受けいいから】って返ってきたし。


確かに僕もいいと思う。

何より、『神無月ヤマト』って言う設定に会ってるからね!


でもそれとこれとは話が別だよ!

調整に一番時間を使ったのはその体になれることだったからね!


でも今は大丈夫、……多分。


「お兄ちゃん。今日一歩も部屋から出てないよね?」

「うん。新衣装で遊んでたからね!」

「じゃあ外見てないよね。朝見ただけだから分かんないけど、隣に人が引っ越してきたみたい」

「なるほど……じゃあ配信の時に気を付けないとね」


急に来て部屋に居座っていた来夢が窓側に立っている家を指さす。


昨日までは電気もついていないで暗い家だったのに、今はしっかりと電気がついて人がいるのが確認できる。


「人が引っ越してきたんならカーテン閉めないと」

「私もピアノの音気を付けるね!」

「そうだね」

「じゃ、私部屋に戻って作業しとくね!」

「はーい」


さてと、僕も配信の準備をしないと。

そろそろ時間だからね。


待機画面はすでに10,000人を超えている。


配信の準備は万端!

アプリの使い方もマスターした!


さぁ、配信を始めよう!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る