第91話 オフコラボ feat. 飛鷹凛音 後編 『僕の町と暴走』
凛音さまは僕のゆかりある地のことを全部話してくれた。
昔あった温泉の話や、公園で遊んでいたら鼻血を出してしまった話などを。
「あ、これ写真ありますけど皆さん見ますか?」
みたい!
見ます!
見せてくれ!
見てみたーい!
僕も見たーい!
というよりも、どんなところに行ったのかが気になる。
日向には有名地と言える場所は少ないけど、写真を撮れる場所はたくさんあるからね。
それに、大女優の母さまと凛音さまが人に見つかることなく写真を撮ったのかも気になる。
「ヤマトくん、お願いしてもいいですか?」
『分かりました。ちょっと待っててください!』
急いで凛音さんのスマホとパソコンをつなげて、写真をパソコンの中に入れる。
十数枚くらい写真が撮られてる。
それも全部凛音さまのワンショット。
『では、今から1枚ずつお見せします。1枚目は僕の迷子の写真ですね』
高いところから見下ろす形に取られてる凛音さま。
後ろには10号線の道路。
この光景懐かしい……。
おお!?
これがヤマトの住む町!
これいいのか?
土地バレ大丈夫?
『土地バレですか? そこらへんは大丈夫ですね。僕は日向市が好きなので、日向に聖地めぐりとして人が来てくれるならそれで。流石に知らない人に身バレはまずいですけど』
僕の場合知らない人は一般人に入る。
だって僕のこと知ってる人ってほとんどの人が配信者や漫画家、役者さんばっかりだから。
『2枚目は……僕の家の前にある川ですね。さすがにこれは家バレしそうなのでダメです』
流石に家をばらすわけにはいかない。
てか、普通に家写っちゃってるし……。
『3枚目は……僕の寝顔?』
「あ、今日の朝とりました……」
『これも普通に出せませんね。しかも4枚目は凛音さまとのツーショット。5枚目に関しては頬をくっつけてますし……、しかもこのアングル、撮ってるのって凛音さまじゃありませんよね』
頬をくっつける!?
やりすぎだろ!
何してんの!?
しかも凛音じゃないってことは、神無月家のだれかってこと!?
ホント何してんの!?
僕も昔、来夢が小さいころに頬すりすりしたことあるけど、この年になってされるなんて恥ずかしい!
『ろ、6枚目は……あ、日向駅でひょっとこのお面付けてますね』
これは出しても問題なさそうだったから、配信画面に乗せる。
写っていたのは頭にお面を乗せた凛音さま。
「えへへ、記念に買っちゃいました!」
『日向駅にあるお店でひょっとこのお面売ってたのは知ってますけど、買う人初めて見ました』
「え、ヤマトくん買ったことないの!?」
『はい、そもそもこの地域だと、夏にお祭りがあってプラスチック製だけどお面を買うことはできますし、僕が小さいころに使ったお面は手作りなので買ったことないですね。むしろ日向市民でお面を買ったことある人の方が少ないと思いますよ』
え、そうなの!?
お面って手作りできるんだ……
確かに……記念に買っちゃいそう
そら、地元民はあまり買わんわな!
それに、1回値段見たことあるけど高かったんだよね……。
『あ、僕のお面凛音さまに差し上げましょうか?』
「え、いいの!?」
『はい。僕の手作りでお面には僕の落書きもありますけど……』
「ほしい!」
『差し上げますね』
最高の贈り物じゃん!
私もヤマト様のお面ほしいです!
凛音さんが羨まし~!
ずるい!
親衛隊が反応しすぎてる!?
そんなに欲しいものかな。
あっても置き場に困りそうだけど……。
『それじゃあ次に行きましょうか。7枚目は……ここですか』
写真に乗っていたのは日向岬展望台と視野を遮るもののない太平洋の大パノラマ。
僕もここには何回か行ったことがある。
ここは……。
『日向岬』
「うん。日向に来たら行ってみたかっら場所の一つなんです」
綺麗
景色最高じゃん!
絶景かな、絶景かな!
確かに、ここには行ってみたいよな!
『因みに日向岬展望台に行く途中に国の天然記念物の馬ケ背があります』
知ってる!
馬ケ背は聞いたことあるわ!
凄い名産地じゃん!
日向市もホームページでこの地を紹介してるんだよね。
地理の宿題で調べる機会があったから、僕はそこそこ詳しい。
何より、好きな街を知ることができてうれしかったから!
『8枚目は……僕の作業中の横顔』
「凛々しかったからつい……」
『9枚目は……僕が演技のレッスンしてる時の写真』
「お守りに」
『10枚目は……僕が料理を食べてる時の写真』
「おいしそうに食べてるヤマト君がかわいかったので……」
『いつ撮ったんですか? 全然気づきませんでしたよ』
「ものすごく頑張って練習しました! 隠し撮り!」
『……』
何もいえねー
何してんの?
無駄すぎる……
ヤマトも引いちゃってるじゃん
僕も何も言えないよ。
何でそんなこと練習してるの。
公開さえしなければ堂々と取っていいのに。
因みに11枚目~15枚目までは似たように僕の隠し撮りや、僕が寝ている間に取ったツーショットにスリーショット。
どうやら来夢と母さまもグルみたい。
そして最後の写真
『16枚目は……ここですか』
「うん。ヤマト君にとって一番思い出深い場所と聞いたので……」
『確かに、ここは少し思い出深いですね』
写真に写っていた場所、それは細島の港よりも大好きな場所。
多分、僕が一番好きな場所と言っても過言じゃないかもしれない。
『ここは、米の山の頂上ですね』
「うん。行きの道は山道過ぎて大変でした」
米の山からは日向市を見渡すことができる。
写真に写る凛音さん。
その後ろには日向市の絶景が広がっていて、さらによく見てみると赤白の煙突みたいなのが立っているのも見える。
そう、ここから見えるのは日向市以外にも門川の海に延岡にある煙突まで見ることができる。
ここの景色は僕が一番好きな景色。
『ここは唯一父さまが顔を隠さずに写真に写ってくれる場所なんですよね』
「あの義明さんが!?」
写真嫌いで有名なあの!?
似顔絵が少なすぎるあの!?
レア場所過ぎるだろ!
聖地じゃん!
『それに、ここの景色は最高ですしね。スカイツリーを見るまではここにかなう場所はないと思っていたほどです』
「確かに、ここはまち一面が見渡せますしね」
『と言っても、来るまでの道が険しいのであまり行きたがりませんけど』
「それは分かります。撫子さんも運転するの嫌そうでした」
そんなにか……。
まぁこれだけの景色だったらな
景色の対価に比べれば安いものだろ
『これで終わりですね。凛音さま、日向市を探索してみてどうでしたか?』
「うん。綺麗な景色がたくさんあって、海の臭いも感じることができたし、神社もたくさんあって面白かったです!」
『そう言っていただけると嬉しいです。日向市にはプロのチームも訪れる神社やドームもありますからね。僕たち日向市民にとっては自慢の場所です! 市民に不満があるとすれば遊ぶことのできるアミューズメント施設がないことくらいだと思います』
「……ああ、確かに。カラオケ店やゲームセンターとかはたくさんあったけど」
『昔はボーリング場やバッティングセンターとかあったんですよね~』
老朽化が進んでいたとはいえ、それらがなくなったときは当時のクラスメイト達が騒いでたなー。もう数年も前だけど。
因みに最近では市民プールもなくなるとのことで、あそこには50メートルプールがあったこともあり、毎年泳ぎに行っていた来夢は非情に残念がっていたのはまた別の話。
「昔はあったものがなくなるのは悲しいですね」
『はい。でも今回のように自然にできたものや思い出がなくなることなんてめったにありませんからね。それがあるだけでも僕は嬉しいです』
「あぁ~。いい子だね、ヤマトくん! もう我慢できない!」
『わわっ、ちょ!?』
凛音さまに座っている椅子を引き寄せられ、両脇を持ち上げられて凛音さまの股に座らされる。
そして、両足でがっちりとつかまってしまった。
なんだ、なんだ!?
ついに手を出してしまったか!
これどういう状況?
何で凛音の前にヤマトがいるの?
僕も初めて知った。
写っている二人が重なると重なり合うんだ……。
「はぁ、はぁ、ヤマトくんやわらかい」
でも今はそんなことどうでもいい。
今気にしないといけないのは暴走してしまったこの人だ。
『あの、凛音さま。落ち着いてください。抱きつくのはいいですけど顔が近いです』
本当は抱き着くのもよくない!
さっきから凛音さまのお胸が僕の背中に当たり続けている!
漫画でよく読むラッキースケベって言うやつかもしれないけど、これ、羨ましいものじゃないね!
心臓がバクバクしっぱなしだよ!
「気にしなくていいの。いい匂い」
『気にします!』
抑えられなかったか……
001225番! 早くヤマト様からは慣れなさい!
そうだそうだ! うらやまけしからん!
そこを替わって~!!
親衛隊も抑えきれないか……
これ、もう配信どころじゃなくなっちゃったかな。
多分凛音さんはこのまま話してくれないと思う。
まぁ、最初からこの格好じゃなかっただけましか。
それに、もうそろそろ時間もいいころだし、このへんで配信も終わりにしようかな。
でもその前に、配信を切った後襲われないようにしないと。
『凛音さま? もし配信切った後に何かしようとしたら僕、許しませんよ?』
「っ!? はい!!」
圧すご……
圧強すぎる
やっば……
ファンでもそこは徹底するんだな
これで良し。
凛音さまが本当に僕のことを好きなら、今の幸せよりも今後の幸せを優先するはず。
何かあった場合母さまが何とかしてくれることを信じよう。
『それでは、いいお時間になりましたので、今日はこの辺で終わりにいたしましょう』
「そうですね。こ、この後は私とヤマトくんとの、二人だけの時ですからね!」
『言っておきますけど、抱き枕になるだけですからね。もし変なことしようとしたら……わかってますよね?』
「はい!」
『ならよしです』
完全に手綱握ったな
ヤマトの圧つよ!
ヤマト様の無事を願います!
001225番、親衛隊として耐えてください!
『本日は僕と楽しい時間を過ごしていただきありがとうございます。行ってらっしゃいませ、ご主人様。またお会いできる日を楽しみにしております』
「ご主人様がた、また会いましょう!」
またね~!
また来るぞ!
……心配で気になる
この後の報告しろよ!
また来るねー!
行ってきまーす!
***
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