第81話 2度目の凸待ち配信 #3

ライム、というよりも来夢はさっきプログラミングをするから自分の部屋に戻ったはず。


なのになぜかライムとして、僕に凸してきた。


「お久しぶりですねライムさま。今日は来ていただきありがとうございます」

『おめでたい日だからね。作業をやめて凸にきました』

「わざわざありがとうございます!」


別に凸しないで、普通に言ってくれればいいのに……。


そうすれば作業ができただろうに。



ライム、二度目の登場!

コラボ配信以来か?

始めてライムの声聞きました!

ライムが来るなんて……



『私の方は時間ないし、聞きたいことがあるならいくらでも聞いていいよ』

「ではさっそく『ヤマトに言ってほしいセリフ』は何にかありますか?」

『一つだけ?』

「一つだけです」


ライムさまが僕に言ってほしいセリフ。


……良さそうなのが全然思いつかない。


『じゃあせっかくだし、ご主人様たちに向けて「僕のこと見てくれなきゃ、やだぁ」って可愛らしくいってください』

「……ライムさまに、じゃなくていいんですか?」

『うん。ヤマトがここまで人気なのはご主人様たちのおかげだから。この権利だけはご主人様たちにあげる』



……女神、

俺たちのことを考えてくれている……

流石は歌姫!?

ライムさま、優しい!



「分かりました。ではライムさまのご所望の通りに。『ご主人様ぁ、僕のこと見てくれなきゃめっ、ですよ。じゃないと僕、泣いちゃいますぅ』」

『……ご主人様がた、どうですか?』



いい、

昇天しそう

神ぃ

耳が壊れるくらい最高!



「好評で何よりです!」

『ヤマトってASMR配信ってしないの?』

「ASMRですか……」



確かに

ヤマトの配信でASMRってまだない

ヤマトの声だと需要在りそうなのに

ぜひヤマト様のASMR聞いてみたいです!



ASMR。

確か変に長い英語の略称で、人が聴覚や視覚で感じる、心地よい、脳がゾワゾワするといった反応やかんかくのことだったはず。


僕たちVtuberの場合は聴覚に対してだけどね。


「いずれはすると思いますけど、今はまだしないですね」

『それはどうして?』

「ASMR用のマイクもまだ買ってないって言うのもありますけど、今はやりたいことが多くてできないって感じですね」

『……なるほどね。まぁ私はヤマトのASMRにはあんまり興味ないからどっちでもいいんだけどね』


でしょうね!


来夢にはたまに耳掃除のときに耳元でやさしく囁いたりしてあげている。

つまりリアルでASMRをしてあげているということ。


今更配信でのASMRを聞きたいと思うはずがない。


それなのにわざわざ聞くなんてどうしたんだろう。


「次に何か『ヤマトに物申したいこと』はありますか?」

『では一つ。そろそろ歌枠配信したらどう? 初配信から一か月たつけどいまだにしてないよね』

「そういえばしてないですね」


まぁ理由はいくつかあるけど、一番はやっぱり著作権の問題かな。


宝命生みたいな著作権フリーのゲームなら気にせずにゲーム出来るけど、著作権が厳しいゲームや歌に関しては著作権をしっかり見ないといけないんだよね。


一度著作権のことを調べたことあるけど、難しい単語が多すぎて全く理解できなかったんだよね。


それが原因で歌枠に関しては僕も慎重にならざるを得ない。


『もしかしてだけど、気にしてるのって著作権?』

「よくわかりましたね。一度著作権について見たことあるんですけど全く理解できなくて、だから諦めました」



……あ、そういうこと。

ああ、ヤマトならありえそう

著作権は慎重にならないといけないからな

無駄に文章も長いし、バカだと理解できなさそう。



ご主人様たちも理解してくれたみたい。


『だったら私の歌使えば?』

「え、いいんですか?」

『全然いいよ。ついでに他の曲に対しての申請もしといてあげる』

「いや、そこまでは……」

『気にしなくていいから。別にヤマトのためにやってるわけじゃないし』

「ではお言葉に甘えて」


やっぱり、今日のライムさま少しおかしい。


「ライムさまのお言葉に甘え、近いうちに歌枠配信をします! では次に『もしも、ヤマトと1日入れ替われるとしたら何がしたい?』ですか」

『ヤマトの生活を一日体験する。そしてそれをご主人様たちに発信する』

「僕の個人情報が洩れるんですけど!?」

『別にいいでしょ。どうせ学校がないから一日中ダラダラしてるんじゃない?』

「どうして知ってるんですか!?」



マジか!

ゴロゴロしてんだ……

羨ましぃ!

まさしくニート



来夢は平日学校のはず!


何で僕がやることない日はほとんどの時間ゴロゴロしてるの知ってるの!?

もしかして、リビングにカメラが仕込まれているとか!?


『え、本当にごろごろしてるんだ』

「ち、ちゃいますよ! やることを全部やってからゴロゴロしてます!」

『へー、そうなんだー』


し、信じてない!


「つ、次に『配信やオフでやってほしいこと』は何かありますか!」

『話そらしたね。配信でやったほしいことでもいいんだよね?』

「はい!」

『じゃあ、リアルギャルゲーしてほしい』

「なんですか、それ」

『ヒロインはヤマトで、主人公はご主人様たち。Mytubeのアンケート機能を使って選択しを作って回答の多かった方の選択肢でストーリーが進んでいく、って感じの配信』



え、普通に面白そう。

ヤマトを攻略するゲームか……

視聴者参加型に少し似てる?

これまで誰もやったことのない企画!



……普通に面白そう。

それに、その企画は人気が出ればシリーズ化することもできそうな気がする。


さらに言うなら、この企画をするのは普通の配信じゃなくて記念配信の方がいい!


これを作るのは大変そうだけど、サクラ様やカナママに力を借りれば再現できそう!



夢見サクラ

その企画をする際はぜひ私にシナリオをさせてください!

¥5,000


花村カナ

やる時は言ってね。背景作っとくから~

¥12,000


現役作家のシナリオ!

それは絶対に面白くなるやつ!

ライム、ナイス提案!

普通に面白そうなんだよね。



サクラ様もカナママも協力的。


よし、次の記念配信はそれにしよう!


「ライムさま、ナイスな提案ありがとうございます。サクラ様にカナママ、その時が来たらよろしくお願いします」

『別に、面白そうだから提案しただけ。それにこれなら視聴者も楽しむことができるし』

「なるほど」


ライムさまの考えがようやくわかった。


今日のライムさまは自分のために凸しに来てない。


本来なら自分のために使うような会話デッキなのに、全部ご主人様のために使っている。

これはたぶん、ヤマトの妹としてのご主人様たちへの感謝の一つ。


本来は僕がしないといけないのに、それをライムさまが補ってくれている。


うん。明日は来夢のためにいろいろしてあげよう。


「では最後に『お風呂で体を洗う時何処から洗いますか(頭意外)』お願いします」

『逆に私から一つ聞いてもいいですか?』

「ん? どうぞ」

『ヤマトはカナママ先生と義姉弟ですよね?』

「そうですよ」

『じゃあ、いつまでカナママ先生、もしくは妹さんと一緒にお風呂に入ってましたか?』

「はぁ!?」



え、最高なんだけど

いつまで入ってたの?

普通に気になるんだけど!

ライム、ナイス!



一体何聞いてんの!?

来夢が一番知ってるよね!


これもご主人様のため?

だとしたら大成功だよ!


今僕のコメント欄はものすごい盛り上がり見せてるからね!



花村カナ

私は全然教えていいよ~

¥10,000


カナママの許可出ました!

うおおおぉぉぉぉ!!

さぁ、ヤマト、教えなさい!



なぜかカナママも許可出しちゃってるし!


ああ、もう!

こんなに盛り上がったら教えるしかないじゃん!


『さぁ、ヤマト、早く教えて』

「……最後に一緒に入ったのは、今年の1月1日です」



……え、

つい最近じゃね?

小学生辺りを想像してた

ガチか……



「家のルールなんですよ。新年で集まったときは家族でお風呂に入るっていう。当然水着は来てますよ! じゃなきゃ兄さまのことが嫌いな妹が一緒に入るなんてありえませんから!」


もし、水着無しってなったらまず来夢は一緒に入らないし、義姉さまに関しては僕や兄さまは大丈夫かもしれないけど、父さまに関してはさすがにアウト。


まぁ、今年の1月1日は少し違ったけど。



なるほど、

それなら普通か。

なーんだ。

水着なら俺でも親とは入れるわ。



『え、でも撫子さんの話だと今年はいち……何某さんが爆睡してカナママとヤマトと妹さんの3人で入られ、その時は裸だったらしいですね』

「何でそれ言っちゃうんですか!?」


そうなんだよね。

今年は兄さまが酔いつぶれちゃったせいで、一緒にお風呂には入らなかった。


父さまもいないから、義姉さまも来夢も水着を着る必要がなくなり、一緒に裸でお風呂に入った。


せっかく騙しとおせると思ったのに!



まじか!?

やることやってんだな!

危うく騙されるところだったぜ……。

ああ、ヤマト様のお体、一度は拝見したい!



『あ、私はやらないといけないことがあるので失礼します。ご主人様がた、今月中にヤマトの新曲が出る予定ですのでお楽しみに。では』


ライムさまはそのまま去っていった。


新曲にコメント欄は盛り上がりを見せたけど、僕はそれどころではない。


時間的には残り15分だけど、もう終わろうかな。


そう思っていた矢先、再び誰かが通話に入ってきた。


って、この人って!


「そ、それでは挨拶お願いします」

『ヤマトちゃん。50万人おめでとう! 世界の人間は私の子供! 愛する子供のためなら私は何でもなれる。それはなぜ? 私はみんなのママだから! みんなの愛するあなたの悪魔ママ! 真魔キュア、ここに参上!!』


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