第79話 2度目の凸待ち配信 #1


「声の調子も問題なし。サムネの方もばっちり。通話アプリの方も準備できてる。ご主人様もどんどん見に来てくれている。うん、いつでも行けるね。義姉さんにモアレの許可はもらったから先に話しちゃお」


木曜日の夜。


記念配信が始まる少し前。

すでに待機人数は2万人を超えていた。


準備の方に何も抜かりはないよね。


体の状態も機材の方もばっちり。


デッキの順番も決まったし、あとはその時が来るのを待つだけ!


時間は21時55分。

配信開始予定時間は22時。


つまりあと五分で配信が開始になる。


「お兄ちゃん。私作業があるから部屋にいってるね」

「うん。頑張ってね」


もう1度深呼吸をして台本を見直す。


うん。

何も問題ない!


あとはちゃんと凸してくれるかどうか……。


……よし、配信スタート!



***


「ご主人様、いらっしゃいませ。あなたの執事、神無月ヤマトです。今日も僕の配信を見に来てくれてありがとうございます」



待ってた!

ただいま!

俺の嫁!!

私の旦那よ!

ヤマトは嫁でも旦那でもねぇよ

そうだ、みんなの執事だ!



お、新しいバージョン。

なかなか面白いけど、結局みんなの執事になっちゃうんだよね。


まぁ実際にそうだから仕方ないか。


「今日の朝に告知したように、今日は僕の50万人突破を祝う記念配信です。僕の配信初の記念配信になります」



確かに……

何で記念配信しなかったんだろう……

企業勢はともかく、個人勢で50万人が最初の記念配信は珍しい



「まぁ理由はいろいろありますが、一番は僕の配信日と、登録者の上昇が間に合ってなかったからですかね。今までは土曜日だけ配信してましたのけど、そのどれもが予定で埋まっていたので……」



……ああ、

初配信にコラボ配信、罰ゲーム

そんでそこからゴールデンウィーク

確かに暇ないな



「今週と来週の土曜日も埋まっていたので、急遽今日にしたんです。じゃないとやる暇ないかもしれなかったので」



今週が案件

来週が新衣装お披露目

……確かに余裕ないな



「ですので、チャンネル登録してくださった皆様。これまで記念配信ができなくて申し訳ございませんでした。今日は僕の初記念配信、楽しんでいったください!」



気にすんな!

俺たちはヤマトのためなら我慢できる!

全力で楽しむぞ!



「それでは、朝にも言った通り凸待ちをしたいと思います! 会話デッキはこちら!」


会話デッキを取り出し配信画面に乗せる。


『ヤマトに言ってほしいセリフ』

『ヤマトに物申したいこと』

『もしも、ヤマトと1日入れ替われるとしたら何がしたい?』

『配信やオフでやってほしいこと』

『お風呂で体を洗う時何処から洗いますか(頭意外)』


結局、いくら考えてもこの順番が妥当かなって感じになった。


最初に振れやすい話、真ん中にもしも枠、そして最後に変態枠というみんなが盛り上がる話題。


「因みに僕は一番最初に左腕から体を洗います!」



マジか!

それは脇から!?

ここに犯罪者がいます!

ギリギリ攻めすぎだろ



「朝に告知した通り、今日の凸待ちは1時間です。これ以上は伸ばしませんので凸したい方はなるべく早めに来てください! それではスタート!」


画面の右上にタイマーを持ってきて、スタートさせる。


と同時に、早速誰かが通話に入ってきてくれた。


「早速一人目が来てくださりました。挨拶の方をお願いします」

『はい! ヤマト様50万人突破おめでとうございます! 女優をしています飛鷹凛音です! よろしくね!』

「女優の凛音さまが来てくれました!」


ここで立ち絵の用意!

前回は誰が来るかわからなかったから立ち絵が準備できなかったけど、今回は来てくれそうな人をピックアップしていたので準備万端!


「お久しぶりですね凛音さま」

『うん。ヤマト様とまた話せて嬉しいです。ゴールデンウィーク中に合えればよかったんですけど、撮影や収録があったのでなかなか外を出歩けなくて……』

「いつかオフで会いたいですね」

『私もです』



……なんかいい雰囲気

ヤマ凛?

雰囲気的に凛ヤマじゃね?

ヤマト様は誰のものでもありません!



「それでは早速いいですか?」

『はい!』

「では初めに、『ヤマトに言ってほしいセリフ』はありませんか?」

『「凛音、世界のだれよりもお前を愛してる」でお願いします』

「はやっ!?」



即答w

完全に私利私欲!

うらやま~

これ完全にガチ恋勢じゃん!



まぁ、なんとなく予想はできていたけど、直球でこられると恥ずかしい。

でも、来てくださった凛音さまのお願い。

僕が叶えて差し上げます!


「『俺の可愛い凛音。この世のだれよりもお前のことを愛してるよ。チュッ』」

『私もです!!』



アレンジ入ってて草

いいな~

ああいう風に推しに言われてみたい!

ヤマトだからこそできる芸当!



僕のアレンジはなかなかの好評。

アドリブだから入れて変にならないか心配だったけど、これなら問題なさそう。


「では次に『ヤマトに物申したいこと』何かあったらお願いします」

『あります! どうしても言いたいことが一つ!』

「ど、どうぞ……」


僕、凛音さまに何か言われるようなことした覚えないんだけどな~。



なんだ?

気になる。

何かしたのかヤマト!



『あの、少し女性と一緒に寝過ぎでは!?』

「はい!?」

『私、ヤマト様の配信毎回見てますけど、オフコラボの時女性と寝過ぎてると思うんです!』

「そ、そんなことないと思います!」



いや、あるだろ。

あるね。

有罪

言い逃れできないね。

ガーデンランドの2名ね。



『ご主人さま方も言っています! 夢見サクラさんとレベッカ・カタストロフィーさんと一緒に寝てますよね! 証拠は親衛隊で上がってますよ!』

「いや、サクラ様とは一緒に寝てません!!」

『ということはレベッカさんとは一緒に寝たんですね?』

「……はい」



マジか!?

でも、レベッカはヤマトのことをどちらでもないと思ってるから問題ないんじゃ……

正確にはメイドね



『コメント欄にもありましたけど、ヤマト様が男の子派からしたら問題大ありですよ!』

「あの時は疲れてたので……僕とオフした時に抱き枕になってあげますので、今回は許してください」

『私、それで落ちる女じゃないですよ! まぁ許しますけど』



チョロッ!

簡単に落ちてるw

流石にヤマトからその提案されたら断れん。

凛音が落ちるのもわかるわ~



「というよりか、凛音さま親衛隊だったんですか?」

『はい。ヤマト様親衛隊001225です』

「あれ、凛音さまにしてはずいぶん後ろですね。てっきり一桁に入ってるものかと……」



確かに。

凛音なら一桁狙いそうだけど。

001225ってなんか普通過ぎる。



『気づきませんか? 001225の1225という数字に』

「……? あっ!? 僕の誕生日です!」



え、あっ!?

確かに!

ヤマト、初配信の時にサンタさんに命を授かったて言ってた!

ヤマトの誕生日は12月25日

え、すっご……



『私、一番になれなかった瞬間この数字を狙っていたので、狙い通りでよかったです』


凛音さまのこの信念。

凄すぎる……。


「それでは次ですね。『もしも、ヤマトと1日入れ替われるとしたら何がしたい?』ですね。何かありますか?」

『え、それって才能とかもですよね?』

「そうですね」

『だったら、私は1日中ヤマトの体で演技をしますね。特に、これまで私が演じることができないと思った役をします』

「流石女優ですね。僕も凛音さまと入れ替わったら大人の女性の役をやってみたいと思ってました。凛音さま大人の女性な感じがしますから」

『そういわれると照れますね』



……なんか普通

もっと過激なの期待してた

特に凛音とか私利私欲にまみれてそうだったのに

ヤマトは健全だから問題ないね。



『コメント見えてますよ。それは私だってヤマト様と入れ替われたら一番やりたいことは他にありますけど、せっかくなら私が絶対にできないことをやってみたいじゃないですか』

「……それ、僕の前で言いますか?」

『あ』

「まぁ、そういう意見を楽しみにしていた僕もいるんでいいですけどね」


でも、今後オフコラボをする機会があったら、気を付けないとね。


「今回は制限時間がありますからね。サクサクと生きます『配信やオフでやってほしいこと』はありますか?」

『そうですね。配信中に飛鷹凛音のいいところを毎回1個行ってほしいです』

「却下で。因みに今回いい意見が出たら採用するつもりなので、この後凸してくれる人はしっかり考えてくださいね」

『え!? やり直しさせてください!』

「1人1回迄なのでダメです。因みにこれがオフだった場合は採用してたかもしれませんね」

『あー! 私の馬鹿!』



マジか……

流石に配信がダメだろ

私利私欲を出し過ぎたな。

これ、凸する人は考えるだろうなー



「では最後に『お風呂で体を洗う時何処から洗いますか(頭意外)』」

『胸、ですね。そこから洗っていきます』



何のためらいもなく……

マジか!?

普通躊躇うだろ!

痴女か? 痴女なのか!?



「い、いいんですか? これ配信中ですけど、ご主人様たちに聞こえてしまいますよ」

『ヤマト様に教えるためなら聞かれてもいいです。問題ありません!』

「大ありです! ということで、一人目は飛鷹凛音さまでした! ありがとうございます」

『ヤマト様ー! またねー!』


そのまま凛音さまは通話から抜けていった。


まさか何のためらいもなく言うなんて。

今後は変態枠、言いやすいやつにしていかないと!


「あ、すぐに次の方がこられました。自己紹介の方をお願いします」

『ん。50万人突破おめでとう。漫画を描いてます、一ギャイです。ご主人様たちよろしく』

「2人目は漫画家のギャイ先生が来てくれました!」



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