第78話 朝活!

「……」

「ん? どうした来夢。牛丼を見つめて」

「お兄ちゃん。ここ最近肉多くない?」

「え、そうか?」

「そうだよ!? 一昨日は豚丼、昨日は野菜炒め、今日は牛丼! お肉だけならともかく、1週間で丼ものが2回ってどうなってるの!」


来夢の言いたいこともなんとなくわかる。


よくよく考えると、ここ最近お肉ばかり食べている気がするって言うよりも、お肉しか食べていない。


原因はもちろん月曜日に買った600円のお肉詰め合わせ。

思った以上にたくさんの種類があって、1日2日で食べきることができない量だというのを、火曜日に投稿した動画を撮り終えた後に気づいてしまった。


あの時はあまりの安さにどうかしてたけど、流石にお肉ばかりって言うのも飽きるよね。


「こんなにお肉買ってるけど、お金の方は大丈夫だったの?」

「うん。月曜日の朝にタイムセールやってたから。たくさん詰められたお肉を600円で買ったから問題ないよ!」

「……そのお肉ってあとどれくらい残ってるの?」

「あと半分くらいかな?」

「……」


つまりあと数日はお肉生活が続くってことになる。


来夢には申し訳ないけど我慢してもらうしかない。


「お兄ちゃん。明日……は配信があるから私が料理することになるんだった。じゃあ明後日の晩御飯はおさかなにして! それで許すから!」

「え、明日僕が買い物に行けばすむ話じゃ……」

「お兄ちゃん、明日は記念配信だよね。しっかりと台本や何をやるかは決まってるの?」

「一応凸待ちをやろうかと……」

「台本は?」

「今回はいらないかなと思う」

「会話デッキは?」

「できてません」

「凸してくれた人となに話すか決まってるの?」

「それもまだ……」


言われて見て思ったけど、僕って何の準備もできてなかったんだ。


月曜日は一日中動画の撮影してたし、火曜日は動画の編集と次の動画の企画。

今日に関しては、月曜日届いたゴールデンウィーク中に買った商品を動画用に撮影してたし……。


全然明日の準備してない!


「はぁ、あとのことはやっとくから配信の会話デッキを考えたりして! あと、今回はリスナーさんに意見を求めるのは無し、完全に自分で考えた会話デッキにしてね」

「はーい」


なんで来夢に配信の会話デッキを決められるのかはわからないけど、あんまり逆らわない方がよさそう。


「でもいいの? 来夢はプログラミングや新曲もあるんでしょ?」

「いいの。私は学校でもいろいろとやってるし、曲は空いてる時間に作れるから。プログラミングももう少し時間があるしね」


ちゃんと勉強しようよ、とはなかなかな言えない。

だって勉強しなくても、来夢は僕よりも頭がいいから。


「それじゃあお言葉に甘えて、いろいろと準備しとくね」

「楽しみにしてる」


リビングを出てから、僕の部屋に向かう。


「さてと、今回は前回と違って僕に友達がたくさんできたってことなんだよね」


前回は最初の一時間、散々だったからな~。


前日に悪夢は見るし、ほとんど正夢状態にもなった。

しかもその時はデビューした手で、義姉さん伝手に夢見サクラさん、母さん伝手に飛鷹凛音さん、父さん伝手に三条ヶ原楓さんの3人が来てくれたけど、この前のゴールデンウィーク期間で僕の通話アプリには人が一気に増えた。


最近だとなぜか竜田ラノさんまで登録されていた。


「前回の会話デッキは確か……『ヤマトの第一印象』『ヤマトの性別』『コラボするなら何がしたい』『パンツの色』に『宣伝』。改めて思い出してみると、『パンツの色』が際立ってるなー」


他の質問は普通なのに、パンツの色が強すぎる。


でもこの質問の陰でご主人様がたは盛り上がってくれたし、こういう枠も必要なのかも。


だけど、この質問は前回もしたし今回は無しで行くとして、こういう枠に当てはまりそうな質問は……『お風呂で体を洗う時何処から洗いますか』でいいかな。


あ、でも頭って答えそうな人いそうだから頭意外にしとこ。


少し変態チックだけど、ご主人様の中にはこういうのを聞いて興奮する人もいそう。


あ、でもこの質問をするんだったら、先に僕も答えた方がいいから、少し恥ずかしいけど凸待ち前にみんなに教えとこうかな。


「ひとまず変態枠はこれでいいとして、『第一印象』や『性別』とかはいらないよね。今回来る人のほとんどはそのことを聞いているし」


他の質問は時間が経つにつれて頭に浮かんできそうだし、今はこれでいいかな。


「いや、せっかくなら僕の特技を最大限に生かしたことができたらいいよね」


となると、これは入れてみようかな。

凸してくれる人がどんなことを思ってるのか気になるし。


『ヤマトに言ってほしいセリフ』っと。


よくお願いされることはあったけど、僕の方から何かしてほしいかって聞いたことなかったからね。


この機会だしやってみようかな。


これで2つ。

最低でもあと三つほしいかな。


せっかくだし『もしも』枠も入れてみよう!

となると……やっぱり一番気になるのは『もしも、ヤマトと1日入れ替われるとしたら何がしたい?』がいいかな。

これは面白そう!


これで3つ目!


で、これは僕の完全な興味だけど『ヤマトに物申したいこと』


今まで皆さん、僕に対してよくしてくれてるけど、直してほしいことや、逆にやってほしいことがあるかもしれない。


ただ単に僕の興味本位だけど、これが4つ目でいいよね。


それで最後は言ってほしいがあるんだし、せっかくだから『配信やオフでやってほしいこと』を聞いてみようかな。


面白そうなのがあれば、やってみてもいいかもしれないし。


のんびり考えるつもりだったけど、今日中に5個決まったのは幸いかな。


とりあえず、聞く順番も決めていかないといけないけど、時間も遅いしそれは明日でもいいよね。


「まぁ、『お風呂で体を洗う時何処から洗いますか(頭意外)』に関しては最後の方にした方が盛り上がりそう」


まぁ考えるのはここまでにして、寝るときに凸待ちのことは考えないようにしよ。


前回みたいな悪夢は見たくないし、正夢にしたくもないからね。



~~~~~~~~~~


「……」


目を開けるといつの間に寝ていたのか、すでに外は明るくなっていた。


「おはようお兄ちゃん。どうしたの? ボーっとして」

「あ、いや。いつのまにか寝ていたんだなーって」

「あっそ、言っとくけどもう7時回りそうだからね! 私学校行くから、しっかり会話デッキ考えててね」

「はーい」


うん。

今日は変な夢見なかったし、早寝したおかげで体は全然元気!


前回のような悲惨な結果にはならなさそう!


とはいえ、会話デッキか。


もうできてはいるんだけどね、起きて頭がさえた今考えても、今回のデッキはあれで問題ない感じがするし、そうなるとすることがなくなっちゃったんだけど。


「……うーん。せっかくだししてみようかな。朝活配信」


今考えついただけだけど、せっかくだしやってみた方がいい気がする。

というよりも、今思い出してみると僕、配信の告知何もしてないんだよね……。


昨日はトリッターにあげる前に凸待ちのことを考えないようにして寝てたし、記念配信するとは言ってたけど、凸待ちするとは言ってなかったから。


そうと決まれば急いで行動に移そう!


パソコンを起動させて、来夢の作ったアプリを起動させ、僕の顔をスキャンさせてモデルを出す。

顔は洗ってないけど、不思議と目が覚めてるし声も問題なく出る。


ゲリラ配信になっちゃうけど、何人かは来てくれるかな?


サムネを作るときの素材となる無地のサムネを張り出して、配信スタートボタンを押す。



***


『ご主人様、おはようございます。あなたの執事、神無月ヤマトです。今日は僕の朝活配信に来ていただきありがとうございます』



なんだなんだ!?

ヤマトがこの時間に配信って珍しい!

今日学校が休みでよかった……

これってゲリラ配信?



『告知なしに配信してしまい申し訳ございません。今回の朝活では簡単な告知と雑談をして終わりにしますので、僕と素敵なお時間をお過ごしになりましょう。もちろん、仕事や学校を優先でお願いしますね。その時は僕が行ってらっしゃいの挨拶をしてあげます!』


やっぱり朝のゲリラ配信ということもあって、来てくれてる人は夜に比べれば全然いない。

何なら3桁を想像していただけに1000人を超えているだけでも驚いてしまう。


これならコメントを随時見ることができそう!



僕学校に行ってきます!

今から仕事に行ってくる!

ヤマト、お前のために稼いでくるぜっ!

ああ、学校行きたくないけど、ヤマト様の行ってらっしゃいのために行ってきます!



『皆様、行ってらっしゃいませ。今日の夜は僕の配信がありますので、それまでには帰ってきてくださいね。あ・な・た』



うおぉぉぉぉぉ!!

ヤマト主婦バージョン!

マジ神声!

耳が!? 耳がぁぁ!?



なかなかにいい反響。

ここまで反応してくれると、している方もうれしくなるなー。


さてと、そろそろ本題に入らないと。


『それでは、最初の方に告知をさせていただきたいと思います。今日の記念配信に何をするかが決まりました。今日やるのは……『凸待ち』!!』



えっ!?

まさかの……!?

前回からそれほど時間たってないよね?

これまたどうして?



『理由はいくつかありますけど、一番の理由は前回の凸待ちの時にいろいろあったからですね』



……ああ

確かに、

ぎりぎりだった。



『ぎりぎりなんてものじゃありません。実際、本当は予定の時間すぎてましたからね。ですので今回は凸待ちをスタートしてからきっちり1時間で終わらせるつもりです。ゴールデンウィークで友達も増えたので多分前回のような悲惨なことは起きないと思います……多分』



……自信なさすぎるw

今回の凸待ちはトラウマ克服の意味もあるのかも……

前回があれなだけにね



『あはは、ということで次に会話デッキを先に公開したいと思います。今回は「ヤマトに言ってほしいセリフ」「ヤマトに物申したいこと」「もしも、ヤマトと1日入れ替われるとしたら何がしたい?」「配信やオフでやってほしいこと」。そして、前回は『パンツの色』でしたが、今回は変態枠として「お風呂で体を洗う時何処から洗いますか(頭以外)」を入れました! 順番はまだ決まっていませんが配信までに決めますのでお楽しみに~』



おお!

どれも気になる!

変態枠、めっちゃ気になる!

ヤマト様はどこから体を洗われますか!?



『僕が最初に洗う場所ですか? それは……配信までのお楽しみです! 知りたかったら配信に来てくださいね! では、告知も終わりましたし、雑談に入りたいと思います』


***


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