第76話 料理動画
『いい感じに焼きあがってますね。それじゃあスタッフの皆さんに一枚ずつ食べてもらいます』
『はいどうぞ、お味の方はどうですか?』
【美味しいです】
『マネージャーさんもどうぞ!』
クッキーを渡すと、渡されたマネージャーさんは画面内でグッドサインを見せる。
【最高です! さすが撫子ママ!】
『ありがとうございます! 今日作ったクッキーの材料や手順は概要欄やトリッターの方に載っているので、ぜひ参考にしてくださいね。それじゃあまたお会いしましょ~。ばいばーい』
***
と、ここで母さんの動画は終わった。
母さんの料理動画を調べると最初に出てきたのはクッキーを作る動画で、視聴回数もこれがダントツで多かったから見てみたけど、作っているのを見て普通に美味しそうだった。
何よりも、編集がほわほわした感じで、食べた人の感想も編集で書かれている。
クッキーも普通に可愛い。
「今日の晩御飯は一応ハンバーグのつもりだけど……ごく普通のハンバーグだから動画で出す必要あるかな?」
あと、この動画では母さんは声出ししてるけど、僕が動画を撮るときは声出ししない方がいいよね。
動画をとっているときに声を出しちゃうと、音質が少しおかしくなっちゃうし、声を出すのはあくまでも『
……よし!
料理動画を撮るときは最初普通に取ろう。
声が入れば後で編集すれば問題ないよね。
で、母さんの動画ではスタッフさんやマネージャーさんに感想を求めてたけど、僕の場合は来夢に感想を求めて、その時の感想をテロップで編集すれば来夢の声も入らない。
……いや、来夢の声は乗せた方がご主人様も喜びそうだし、ここはテロップじゃなくも問題ないかな。
「問題はハンバーグだけど作り方は普通でも形を変えれば問題ないよね。……そうと決まれば早速取り掛かろう!」
キッチンに向かい、冷凍庫に入れていたお肉を自然解凍させる。
その間にお風呂の準備と、動画の時に出す声の台本下書き。
……台本書いてて思ったけど、料理中の台本書く必要ないかも。
料理中は声を出しながら、料理をしてそれを聞いた後にカメラの前で同じ声を出す。
これをすれば詳しいことまで書かなくても大丈夫だし、僕の演技があれば台本を書かなくても大丈夫なはず!
特に声当ての場合はリアリティーが必要になるから台本を読むとその感じがなくなっちゃうかもしれないしね。
そうと決まればお風呂にしよう!
お風呂に入るにはいい時間かもしれないし、ご飯を食べた後に編集しないといけないからお風呂に入る時間もないかもしれない。
入れるうちにはいっといた方がいいに決まってる。
それに、お昼に入るお風呂は日差しが入り込んで、夜に入るのと違った感覚があるからね。
「来夢、お兄ちゃんお風呂に入るけど、宿題で何か手伝えるものない?」
「問題ないよ。あと少しで終わるから。……あ、これ新曲の歌詞だから渡しとくね」
「ありがとう」
来夢から歌詞を受け取り、部屋に置いてからお風呂に入る。
やっぱり、日差しが差し込むお風呂は格別で気持ちいい。
少し長風呂してから上がりキッチンに行くと、いい感じでお肉が解凍されている。
長風呂をし過ぎたせいで、時間的にもう4時を回ってるし、やることないから晩御飯作り始めちゃお。
***
『お帰りなさいませ、ご主人様。本日は僕の配信に来てくださりありがとうございます。あなたの執事、神無月ヤマトです』
『今日の動画は、僕の料理動画になります。今日の料理は、『ハンバーグ』!』
『我が家のハンバーグをお見せしたいと思います』
動画の画面には材料が写り、その横に僕が写る。
『材料はひき肉に玉ねぎ、卵と牛乳に塩コショウになります』
『ソースにはケチャップにウイスターソースと醤油を使います』
材料の画面から、ハンバーグの制作動画に。
『初めに玉ねぎをみじん切りにしますが、皆様はどのようにみじん切りしますか? 我が家ではこの、みじん切り器を使います』
『玉ねぎの皮をむいた後に、みじん切り器に入れやすいように玉ねぎを切ります』
『切った玉ねぎをみじん切り器に入れて蓋をして、ひもを引っ張るだけ。すると中にある刃が玉ねぎを切り刻んでいき、簡単にみじん切りにすることができます』
『次に、お肉、玉ねぎ、卵、塩コショウ、牛乳の順でボールに入れてから、力強くこねます!』
ボールの中に、、お肉、玉ねぎ、卵、塩コショウ、牛乳を入れて右手でしっかりとお肉をこねていく。
少しずつお肉は一塊になっていき、一つの大きな肉タネができた。
『良い感じにタネが完成したら、次はついに焼の行程に移ります。ここで形なのですが、いつもなら普通の円形にしますけど、今日はご主人様にもお見せしますので、いろいろな形を作っていきたいと思います』
『タネを取り出し最初に空気を抜いてから、まずは普通に円形、次に耳を付けたくまの形にハートの形に変えてから計6つ焼いていきます!』
『焼いている間にお皿と野菜の準備をします。キャベツを千切りにして水につけてから、お皿に盛りつけ、その横にトマトを置いて、これで野菜の方は完成です。ハンバーグの方は……いい感じに焼けてますね! 次に裏返してまた数分待ちます』
【10分後】
『うん。いい感じに焼けています。焦げも少しついていておいしそうですね。これをお皿に盛りつけた後に、ソースを作っていきたいと思います。フライパンに残った油を少し取り除いてからケチャップ、ウイスターソース、醤油を入れてから、火を通して混ぜます』
『しばらく混ぜた後にソースの味見を、この時にソースが熱いかもしれないので下をやけどしないように注してくださいね』
『いい味わいになったら、ハンバーグの上にソースをかけて……完成です!』
『炊きあがったご飯をお椀に入れて食卓に囲んでから、妹と一緒に実食していきたいと思います』
『いただきます!』
『お味はどうでしょうか?』
『とてもおいしいよ! 今日はハンバーグに様々な形があって面白い!』
『好評をもらえたようでよかったです!』
【妹はハンバーグが大好きなので、僕のも2個ほど取られちゃいました……】
『作り方と必要な材料は概要欄やトリッターの方にのせていますので、ぜひ参考にしてください』
『ご主人様に美味しいハンバーグが届きますように』
『おいしそうと思えたらぜひチャンネル登録、高評価の方をよろしくお願いします。それではお召し上がりをご主人様。神無月ヤマトでした』
***
「……うん。なかなかいい出来じゃないかな? 来夢はどう思う?」
「問題ないんじゃない? ハンバーグの件もありえそうなテロップで書いてあるし」
僕と来夢は動画の最終チャックをしていた。
というのも、来夢に声入りの確認をしたところ、おかしなことを言っていないかのチャックを一緒にするように言われたのだ。
僕の方は問題なかったし、二重チェックできるならそれに越したことはないからよかった。
でもさらにハンバーグを2個も取られるなんて思いもしなかったから、そこだけは計算外。
来夢がおいしそうに食べてくれてたからよかったけど。
「時間も10分弱で動画的に尺の長さもちょうどいいし、時間飛ばしの時のテロップの入れと、効果音も合ってる。これはさすがお兄ちゃんというしかないね」
「そんなに褒めても何も出ないよ」
褒められるのは悪くない。
「それじゃああとはこれを投稿するだけだけど、何時に投稿するの? もう22時回ってるけど」
「動画の投稿は毎回この時間にしてたからね。日曜日は今日が初めてだし、そのまま投稿しようかなって思ってる」
「私はそれでいいと思うよ。時間ぴったりに投稿しちゃうと、その時間が今後の動画投稿時間みたいに感じちゃうしね」
「それじゃあ投稿しちゃうね」
そのまま動画を投稿する。
投稿して5分経った頃にはすでに1000再生を超え、再生数はどんどん増えていく。
と同時に高評価もつけられる。
「それじゃあ私はもう寝るから」
「あれ? いつもはもっと遅くなかった?」
「それはゴールデンウィークの時のみね。私は明日から学校なんだから、生活習慣を元に戻さないと。お兄ちゃんも早く寝るようにね」
「……それもそうだね。じゃあ僕も寝るから。お休み」
「おやすみなさい」
明日から再びいつも通りの日常。
僕も頑張って配信していかないとね!
——————————
とある掲示板
神無月ヤマトについて語ろう
702:名無し
ヤマトの動画、久しぶりに感じる。
703:名無し
>>702
実際1週間ぶりくらいじゃない?
704:名無し
ヤマト初の料理動画!
オフコラボで手料理はあったけど、あの時は途中から配信した感じだから、しっかりと作るのを見るのは今回が初めて!
705:名無し
ハンバーグだったけど普通に美味しそうだった!
706:名無し
>>705
時間が悪いって。寝る前だったのに腹が減りすぎて全然ねれん!
707:名無し
>>706
わっかる~
708:名無し
妹ちゃんの声が載ってて最高だった!
709:名無し
>>708
それな!
妹ちゃんはハンバーグが大好き! って新情報も公開されたし……。
710:名無し
昼にトリッターでトリートされてたけど、今後の動画投稿は火曜日と日曜日になるらしい。配信に関しては木曜と土曜で、今週の木曜日は50万人突破記念配信するみたい!
711:名無し
>>710
何気に記念配信って初めてじゃね?
712:名無し
>>711
今まで土曜日のみだったし、予定で埋まってたからね。でも50万人越えしたら流石に記念配信しないとやばいでしょ……
713:名無し
>>702
記念配信なにすんの?
714:名無し
>>713
まだ、公表されてないから分からん。
715:名無し
>>714
ヤマト初の記念配信。そろそろ歌枠来るか?
716:名無し
>>715
何気にこれまで歌枠もなかったから、そろそろ来るかもね!
717:名無し
結局のところ俺たちには待つことしかできない!
718:名無し
我々はヤマトくんの初記念配信を静かに見守ることにしましょう。
719:名無し
>>718
異議なし!
——————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます