いつの間にか大きくなってました

第75話 宿題!

ゴールデンウィーク最終日。


僕と来夢は急いで長期連休の宿題に取り組んでいた。


昨日の夜は帰ってきたばかりで、疲れも残っていたから宿題に一切手を付けずにのんびりと過ごしたけど、今日はそういうわけにはいかない。


明日は学校。

今日しかやる時間は残されていない。


まぁ、僕は学校ないからやらなくてもいいんだけどね。

でも、来夢と一緒に案件配信するために宿題手伝うって約束しちゃったからなぁ。


「来夢、そっちは終わった?」

「終わってない! 答えは全部わかるんだけど量が多すぎる!」

「終わったら教えて。東京にいた時のことを聞かないと日記かけないから」

「分かったから、絵の方を進めておいて! これスマホ!」

「はーい」


スマホを受け取り、その中に収められている写真を漁る。


来夢に頼まれたのは動物園で取ったパンダの写真を可愛く下手くそに描く。


可愛く下手くそにってどういうこと?

なんか矛盾している感じがするんだけど……。


スマホの中に打つ言っていたパンダは少し土で汚れて黒茶色になってる感じ。

でも可愛い。


これを可愛く下手くそにってどういう感じに描けばいいんだろう……。

一先ず画用紙と絵の具の準備しとこ。


家にあった昔買って使わなかった画用紙と、僕が小学生のころに使っていた絵の具を取り出し準備を進める。


ちゃんと絵の具も入ってるし、筆先も問題なし。

これならしっかりと絵も描ける。


問題は可愛く下手くそに。

これが難しすぎる。


絵の具の準備をしているときに、クレヨンで幼稚園生が書くような感じでいいかなと思ったけど絵の具だとそれも難しいし、他の色と混ざり合って滲んじゃいそう。


下手くそに描くならそれでいいかもしれないけど、可愛く描くにはそれじゃダメ。

……あーもう! 考えてもまとまんないし、いつも通り書けばいいよね!


来夢のスマホに写っているパンダを見て、筆を進める。

だけど、画像のパンダとは全く別の絵を描く。


写真通りに書いたら絶対に下手くそにならないもんね。

だったら、頭の中でパンダの情景を浮かべて描いた方が少しは下手くそになると思う。


僕の描いたパンダは既に写真とは全く違うパンダになっていた。


スマホに写っていたパンダは、体が茶色に汚れ両足で立ち上がりこちらを見ていたけど、僕の描いたパンダは体の汚れを抑え、リンゴを真剣にかじっている感じで描いた。


そこまで下手くそではないけど別にうまくもない。言ってしまえば普通って感じ。

だけど、めちゃくちゃ可愛い。

描いた自分で言うのも変だけど、可愛いだけで言えばリアルのパンダにも劣らないと思う。


「お兄ちゃーん。絵の宿題終わった?」

「今終わったよ、これでどう?」


画用紙を持ち上げ来夢に見せる。


太陽の光が入る窓の近くで描いてたのもあり、絵の具は既に乾燥していてタレ落ちることはなかった。


「……可愛いけど上手くない?」

「そうか? 一応真剣に可愛さ重視で描いたんだけど……」

「……まぁいいや、これで美術は終わり! あとは社会と数学に日記だけなんだけど、お兄ちゃん、社会の歴史といてくれない?」

「はい?」


今なんて言った?

僕に歴史の宿題を解かせる?

今まで宿題でさえ正解したことがほとんどないこの僕に?


「来夢、変なものでも食べたか?」

「食べてないよ」

「じゃあ頭でも打ったか?」

「打ってない」

「宿題のやりすぎで頭がおかしくなったんじゃ……」

「おかしくなってないし、この程度アプリを作ってるときに比べたら全然楽。だけど早く終わらせるに越したことはないからね。それにお兄ちゃん歴史だけはできるでしょ?」

「何を根拠に……」

「レベッカさんとの配信で出来てたじゃん」

「いや、あれは小学生の範囲だったからな!」


小学生に中学生の範囲をしろって言っても、全然解けないようにやっと小学生レベルになった僕が中学生の問題をすぐに解けるわけがない。


「大丈夫だと思うよ。小学生の範囲を少し難しくしたのが中学生の歴史だと思うから」

「……間違えまくっても文句言うなよ?」

「はいはい、じゃあお願いね」


ようやく美術が終わったと思ったのに、追加で宿題をもらうとは……。

でも見た感じ、来夢が言っていた通り小学生の範囲を少し難しくした感じで問題が出せれている。


というよりも、難問かはオフコラボの時に出た問題もあるし、逆に問題文にあったのが答えの問題もある。


当然、小学生の範囲で出なかった問題もあるから全部解けるわけじゃないけど……。

それでもそこそこな数は正解できてそう!


全部の問題を解き終わったころにはすでに12時を回っており、ちょうどお腹がすき始めていた。


そう言えば朝ごはん食べずに宿題を始めたんだっけ。

来夢は僕が起きる前から宿題を始めてたみたいだし、今日の昼と夜は僕が作るか。


宿題を閉じ、キッチンに行ってから昼食を作る。


作ると言っても、お昼だから難しいものは作らないけど。


今日のお昼ご飯は普通にインスタントラーメン!

時間もあんまりかからないし、簡単に作れる。


何より、カップラーメン5個と5個入りインスタントラーメンで比べると、断然安いからお得!


「来夢ー。お昼ご飯できたよ!」

「はーい、今降りるね!」


どたどたと足音を出しながら降りてくる来夢。

そうとうお腹が空いていたみたいで、ラーメンを前にしてすぐに箸を持ち食べ始めた。

いただきます、すら言わずに。


少し食べて満足したのか、テレビをつけてチャンネルを変えようとする。

けど一向にチャンネルは変わらない。


「お兄ちゃん。ボタン押してもチャンネル変わらないんだけど……」

「何番ボタン?」

「8番」

「ん? ……!」


来夢はこの1週間で相当東京に染まったみたい。


「来夢、宮崎に8番はないよ。あるのは3番と6番。あとは全国放送の1番と2番くらいだよ」

「え、あ! そうだよね! ここは宮崎なんだからチャンネル数少ないよね!」


来夢は再び3番ボタンを押してラーメンを食べ始める。


来夢が間違えてくれて助かった。

もし僕が来夢よりも先にリモコンをいじっていたら、僕が間違えていた。


そう考えると僕もそれなりに東京色に染まってたのかな。


でも、帰ってきて実際に感じたけど、やっぱりチャンネルに関しては宮崎よりも東京の方が多くて全然いいね。


「お兄ちゃん、宿題どのくらい終わった?」

「もう全部終わったよ」

「はやっ!? え、歴史も?」

「うん。思ったよりも簡単だった。あとで見返してもいいよ」

「念のためにそうする。お兄ちゃんって、自分のトリッターやMytubeって毎日確認してる?」


トリッターやMytubeの確認?

そんなの毎日してるに決まって……いや、最後に確認したのって確か火曜日だったような……はっ!


昨日の配信お休みのことトリッターでトリートしてない!


「やっぱり確認してなかった。1回見てみたら? 今凄いことになってるから」

「凄いこと?」


何だろう。

もしかして炎上とか?


でも僕炎上するようなこと何かしたかな?

最近したことと言えばレベッカさんとのオフコラボや、昨日の告知忘れくらいだけど……。


来夢に言われた通り、Mytubeから確認する。


「……これって何かの間違い?」

「間違いじゃないよ。それが現実」


最近全然確認してなかったけど、まさかこんなになってるなんて……。


Mytubeを閉じ、急いでトリッターの方も確認するとこちらもMytubeと同じような現象が起こっていた。


「夢じゃないよね?」

「だから現実だって、いい加減認めたら?」


Mytube

チャンネル登録者数

520145人


トリッター

フォロワー数

325478人


僕が最後にチャンネル登録者数を確認した時は10万人をやっと超えた感じだったのに、まさかたったの数日で50万人を超えるって何事!?


「ら、ららら、りゃいむ!」

「落ち着いて、気持ちはわかるから。私も気分転換にお兄ちゃんの配信でも見ようかなって思った時にそれ見て驚いたから」


これは驚いたですむ人数じゃないよ!


え、僕ってVtuber初めてまだ1か月たったばかりの新人だよね?


企業勢とかだと大きなネームバリューがあるから50万人突破するライバーさんはいるけど、僕は個人勢だよ?


これが母さんの影響だったとしても、確か母さんのMytubeチャンネル登録者数は49万人くらい。

母さん超えちゃったよ!


「で、私の話はここからなんだけど、新曲の歌詞できた。5月中には収録できると思うから準備しといてね」

「……新曲?」

「うん。昨日の夜、東京での思い出を思い出しながら作った。内容は初めて都会に行った少年の不安な心情です。お兄ちゃんにピッタリ!」

「また急だね」


たったの1日で作り上げるなんて、流石はライムというべきかな。


「作曲はすぐにするからもう少し待っててね。あと、6月にももう1曲歌ってもらうからそのつもりで」

「それは全然いいんだけど大丈夫? プログラミングの仕事もあるんでしょ。少し無理しすぎなんじゃ……」

「大丈夫だよ。休めるときにしっかり休んでるし、何より今ものすごく楽しいから!」

「……なら何も言わないよ。でも、きつそうな顔してたら無理やりにでも休ませるから」

「その時はお願いね」


来夢は絶対「大丈夫」って言いながら無理をすると思う。

その時は僕がしっかり休ませてあげないとね。


来夢が頑張ってる分、僕も頑張っていかないとね。


まずは木曜日の配信の内容。そろそろ記念配信しないと流石にヤバいよね。


土曜日は案件配信があるからそれの準備もしとかないと。

ソフトはヤク姉さんが送ってくれるって言ってたし、大丈夫だよね。


あ、今日の分の動画がない。午後からは動画の撮影しよ。

できればゴールデンウィーク関連のものを上げたいけど……。


「そういえばソファとかっていつ届くんだっけ?」

「それはいちろーが知ってるからお兄ちゃんが聞いて。宅配で送ったやつは明日届くから、もし私が学校に行ってたら、私のは玄関に置いといていいからね」

「分かった」


ゴールデンウィーク関連と言えば、少しだけど料理配信したっけ。

じゃあ、今日は料理をする動画でいいかな。


お手本は母さんのチャンネルで動画出してるからそれを参考にしよう。


記念配信は……前回からそこまで時間たってないけどやってみようかな。


『凸待ち』

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