第49話 重大発表!


「そういえば来夢。『Homesyo』の案件の件なんだけど……」

「お母さんに全部聞いた。いいよ、一緒にやっても。その代わり、帰ったらゴールデンウィークの宿題手伝って」


宿題?


そう言えば、来夢宿題持ってきてないんだった。


「いいけど、僕がやると全問間違いになっちゃうよ」

「何も問題を解くだけが宿題じゃないよ。お兄ちゃんにやってほしいのはゴールデンウィーク期間中の日記と美術の宿題」

「ああ、それなら全然大丈夫」


それにしても日記か。

二か月前までは僕も中学生で、毎日学校の日記をつけていたのを思い出すな~。

いつも教室に行くとクラスメイトの人たちは朝に書き上げてたっけ。


「言っておくけど、私の字に似せて書いてね。お兄ちゃん得意でしょ?」

「うーん。上手すぎず汚すぎない字なら真似して書けるけど……」

「あと美術の宿題に関しては下手に描いてね。私美術の才能はないから」


難しい注文。

下手に描くんだったら時間短縮でテキトーに描いちゃえばいいのに。


「分かった。ものすごくテキトーに描くね」

「お願いね」


何はともあれ、来夢からの案件の許可は得られたし、早速配信で報告しますか。


***

『ご主人様、お帰りなさいませ。本日は僕の配信に来て下さりありがとうございます。あなたの執事、神無月ヤマトです。今日の配信は東京旅行前半の振り返りと、時折重大発表を挟んでいきたいと思います』



ただいま!

今帰った!

重大発表気になる。

東京はどうだ?

楽しんでる?



『東京はそこそこ楽しんでますよ。昨日はヴァリアブル・ランドに行きましたし』



知ってる!

三条ヶ原楓さんのトリッターにヤマト写ってた。

え、何それ。

ヤマトって本物の?

ああ、コスプレしてたやつね



今日の朝トリッターを見たけど、楓さんは言っていた通り僕とのツーショット写真を上げていた。

それも、もっとも密着していた奴を。



『すでに知っている方もいると思いますが、昨日東京ヴァリアブル・ランドにて遊びに来ていた楓さま、獅喰蓮さま、ギャイ先生さまにお会いしました。とても楽しい時間が過ごせましたよ』



何そのメンバー……

獅喰蓮ってMy tuberの?

ギャイ先生って漫画家の一ギャイ!?

昨日のヴァリアブル・ランドヤバすぎるだろ!?



『正直に言うととても楽しかったです。……月曜日なのに人が多かったですけど』



それはそう。

ヴァリアブル・ランドはいつでも人が多い

よくそんな場所行けたね。

他にどこか行ってないの?



『他ですか。一昨日秋葉原に行きましたね。そこで、その日の前日のお詫びとしてサクラ様に同人誌を買ってもらいました。まだ読んでませんが』



前日の?

ああ、お酒の

ヤマトの膝枕。

あの後どうなったの!?



『あの後は何も起こりませんでしたよ。狸寝入りしていたカナママを起こしてサクラ様を任せました』



……なんだ。

よかったー。

酒の勢いでってシャレにならんからな。

何もないなら安心。



思った以上に安堵のコメントが見える。

もしかして心配させすぎちゃったかな。

今後は何かあったら安心できるようなトリートを発信していこう。


『話を戻しますね。秋葉原ではほかにも猫カフェやメイド喫茶にも行きました』



猫カフェ良いよね。

メイド喫茶!?

ヤマトは入れたの?

サクラと一緒にってこと!?



『サクラ様はだいぶ通われているみたいでしたよ。因みにメイド喫茶に入ったとき、僕とサクラ様のほかにもレベッカ様もいました』



……レベッカってあの?

赤ん坊製造機の?

ガーデンランドFC一期生の?

レベッカ・カタストロフィー?



コメント欄がテンポ良い感じで進んでいて面白い。


『あのレベッカ様です。と、ここで一つ目の重大発表をします!』



おお! ついに……

なんだなんだ?

ワクワクドキドキ!

このタイミングってことはレベッカ関連か?



やっぱり感がいい人は分かっちゃうか~。


ちょうどお風呂を上がったころにレベッカさんからメッセージが来てて、オフコラボをすることはできるみたい。告知をしてもいいって言われた。


ただ、何をするかだけは教えてもらえなかったんだよね。

それだけが少し怖い。


『一つ目の重大発表は5月の……明後日ですので4日ですね。その日にレベッカ・カタストロフィー様とオフコラボをすることになりました! 何をするかはまだ教えてもらっていませんが、朝の11時に配信スタートになります!』



やっぱり!

またガーデンランドさんとのオフコラボ!

しかも今回は告知した!

朝早くない?



スカウトの件は言わなくてもいいよね。

まだ入るって決まったわけでもないし、霧江さんに聞いたけど社長さんの暴走の可能性もあるみたいだし。


『配信はレベッカ様の配信で行います。概要欄にレベッカ様のチャンネルのURLを貼っているのでそちらから飛んでください』



絶対見に行く!

……ヤマト大丈夫かな。

レベッカの汚部屋……。

レベッカ・カタストロフィー:

来てくれる日を楽しみにしてます!


レベッカ本人いる!?

マジで呼ぶのか、あの汚部屋に!?



『あ、レベッカ様、僕も楽しみにしてます。なるべく早めに行きますので、部屋のお片づけからしましょうね。安心してください。僕は執事なので片づけも得意です』



ヤマトが優秀すぎる。

レベッカの汚部屋、きれいにしてくれ!

……ランドメンバーさえ、引いてしまう部屋はどうなるのかも注目しないと。

レベッカ・カタストロフィー:

みんな失礼すぎる! 最近は片付けしてるから綺麗だよ!?



『レベッカさん。汚い部屋を体験した人の片づけているほど、信用ならないものはありませんよ』



うんうん。

ヤマトの言う通り。

その気持ちわかる!

間違いない! ソースは俺!

レベッカ・カタストロフィー:

良いよ! 明日1日中片づけしてやるよ! しっかり片付いてたら謝ってね!



『いいですよ。しっかり片付いていたら謝ってあげます。代わりに片付いてなかったら、僕に対して謝ってもらいますけどいいですね?』


しばらくコメント欄を見ていたけど、レベッカさんのコメントは流れてこなかった。

ご主人様たちは片付けに入ったと予想している人が多い。

本当にそうなのであれば、僕もうれしい。


『それでは次に行きましょう。えーっと、秋葉原……の話はしましたね。ヴァリアブル・ランドの話もした。……となると今日の話だけですね』



お、今日はどこに行ったんだ?

大都会は絶対にないから……動物園とかか?

テレビ局見に行ってそう。

いや、一周して空港に行って帰ろうとしていた、とか?



言いたい放題言われてる。

さっき母さんに話してもいいか聞いたときに、問題ないって言ってたし話してもいいよね。

そもそも隠しているわけでもないみたいだし。


『今日は母さんと「Homesyo」の会社に行ってきました!』



……予想のだいぶ斜め上

『Homesyo』ってゲーム会社の?

世界一の会社?

え、何しに行ったん?



良い感じにコメントが驚いてくれてる。


『えーっと、僕の母さまである「神無月撫子」の旧姓知ってる人いますか?』



……知らん。

神無月が本名出ないことは知ってる。

え、神無月本名じゃなかったの?

え、まさかってことはないよね?



まぁ知ってる人はいないよね。

母さんも本名を名乗ったことはないって言ってたから。


『僕の母さまの旧姓は「宝命」です。で、「宝命生」の社長である「宝命役」さまは僕の叔母さまに当たる人になります。僕も今日まで知りませんでした』



ゲーム業界を10年進めたと言われたこともある『宝命役』の甥……。

天才の叔母も天才だった件。

ヤマトちゃんの血筋ヤバすぎない?

ヤバすぎて逆に怖い……。



ヤク姉さんって、そんなにすごい人だったんだ。

僕はてっきり、頭がいいだけの人かと思ってた。


『あ、因みに「えだち」と書いて「ヤク」と呼ぶので、僕は「ヤク姉さま」と呼んでいます。じゃないと怒るので』



え、……ああ、なるほど。

そういうことね。

え? え??

最初意味わからなかったけどすぐに理解した。



『と、言うわけで、二つ目の重大告知に行きます! この度、「宝命生」さまから案件をいただけました!』



おお!

デビュー一ヶ月もたっていないのにすでに案件!

え、身内贔屓?

早すぎない?



『何でも一つやってほしい案件があるらしくて、ホラーゲームみたいです。でも僕ホラーゲーム苦手で、一人だと全然進むことができないかもしれません』



ヤマトの怖がる姿見てみたい!

え、怖がるヤマトってどんな感じかな。

『Homesyo』から最近出たホラーゲームって、あの怖すぎるってやつ?

え、ホラー嫌いが一番したらダメなゲームじゃない?



『た、多分大丈夫です。今回の案件配信、ヤク姉さまからも許可をいただきました。ご主人様お待ちかね、妹と二人で配信します!』



……女神が再び降臨なさる!

きちゃーーーーーーー!?!?!?!?

待ってました!!

うほうほうほうほ!



来夢の人気ヤバくない?

人語なくしてる人いるし……。

僕の配信なのに……。


『「妹のことだけじゃなくて、僕のことも見てくれないと嫌いになっちゃうよ」』


少しかわいらしい声を出す。

どこまで効果あるかわからにけど、お兄ちゃんが妹に負けるわけにはいかない!



……ぐはっ!

……はぁっ! 一瞬気を失っていた。

やっぱりヤマトしか勝たん!

イケボでもお願いします!



『「おい、何処見てんだよ。言っただろ。俺だけを見ろって」』


「俺だけを見ろ」なんて言ってないけど、こんな感じかな。

やっていて少し恥ずかしく感じた。


は、反応はどうかな?



……きゅん

ヤバい、最高過ぎて耳が壊れかけた。

ヤマト君しか勝たん!

どっちも行ける。



好評みたいで何より。

そして、いい時間かな。


『というわけで今日はこれくらいにしたいと思いま——』

「まって!」

『うひゃ!』


完全に閉じ切っていた扉が急に開かれた。

そこには風呂上がりでパジャマに着替えたばかりの義姉さん。


配信中なのにどうかしたのかな?


『か、カナママ?』



え、カナママ?

どした?

乱入?

ヤマトも状況読み込めてない。



「あ、急に入ってきてごめんね~。私からも、ヤマトとご主人様たちに重大報告がしたくてね~」

『僕にもですか?』

「うん。実は、ヤマトの新衣装が完成しました!」

『……え?』



おお!

新衣装お披露目!?

いつ見れるの?



『え、どれですか?』

「待って待って。こういうのは順番があるよね。さすがにゴールデンウィーク中はお披露目無理だから……、次の土曜日で空いてる日っていつ?」

『5月……20日? あたりだったともいます』

「じゃあその日にしようか。その日に、ヤマトの新衣装お披露目会をしたいと思います。それまでに皆さん、新衣装の予想イラストを送ってください。私のトリッターに、新衣装の形を描いたファイルがありますので、そちらからダウンロードしてください! それでは!」


姉さんは言いたいことだけを言って出て行ってしまう。


まぁ、コメント欄は盛り上がってるから良しとしようかな。


『最後の重大告知には驚きました。それではお時間ですのでここまでにしましょう。』

『本日は僕と楽しい時間を過ごしていただきありがとうございます。それでは、行ってらっしゃいませ、ご主人様』



行ってきまーす!

楽しみにしてるぞ!

また来るね!

行ってきまーす!


***

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